終焉の守護騎士

主道 学

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第二章

2-4

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 なんでこんなことに……。
 今は確実に戦争に巻き込まれているんだ。

「ラピス城にいる王女様の治めるグレード・シャインライン国は緑豊かな国。その想像を絶する資源を狙っている周辺の国は荒れ果てた大地を持つライラックのいる西方のガルナルナ国だけではないのよ。突然、何かの原因で資源がなくなってしまったの東方のクシナ要塞、数十年もの深刻な食糧難を抱える北方のトルメル城と白の騎士の国、干ばつ被害で雨の降らなくなった南方のサンポアスティ国とも戦争しているの」

 俺は身体と手の震えで、食器の上にナイフとフォークを派手に落とした。ライラックに斬られる前に、王女から直々の命令によって、その城。いや、橋を守るナイツオブラストブリッジになったんだ。

「お頭……食糧庫が空になりやした……後は酒樽しかないでやす……」
「えええええっ!! マルガリータ! お前、食い過ぎだぞ!」
「あ……ごめん……いつもの調子で食べちゃってた」

 飯が終わると、壁にある髑髏の燭台の明かりで照らされた。俺たちがいる部屋へと、男たちがぞろぞろと集まってきた。

 不思議な事に凶悪な盗賊団の男たちが俺に懇願してきた。

「ああ、お頭に息子がいたなんて……俺たちのお頭はとうに死んでしまった。だから、お頭の息子であるあなた様にどこまでも着いていきやす!」
「お頭がラピス城を守るってんなら任せて下さい!」
「お頭……先代のオニクボ頭領の息子なんでやすよね! なら、俺たちはどこまでも着いていきやすよ!」

 はて?
 これで、辻褄は合ったように思うが……。
 まあ。怖いし。むさ苦しいが結果的に良かった……のか?

 俺の親父って盗賊団の頭領だったけか……? 普通のサラリーマンだったはずだ。それも会社に蟻のように働かせられていて、いつも泣いていたっけ。確かに、いつかでっかくなってやるっていってたけど……。親父もこの世界へ来て盗賊団の頭領にでもなったんだろうか?

 「へ? はあ? 頭がすごく混乱するぞ???」
「それでは、お願いしますね。鬼邦くんは、正真正銘の黒の骸盗賊団の頭領の息子なんです。これからすぐにラピス城へ向かってください。私と鬼邦くんは空を飛んでいきますから」
「へ? へ? え?」

 勝手に話をずんずんと進めるマルガリータの横で、俺は混乱したままだ。
 髑髏の燭台の炎で盗賊団の男たちの顔が見えるが、どれも体が震えてしまうほどの凶悪そのものだった。

 俺はなんでこんなところにいる?
 なんで、盗賊団の頭領の息子なんてやっている?
 今まで普通の高校生だったんだぞ!

 それよりソーニャは……。

「あの。お頭……その前に一ついいですかい? だいぶ前に元聖騎士だという老人を牢屋へぶち込んだんでやすが……ひょっとして、お仲間だったでやすか?」
「え?! 本当に? きっと、その人は千騎士最強と言われた元四大千騎士の一人。ハイルンゲルトだわ」




 それから、じめじめとした地下へと案内された。肌寒くて、学ランの上着がまだ乾いていないからか、くしゃみをした。
 俺は、マルガリータに小突かれながら盗賊団を率いて灰色の廊下の奥へと行くと、真っ暗な石造りの牢屋があった。中を盗賊の一人から手渡された松明で照らすと、門扉も壁も石でできていて一言でいうとかなり堅牢な牢屋だった。

 その牢の隅にある木でできた小さなテーブルに、ぐったりしている白い鎧の老人が両手を投げ出し顔を伏せていた。
 


「こりゃ死んでるなあ」
「もうここへ入れてから二年は経ってやすぜ」
「お頭……ここの鍵束でやす」
 
 などと、盗賊団が口々に言うので、俺は恐る恐る牢を開けると、老人にゆっくり近づいていった。マルガリータは廊下で白髪の老人を見張っている。
 牢の中は、廊下と同じ空気だった。冷たい石造りの地面に靴音が響く。

「あ、あの。だ……大丈夫ですか……? わ?!」

 俺は老人が気がかりで怖いけど、仕方なく小声をかけてみた。すると、右腕をがっしりと両手で握られてしまった!

 なんだ!?

 老人は俺の目をしっかりと見つめてから、一瞬だけ微笑んだ気がした。

 なんなんだよ!!

「おお神よ! なんと幸運な!! こんな見放された地の底にも、純粋な心を持った者がおったとは! きっと、君なら!! ……君にわしの命の全てを託そう! どうかこの力で橋を守ってやってくれ! これは賭けだ! 国の多くの人々の命が懸かっている大きな賭けだ!!」

 瞬間、老人の両手から俺の体を凄まじい高熱と激しい光が襲い出した。
 体が丸焦げになるかと思った。

「うわああああああーーー!!」 
「ぐぬぬぬぬぬぬ!!」

 俺と老人は叫び続けていた。
 正直、死を覚悟までした俺は老人の手を力いっぱい振り払おうとした。だが、凄まじい力で掴まれていた。

 体中の光と熱が次第に治まり出してきた。そこで、やっと誰かが俺の肩に手を置いているのに気がついた。後ろを振り向くとマルガリータだった。
 マルガリータは気遣いの眼差しで俺を見つめていた。 
 目の前の白髪の老人は消えゆく光と共に息絶えている。
 辺りは静かになった。

「う……そんな……」

 俺はうなだれていた。
 マルガリータは何も言わずに同情の目でこっくりと頷いた。

「な、なんだったんだ? 今の?」
「大丈夫よ。何もかも……さあ、行きましょ。橋を守りに……」
 
 盗賊団は皆、武器を構えて伏せていたが、マルガリータだけがいつもと同じだった。

 うん??
 なんだか、俺の体から物凄い力が湧き出ている!!
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