【完結】かりそめの恋人を作って面倒ごとから避けるつもりが選ぶ相手を間違えて囚われてしまいました【R18】

Rila

文字の大きさ
14 / 30

14.自分の気持ち

しおりを挟む
「ミア、何もされてないか?」

 ルーカスは抱きしめている腕を緩めると、私の頬を両手で包むように触れ、心配そうな瞳で顔を覗き込んできた。
 その瞳は本気で心配しているように見えた。
 彼は髪型を変えたようで、今でははっきりとその素顔を確認することができる。
 だから、私は普段以上にドキドキしているのかもしれない。

「顔に吹きかけられたのは魅了の香水と言ってましたが、私には効果がなかったみたいです」

 彼に瞳の奥をじっと覗き込まれて、先ほどから私の鼓動はドクドクと揺れている。
 目を逸らしたいのに吸い込まれてしまいそうで、それは叶わない。

「魅了の……? 顔が赤いのはそのせいか」
「ちっ、違いますっ! 多分、これは違うと思います」

 私の顔が赤く染まっていることに気づくと、ルーカスは僅かに目を細めた。
 慌てるように私は否定した。理由は自分が良く分かっている。

(これは、ルーカス様の顔が近いからっ……)

 私の顔が火照っているのは、あの香水のせいなんかじゃない。
 ルーカスとの距離が近くて、私が勝手にドキドキしているだけだ。
 けれど言葉に出してそんな説明をするは恥ずかしい。

「とりあえず、ソファーに座ろうか。ミアが落ち着けるようにお茶を淹れるから、少し座って待っていてくれるか?」
「あ、ありがとうございますっ。でも、授業がそろそろ……」

 ルーカスに促されるように私はソファーへと座った。

「こんなことがあった後だし、ミアだって教室に戻ってあの男と顔を合わせたくはないだろう?」
「……はい」

 私が曇った顔をすると、ルーカスは私の傍に近付いて来て頭を優しく撫でてくれた。

「ミアはなにも心配することなんてないからな。今はなにも考えず、ゆっくりしていたらいいよ」
「ルーカス様……」

 ルーカスの優しい言葉を聞くと、心に残っていた緊張も徐々に緩んでいくようだ。
 同時に、じわっと目元が熱くなっていくのを感じる。
 私は自分が泣いてることに気づくと、慌てて指で涙を拭った。

「ミア、そんなに擦ったら目が腫れてしまうよ。可愛い顔が台無しになるぞ?」
「えっ? ……っ!」

 ルーカスは困った顔で呟くと、私の手首を優しく掴んで目を擦るのをやめさせた。
 そして暫くすると、ルーカスの顔が迫ってきて、私の瞼にそっと口づけ、目尻に溜まっていた涙を舌で舐めとった。

「さすがに、涙はしょっぱいな」
「……っ」

 突然のことに動揺してしまうが、今のルーカスの言葉がおかしくてクスクスと小さく笑ってしまった。

「涙は止まったようだな」
「……あ、ほんとだ」

 私はその言葉を聞いてぽつりと小さく呟いた。

「ミアはそこで待っていて、今お茶の準備をするから」

 ルーカスは私の額にちゅっと音を立てて優しく口づけると、ソファーから立ち上がった。

「そんなに切なそうな顔をして、また抱きしめて欲しいのか?」
「……え? あ……、ち、違っ……!」

 私は無意識でそんな顔をルーカスに向けていたことに気づき、慌てて言い返した。
 焦った私の姿を見て、ルーカスは「寂しがるミアも可愛いよ」と笑っていた。
 私は恥ずかしくなり、俯いた。

(……どうしよう。私、ルーカス様のこと好きになちゃったのかも……)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わんこ系婚約者の大誤算

甘寧
恋愛
女にだらしないワンコ系婚約者と、そんな婚約者を傍で優しく見守る主人公のディアナ。 そんなある日… 「婚約破棄して他の男と婚約!?」 そんな噂が飛び交い、優男の婚約者が豹変。冷たい眼差しで愛する人を見つめ、嫉妬し執着する。 その姿にディアナはゾクゾクしながら頬を染める。 小型犬から猛犬へ矯正完了!?

竜王の花嫁は番じゃない。

豆狸
恋愛
「……だから申し上げましたのに。私は貴方の番(つがい)などではないと。私はなんの衝動も感じていないと。私には……愛する婚約者がいるのだと……」 シンシアの瞳に涙はない。もう涸れ果ててしまっているのだ。 ──番じゃないと叫んでも聞いてもらえなかった花嫁の話です。

婚約者の心の声が聞こえるようになったが手遅れだった

神々廻
恋愛
《めんどー、何その嫌そうな顔。うっざ》 「殿下、ご機嫌麗しゅうございます」 婚約者の声が聞こえるようになったら.........婚約者に罵倒されてた.....怖い。 全3話完結

最高魔導師の重すぎる愛の結末

甘寧
恋愛
私、ステフィ・フェルスターの仕事は街の中央にある魔術協会の事務員。 いつもの様に出勤すると、私の席がなかった。 呆然とする私に上司であるジンドルフに尋ねると私は昇進し自分の直属の部下になったと言う。 このジンドルフと言う男は、結婚したい男不動のNO.1。 銀色の長髪を後ろに縛り、黒のローブを纏ったその男は微笑むだけで女性を虜にするほど色気がある。 ジンドルフに会いたいが為に、用もないのに魔術協会に来る女性多数。 でも、皆は気づいて無いみたいだけど、あの男、なんか闇を秘めている気がする…… その感は残念ならが当たることになる。 何十年にも渡りストーカーしていた最高魔導師と捕まってしまった可哀想な部下のお話。

どうせ運命の番に出会う婚約者に捨てられる運命なら、最高に良い男に育ててから捨てられてやろうってお話

下菊みこと
恋愛
運命の番に出会って自分を捨てるだろう婚約者を、とびきりの良い男に育てて捨てられに行く気満々の悪役令嬢のお話。 御都合主義のハッピーエンド。 小説家になろう様でも投稿しています。

3回目巻き戻り令嬢ですが、今回はなんだか様子がおかしい

エヌ
恋愛
婚約破棄されて、断罪されて、処刑される。を繰り返して人生3回目。 だけどこの3回目、なんだか様子がおかしい 一部残酷な表現がございますので苦手な方はご注意下さい。

7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた

小本手だるふ
恋愛
真実の愛に気づいたと、7年間目も合わせない婚約者の国の第二王子ライトに言われた公爵令嬢アリシア。 7年ぶりに目を合わせたライトはアリシアのどストライクなイケメンだったが、真実の愛に憧れを抱くアリシアはライトのためにと自ら婚約解消を提案するがのだが・・・・・・。 ライトとアリシアとその友人たちのほのぼの恋愛話。 ※よくある話で設定はゆるいです。 誤字脱字色々突っ込みどころがあるかもしれませんが温かい目でご覧ください。

双子の姉がなりすまして婚約者の寝てる部屋に忍び込んだ

海林檎
恋愛
昔から人のものを欲しがる癖のある双子姉が私の婚約者が寝泊まりしている部屋に忍びこんだらしい。 あぁ、大丈夫よ。 だって彼私の部屋にいるもん。 部屋からしばらくすると妹の叫び声が聞こえてきた。

処理中です...