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12.迷惑者
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休み時間になると、私の机の前にオリヴァーがやってきた。
どうやらまだ諦めてない様子だ。
「なぁ、まだ考えは変わらないのか?」
「しつこいですよ。私の気持ちは変わりません! 絶対に変わらないので、私に付き纏うのは止めてください。はっきり言って、迷惑です!」
私が迷惑そうな表情ではっきりと答えると、オリヴァーは眉間に皺を寄せた。
相手は公爵子爵であるため強気な発言をするのはあまり良くないことは分かっているが、そうでもしない限り彼は諦めないだろう。
それでも言葉を選びながら発言しなければならないのは正直疲れる。
彼が公爵子息でなければ、もっと強い言葉で反論できるのに。それができないもどかしさに、私のストレスは溜まっていく一方だ。
「私には恋人だっています。私が好きなのは……、か、彼だけです! 裏切るようなことなんてできません。協力者探しなら、他を当たってください」
私は自分で言って恥ずかしくなり、僅かに顔の奥がじわじわと熱くなってくるのを感じていた。
「お前、本当に物好きだな。あんな顔が分からない奴が好きなのか?」
オリヴァーは理解できないといったような態度で、嘲るような口調で言った。
「私が誰を好きになろうと、オリヴァー様には関係ありませんよね?」
「そうだけど、殿下を諦めるためにあんな男に走ったんだろう? 今なら手に入れられる望みだってあるんだぞ? 俺が絶対にくっつけてやるよ」
彼のことをなにも知らないくせに、勝手なことばかり言うオリヴァーに心底腹が立った。
「だから、それが迷惑なんです。私は殿下になんて全く興味はありません! 天地がひっくり返ったとしても、絶対に好きになりません! 邪魔する人間を探しているなら別の人を探してくださいっ!」
あまりにも失礼な態度ばかり見せるオリヴァーにうんざりして、私は声を荒げて言ってしまった。
私の声が教室に響き渡ると、室内はシーンと静まり返る。
そして、周囲の視線は私たちに向けられていた。
そんな中、教室内にいたギルベルトと目が合ってしまい私は慌てるように視線を外した。
「あーあ、殿下にも聞かれたな。俺が折角仲を取り持ってやろうとしたのに」
「……っ!」
オリヴァーは口端を上げて挑発的に小さく呟く。
私はオリヴァーを睨み付けた。
今の私にできることがこれくらいしかないのは、正直すごく悔しい。
(こんな男が攻略対象だなんて、キャラ設定絶対間違ってるよ! しつこいし、強引でうざいし、もう最悪!)
私はこの教室にいるのが嫌になり、がたっと音を立てて椅子から立ち上がると部屋を出て行った。
(イライラして本音を口にしちゃった……。殿下に聞かれたけど、あの程度なら不敬罪とかにはならないよね)
***
いたたまれなくなり教室を飛び出てしまったが、行く場所に困ってしまう。
静かになれる場所に行きたくて、気がつくと温室へと足が向いていた。
心の平穏が保てていなかったせいか、無性にルーカスに会いたくなり、ここに足を運んでしまったようだ。
けれど彼が必ずしもここにいるとは限らない。
それでもここに来ればルーカスに会えるような気がして、私は温室の奥へと足を進めて行く。
一番奥の部屋に着くと、そこには誰の姿もなく静まり返っていた。
(……いない、か。いそうな気がしたんだけどな)
室内を一周見渡してみるが、やはりルーカスの姿を見つけることはできず私はがっくりと肩を落とした。
仕方なくいつもルーカスが座っているソファーに腰かけてみるも、一人でここに座ると余計に寂しさだけが募っていく。
「ルーカス様に会いたいな」
私は独り言をぽつりと呟いた。
だけどそんなことを漏らしても、ルーカスが現れることはない。
そんな時、奥のほうから足音が響いてくるのに気づき、私は顔を上げた。
普段ここにルーカス以外が訪れることは滅多にない。
少なくとも、私は見たことがなかった。
だからあの足音が彼かもしれないと思うと、胸が弾み顔が自然と綻んでいく。
(ルーカス様……?)
私は待ちきれずソファーから立ち上がり、部屋の入口のほうまで足を向けた。
そして暫くすると、その足音が近づき、姿が視線の中に映った。
「……!?」
私の緩んだ表情は、その者の姿が視線に入ってきた瞬間、驚きのものへと変わる。
(なんで……)
そこに現れたのはルーカスではなく、ギルベルトだったからだ。
どうやらまだ諦めてない様子だ。
「なぁ、まだ考えは変わらないのか?」
「しつこいですよ。私の気持ちは変わりません! 絶対に変わらないので、私に付き纏うのは止めてください。はっきり言って、迷惑です!」
私が迷惑そうな表情ではっきりと答えると、オリヴァーは眉間に皺を寄せた。
相手は公爵子爵であるため強気な発言をするのはあまり良くないことは分かっているが、そうでもしない限り彼は諦めないだろう。
それでも言葉を選びながら発言しなければならないのは正直疲れる。
彼が公爵子息でなければ、もっと強い言葉で反論できるのに。それができないもどかしさに、私のストレスは溜まっていく一方だ。
「私には恋人だっています。私が好きなのは……、か、彼だけです! 裏切るようなことなんてできません。協力者探しなら、他を当たってください」
私は自分で言って恥ずかしくなり、僅かに顔の奥がじわじわと熱くなってくるのを感じていた。
「お前、本当に物好きだな。あんな顔が分からない奴が好きなのか?」
オリヴァーは理解できないといったような態度で、嘲るような口調で言った。
「私が誰を好きになろうと、オリヴァー様には関係ありませんよね?」
「そうだけど、殿下を諦めるためにあんな男に走ったんだろう? 今なら手に入れられる望みだってあるんだぞ? 俺が絶対にくっつけてやるよ」
彼のことをなにも知らないくせに、勝手なことばかり言うオリヴァーに心底腹が立った。
「だから、それが迷惑なんです。私は殿下になんて全く興味はありません! 天地がひっくり返ったとしても、絶対に好きになりません! 邪魔する人間を探しているなら別の人を探してくださいっ!」
あまりにも失礼な態度ばかり見せるオリヴァーにうんざりして、私は声を荒げて言ってしまった。
私の声が教室に響き渡ると、室内はシーンと静まり返る。
そして、周囲の視線は私たちに向けられていた。
そんな中、教室内にいたギルベルトと目が合ってしまい私は慌てるように視線を外した。
「あーあ、殿下にも聞かれたな。俺が折角仲を取り持ってやろうとしたのに」
「……っ!」
オリヴァーは口端を上げて挑発的に小さく呟く。
私はオリヴァーを睨み付けた。
今の私にできることがこれくらいしかないのは、正直すごく悔しい。
(こんな男が攻略対象だなんて、キャラ設定絶対間違ってるよ! しつこいし、強引でうざいし、もう最悪!)
私はこの教室にいるのが嫌になり、がたっと音を立てて椅子から立ち上がると部屋を出て行った。
(イライラして本音を口にしちゃった……。殿下に聞かれたけど、あの程度なら不敬罪とかにはならないよね)
***
いたたまれなくなり教室を飛び出てしまったが、行く場所に困ってしまう。
静かになれる場所に行きたくて、気がつくと温室へと足が向いていた。
心の平穏が保てていなかったせいか、無性にルーカスに会いたくなり、ここに足を運んでしまったようだ。
けれど彼が必ずしもここにいるとは限らない。
それでもここに来ればルーカスに会えるような気がして、私は温室の奥へと足を進めて行く。
一番奥の部屋に着くと、そこには誰の姿もなく静まり返っていた。
(……いない、か。いそうな気がしたんだけどな)
室内を一周見渡してみるが、やはりルーカスの姿を見つけることはできず私はがっくりと肩を落とした。
仕方なくいつもルーカスが座っているソファーに腰かけてみるも、一人でここに座ると余計に寂しさだけが募っていく。
「ルーカス様に会いたいな」
私は独り言をぽつりと呟いた。
だけどそんなことを漏らしても、ルーカスが現れることはない。
そんな時、奥のほうから足音が響いてくるのに気づき、私は顔を上げた。
普段ここにルーカス以外が訪れることは滅多にない。
少なくとも、私は見たことがなかった。
だからあの足音が彼かもしれないと思うと、胸が弾み顔が自然と綻んでいく。
(ルーカス様……?)
私は待ちきれずソファーから立ち上がり、部屋の入口のほうまで足を向けた。
そして暫くすると、その足音が近づき、姿が視線の中に映った。
「……!?」
私の緩んだ表情は、その者の姿が視線に入ってきた瞬間、驚きのものへと変わる。
(なんで……)
そこに現れたのはルーカスではなく、ギルベルトだったからだ。
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