綺麗な先生は好きですか?

くるむ

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第五章

だって、先生の体が心配なんだよ?

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「ん……っ」

先生の背中に腕を回したまま先生とのキスに夢中になっていると、スマホから着信音。
きっと母さんからのさっきの返事だろうと、無視。

だけど先生はその音が気になったようで、ゆっくりと絡めた舌を解いて唇を離す。

「……南」
「いいから、もう一回……」
「――誰からか、分かってるのか?」

……ん?
声のトーン、変わった?

首を傾げて先生の顔を見たら、少し咎めるような表情だ。
……もしかして、何か勘ぐってるのかな?

「多分、母さん。さっきの返事だと思う」
「――ああ。だったら、確認しろよ。急ぎの事だったんだろ?」
「……うん。分かった」

母さんは先生のことを大分気に入ってくれていたから、おそらく先生を夕食に招待しなさいと言ってくれてると思う。だから別に今すぐ確認しなくてもいいとは思うんだけど……。
先生がじっと俺のことを見ているから、仕方がないから先生の傍を離れてスマホに手を伸ばした。

『了解。腕を振るうから、お連れして』

「やっぱな」
「……どうした?」
「うん、母さんから。先生を夕飯にご招待してってさ」
「は?」

しれっと返事した俺に、先生は目を見開いた。

「いや、ちょっと待て。さっきの連絡ってそれを頼んでたのか?」
「うん、そうだよ」
「あのな、南……。教師が生徒の家で食事をさせてもらうのって、どう考えても……」
「だって! 先生の食生活考えたら、たまにはちゃんとした家庭料理を堪能してもらいたいって思うだろ!」
「いや、だが……」
「先生の体は先生だけのものじゃないんだよ。俺の為にも、健康のこともちゃんと考えてよ」

俺がそう言って詰め寄ると、ぐっと言葉を飲み込んだ。

「……お前、なんて言ってお母さんにお願いしたんだよ?」

「うん? 今日先生の時間があったから、物理の分からないところを教えてもらってるって。ちょっと遅くなりそうだし先生に迷惑かけてるから、ご飯に招待したいけどいいかな?って連絡したんだ」

「…………」

俺の言葉に先生は絶句して、脱力した。

あれ?
俺、やっちまった?

「先生、怒った?」
「……いや。お前、ちゃんと勉強はしてるのか?」
「え……?」

ギクッ。
先生のことはいっぱい考えるけど、物理のことはちょっとしか考えたことが無い。

俺のその表情で、どうやらしっかりその事が先生に伝わってしまったようだ。
先生は立ち上がり、物理の教科書を持ってきた。

「親御さんに嘘を吐くわけにはいかないからな。もう30分くらいは時間があるだろう? 教えてやる」
「あっ、ええっと……。でも、その……。せっかく2人っきりなんだから……」

「ああ。マンツーマンだな」

そう言ってにこりと笑う先生。
有無を言わせぬその笑顔に、今度は俺がため息を吐く番だった。

「……頑張ります」

結局、その後の30分は、しっかりと物理の勉強に励んだのだった。
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