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第一章:聖女から冒険者へ
15.優しい時間
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ゆっくりと目を開けると私はベッドの上に横たわっていた。
辺りは暗く、静寂に包まれているようだ。
周囲に視線を巡らせていると次第に目が慣れていき、薄っすらと室内の様子を確認することが出来る。
窓はカーテンで覆われていて、その隙間からは一切の光を感じない。
恐らく今は夜なのだろう。
(夜……? そっか。じゃあもう少し眠ろう)
頭の奥は寝ぼけているように重く、夢と現実の狭間にでもいるような気分だった。
再び眠ろうと思い目を閉じると、隣から薄っすらと寝息が響いていることに気付く。
不思議に感じて再び重い瞼を開き音のする方へと視線を傾けると、隣に並ぶようにして誰かが眠っていることに気付いた。
一瞬だけ戸惑ってしまったが、すぐにそれが誰だか分かった。
そしてそれに気付くのと同時に、数時間前にあったであろう出来事を思い出し、私の顔は見る見るうちに赤く染まっていく。
(……っ!! 私、ついにイザナと……)
私の記憶では激しくイザナに抱かれて、そこから先の記憶が一切なかった。
恐らく途中で意識を飛ばしてしまったのだろうと気付くと、私は深くショックを受けた。
(初めてだったのに……)
二年間ずっと待ち望んでいたことが漸く叶ったというのに、まさか自分が途中で意識を失ってしまうなんて。
私は寝返りを打つみたいに、イザナのいる方向へと体を横に傾けた。
ついさっきまで彼と体を繋げていたのだと思うと、少し夢を見ているみたいな感覚で、どこかまだ信じられない気持ちもあった。
だけど体の怠さを感じると、それが現実なのだと言われているような気がして、嬉しくて顔が勝手に緩んできてしまいそうだ。
目が慣れてくると更にイザナの寝顔が良く見えるようになって、見惚れるように暫くの間眺めていた。
(寝顔も綺麗……。なんかずるいな)
私が不意に手を伸ばして彼の髪に触れようとした瞬間、がしっと逆に掴まれた。
予想外の事が起こり、私はびくっと体を震わせた。
「ルナ、起きていたのか? 体は大丈夫?」
「う、うん。平気だよ」
私が平然を装いながら答えると「そうか」と安心したような声が返って来る。
しかし内心はかなり焦っていた。
勝手に寝顔を見ていたことが、バレてしまったのではないかと思っていたからだ。
(起きてるとか……。び、びっくりした)
「ごめんなさいっ」
「どうして謝るの?」
私は上半身を起こし座り直すと、小さく頭を下げて謝った。
そのあとガサッという音が響き、彼も起き上がったのだと気付いた。
そして間もなくして彼の掌が伸びて来て、頬に触れられ顔を元の位置へと戻される。
「だって、私途中で意識が……」
「そのことについては悪いのは私の方だ。だから謝らないで。ルナが可愛すぎて理性が抑えられなかった。初めてだったのに、激しくし過ぎてしまってすまない」
私が途中まで言うと、イザナは自嘲する様に続けた。
彼の言葉であの時の情景が脳内に過り、私の顔はじわじわと熱に侵されて行くのを感じる。
しかし生憎部屋の中は闇で包まれている。
恐らくこの頬の赤さは彼に気付かれることはないだろう。
そうだと言っても恥ずかしい姿は沢山見られてしまったのだから、羞恥心が消えることはなかった。
「どこか痛みはないか?」
「うん、多分平気」
若干鈍い痛みは残っているが、大した程ではない。
「ルナ、こっちにおいで」
イザナに優しい口調で呼ばれ、私は彼の方に近づくとそのまま抱きしめられた。
あんなことをした後だったせいか、妙にドキドキしてしまう。
心臓の音がバクバクとうるさいほどに鳴っている。
彼にに気付かれたらどうしようという思いが、更に追い打ちをかけるかのように鼓動は早くなる。
(お願いだから、私の心臓静かになって……!)
そんなことを心の中で必死に考えていた。
「きっと、今のルナの顔は真っ赤なんだろうな」
「……っ、そんなことないよっ」
イザナの言葉に私はドキッとして早口で返してしまう。
それが返って不自然になり、そんな私の言葉を聞いてイザナはクスクスと小さく笑っていた。
「な、なに?」
「いや、可愛いなって思っただけだよ。ルナは本当にいつだって可愛い」
突然笑い出すイザナに焦って私が聞き返すと、イザナはサラっと答えた。
「か、からかわないでっ!」
「別にからかっているつもりはないよ。普段から本当のことを言っているだけだけど、ルナには上手く伝わってなさそうだね」
イザナは当然のように返して来て、私は言葉に詰まってしまう。
そして耳元で「それとも、照れ隠しのつもり?」と囁かれ、ゾクッと体が小さく震える。
彼は私の反応を見ると体をゆっくりと剝がしていき、再び頬に触れる。
そして唇の方に指を滑らせていくと、輪郭をなぞるように触れられる。
少し擽ったく思えて、唇が小さく動く。
「ルナ、好きだよ。こんなにも誰かを愛しく思ったのは初めてだ。もう手放すつもりはないけど、私の傍から離れようとしないで」
彼の言葉に胸の奥が高鳴っていく。
イザナにそう言って貰えるのがすごく嬉しかった。
「私もイザナの事が好き、……大好き。絶対離れないよ!」
私はイザナの手をぎゅっと握り、迷いなく答えた。
絶対に離れたくないし、もう離れるなんてことは無理だ。
私はこんなにもイザナの事を好きになってしまったのだから。
そして静かに唇が重なった。
触れるだけの優しいキスだった。
唇が触れるとイザナの気持ちが流れ込んでくるみたいで、心が満たされて幸せな気持ちになる。
「今日は無理をさせてしまったし、戦闘で疲れているよな。このまま朝までもう一眠りしようか」
「うんっ」
イザナの穏やかな声に頷くと、私達は布団の中へと再び戻った。
そして彼に抱きしめられながら、再び眠りへとついた。
辺りは暗く、静寂に包まれているようだ。
周囲に視線を巡らせていると次第に目が慣れていき、薄っすらと室内の様子を確認することが出来る。
窓はカーテンで覆われていて、その隙間からは一切の光を感じない。
恐らく今は夜なのだろう。
(夜……? そっか。じゃあもう少し眠ろう)
頭の奥は寝ぼけているように重く、夢と現実の狭間にでもいるような気分だった。
再び眠ろうと思い目を閉じると、隣から薄っすらと寝息が響いていることに気付く。
不思議に感じて再び重い瞼を開き音のする方へと視線を傾けると、隣に並ぶようにして誰かが眠っていることに気付いた。
一瞬だけ戸惑ってしまったが、すぐにそれが誰だか分かった。
そしてそれに気付くのと同時に、数時間前にあったであろう出来事を思い出し、私の顔は見る見るうちに赤く染まっていく。
(……っ!! 私、ついにイザナと……)
私の記憶では激しくイザナに抱かれて、そこから先の記憶が一切なかった。
恐らく途中で意識を飛ばしてしまったのだろうと気付くと、私は深くショックを受けた。
(初めてだったのに……)
二年間ずっと待ち望んでいたことが漸く叶ったというのに、まさか自分が途中で意識を失ってしまうなんて。
私は寝返りを打つみたいに、イザナのいる方向へと体を横に傾けた。
ついさっきまで彼と体を繋げていたのだと思うと、少し夢を見ているみたいな感覚で、どこかまだ信じられない気持ちもあった。
だけど体の怠さを感じると、それが現実なのだと言われているような気がして、嬉しくて顔が勝手に緩んできてしまいそうだ。
目が慣れてくると更にイザナの寝顔が良く見えるようになって、見惚れるように暫くの間眺めていた。
(寝顔も綺麗……。なんかずるいな)
私が不意に手を伸ばして彼の髪に触れようとした瞬間、がしっと逆に掴まれた。
予想外の事が起こり、私はびくっと体を震わせた。
「ルナ、起きていたのか? 体は大丈夫?」
「う、うん。平気だよ」
私が平然を装いながら答えると「そうか」と安心したような声が返って来る。
しかし内心はかなり焦っていた。
勝手に寝顔を見ていたことが、バレてしまったのではないかと思っていたからだ。
(起きてるとか……。び、びっくりした)
「ごめんなさいっ」
「どうして謝るの?」
私は上半身を起こし座り直すと、小さく頭を下げて謝った。
そのあとガサッという音が響き、彼も起き上がったのだと気付いた。
そして間もなくして彼の掌が伸びて来て、頬に触れられ顔を元の位置へと戻される。
「だって、私途中で意識が……」
「そのことについては悪いのは私の方だ。だから謝らないで。ルナが可愛すぎて理性が抑えられなかった。初めてだったのに、激しくし過ぎてしまってすまない」
私が途中まで言うと、イザナは自嘲する様に続けた。
彼の言葉であの時の情景が脳内に過り、私の顔はじわじわと熱に侵されて行くのを感じる。
しかし生憎部屋の中は闇で包まれている。
恐らくこの頬の赤さは彼に気付かれることはないだろう。
そうだと言っても恥ずかしい姿は沢山見られてしまったのだから、羞恥心が消えることはなかった。
「どこか痛みはないか?」
「うん、多分平気」
若干鈍い痛みは残っているが、大した程ではない。
「ルナ、こっちにおいで」
イザナに優しい口調で呼ばれ、私は彼の方に近づくとそのまま抱きしめられた。
あんなことをした後だったせいか、妙にドキドキしてしまう。
心臓の音がバクバクとうるさいほどに鳴っている。
彼にに気付かれたらどうしようという思いが、更に追い打ちをかけるかのように鼓動は早くなる。
(お願いだから、私の心臓静かになって……!)
そんなことを心の中で必死に考えていた。
「きっと、今のルナの顔は真っ赤なんだろうな」
「……っ、そんなことないよっ」
イザナの言葉に私はドキッとして早口で返してしまう。
それが返って不自然になり、そんな私の言葉を聞いてイザナはクスクスと小さく笑っていた。
「な、なに?」
「いや、可愛いなって思っただけだよ。ルナは本当にいつだって可愛い」
突然笑い出すイザナに焦って私が聞き返すと、イザナはサラっと答えた。
「か、からかわないでっ!」
「別にからかっているつもりはないよ。普段から本当のことを言っているだけだけど、ルナには上手く伝わってなさそうだね」
イザナは当然のように返して来て、私は言葉に詰まってしまう。
そして耳元で「それとも、照れ隠しのつもり?」と囁かれ、ゾクッと体が小さく震える。
彼は私の反応を見ると体をゆっくりと剝がしていき、再び頬に触れる。
そして唇の方に指を滑らせていくと、輪郭をなぞるように触れられる。
少し擽ったく思えて、唇が小さく動く。
「ルナ、好きだよ。こんなにも誰かを愛しく思ったのは初めてだ。もう手放すつもりはないけど、私の傍から離れようとしないで」
彼の言葉に胸の奥が高鳴っていく。
イザナにそう言って貰えるのがすごく嬉しかった。
「私もイザナの事が好き、……大好き。絶対離れないよ!」
私はイザナの手をぎゅっと握り、迷いなく答えた。
絶対に離れたくないし、もう離れるなんてことは無理だ。
私はこんなにもイザナの事を好きになってしまったのだから。
そして静かに唇が重なった。
触れるだけの優しいキスだった。
唇が触れるとイザナの気持ちが流れ込んでくるみたいで、心が満たされて幸せな気持ちになる。
「今日は無理をさせてしまったし、戦闘で疲れているよな。このまま朝までもう一眠りしようか」
「うんっ」
イザナの穏やかな声に頷くと、私達は布団の中へと再び戻った。
そして彼に抱きしめられながら、再び眠りへとついた。
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