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第二章
in南家
ダイニングテーブルには、いつもより多めの料理が並べられていた。俺が先生も夕食に招待したいって言ってから、母さんがきっと追加で料理してくれたんだろう。そう思うと、単純に嬉しかった。
先生は、俺の隣の席に座っている。いつもはそこは兄貴の席なんだけど、今日は親父が出張でいないので、兄貴が親父の席に着いていた。
「すみません、今日は。大事な家族の団らんにお邪魔させてもらって」
「とんでもありません! 陽太を病院にも連れて行っていただき、ありがとうございました」
そう言って母さんが深々と頭を下げる。
「あ、いいえ。先程も言ったように、南くんは巻き込まれてしまったようなものです。こちらの方こそ、すみませんでした」
深々と頭を下げる先生を、兄貴が感心しているように見ていた。
「そう言えば、陽太、お前診療費はどうした?」
「あ、先生に立て替えてもらってた」
「まあ、すみません。おいくらでした? 払います」
そう言って母さんが財布を取りに行こうとするのを先生が止めた。
「お母さん、結構です。これは僕が支払わなければいけないものですから」
「いえ、でも……」
困惑して立ち止まる母さんに、先生は立ち上がって制した。
「南くんは、僕の代わりに殴られたようなものなんです。お願いですから、このまま僕の方で支払わせてください」
先生が母さんを説得する様を隣で見ていて、俺は不謹慎にも凄くドキドキしていた。
本来先生はめちゃくちゃ強い。だってあの三人を簡単に伸してしまうくらいだ。だからこの怪我は、勝手にしゃしゃり出た俺の自業自得と言っても間違いではないはずだから、先生は何も負い目なんて感じる事なんて本当は無いんだ。
それなのに先生は、まるで自分の事と同じように俺の事を考えてくれている。
嬉しくって、胸の中が凄く温かい気持ちでいっぱいになった。
立って話しているため、俺の目のすぐそばにある先生の手。
……先生の手、握りたいな。
ぎゅって握って抱き寄せて、先生の胸にぐりぐりしたい。
そんな願望に浸りきっていた俺の頭上に、先生の手がポンと乗っかった。
「……え?」
「それじゃあ、君のお母さんの手料理を頂くことにしようかな」
あれ?支払いの件は?
「本当に、すみません。陽太、あんたしっかり紫藤先生の授業を聞きなさいよ。先生、どうぞ遠慮せずにたくさん召し上がって下さいね」
「はい。ありがとうございます」
先生の返事に申し訳なさそうに会釈した母さんは、席に戻っていく。
あれ、てことは俺が願望に浸りきっている間に話の決着が付いたってこと?
先生、お金受け取ってくれなかったんだ……。
先生が俺の事を凄く大事に思ってくれてるのは嬉しいとは思ったけど、先生に払わせたまんまって、やっぱまずいよな?
だってあれって、絶対俺の方が迷惑かけてる感じだもの……。
複雑な思いでご飯を食べながら先生を見ていたら、先生が俺の視線に気が付いて「何?」って感じで小首を傾げた。
う……。
止めて下さい、その表情。
素じゃない先生の職場モード…、いや、ここは職場じゃないから社会人モードか。
そんな作られた優しく可愛らしい表情にも、俺はグラグラ来るんだ。
「な、何でもないです……」
家族の前でニヤけた顔面崩壊をさらすわけにはいかないので、俺は奥歯を変に噛みしめながら黙々とご飯を食べ続けた。
先生は、俺の隣の席に座っている。いつもはそこは兄貴の席なんだけど、今日は親父が出張でいないので、兄貴が親父の席に着いていた。
「すみません、今日は。大事な家族の団らんにお邪魔させてもらって」
「とんでもありません! 陽太を病院にも連れて行っていただき、ありがとうございました」
そう言って母さんが深々と頭を下げる。
「あ、いいえ。先程も言ったように、南くんは巻き込まれてしまったようなものです。こちらの方こそ、すみませんでした」
深々と頭を下げる先生を、兄貴が感心しているように見ていた。
「そう言えば、陽太、お前診療費はどうした?」
「あ、先生に立て替えてもらってた」
「まあ、すみません。おいくらでした? 払います」
そう言って母さんが財布を取りに行こうとするのを先生が止めた。
「お母さん、結構です。これは僕が支払わなければいけないものですから」
「いえ、でも……」
困惑して立ち止まる母さんに、先生は立ち上がって制した。
「南くんは、僕の代わりに殴られたようなものなんです。お願いですから、このまま僕の方で支払わせてください」
先生が母さんを説得する様を隣で見ていて、俺は不謹慎にも凄くドキドキしていた。
本来先生はめちゃくちゃ強い。だってあの三人を簡単に伸してしまうくらいだ。だからこの怪我は、勝手にしゃしゃり出た俺の自業自得と言っても間違いではないはずだから、先生は何も負い目なんて感じる事なんて本当は無いんだ。
それなのに先生は、まるで自分の事と同じように俺の事を考えてくれている。
嬉しくって、胸の中が凄く温かい気持ちでいっぱいになった。
立って話しているため、俺の目のすぐそばにある先生の手。
……先生の手、握りたいな。
ぎゅって握って抱き寄せて、先生の胸にぐりぐりしたい。
そんな願望に浸りきっていた俺の頭上に、先生の手がポンと乗っかった。
「……え?」
「それじゃあ、君のお母さんの手料理を頂くことにしようかな」
あれ?支払いの件は?
「本当に、すみません。陽太、あんたしっかり紫藤先生の授業を聞きなさいよ。先生、どうぞ遠慮せずにたくさん召し上がって下さいね」
「はい。ありがとうございます」
先生の返事に申し訳なさそうに会釈した母さんは、席に戻っていく。
あれ、てことは俺が願望に浸りきっている間に話の決着が付いたってこと?
先生、お金受け取ってくれなかったんだ……。
先生が俺の事を凄く大事に思ってくれてるのは嬉しいとは思ったけど、先生に払わせたまんまって、やっぱまずいよな?
だってあれって、絶対俺の方が迷惑かけてる感じだもの……。
複雑な思いでご飯を食べながら先生を見ていたら、先生が俺の視線に気が付いて「何?」って感じで小首を傾げた。
う……。
止めて下さい、その表情。
素じゃない先生の職場モード…、いや、ここは職場じゃないから社会人モードか。
そんな作られた優しく可愛らしい表情にも、俺はグラグラ来るんだ。
「な、何でもないです……」
家族の前でニヤけた顔面崩壊をさらすわけにはいかないので、俺は奥歯を変に噛みしめながら黙々とご飯を食べ続けた。
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