豹変したお兄様に迫られました【R18】

Rila

文字の大きさ
8 / 28

8.突然の提案

しおりを挟む
「ところでフィーは、今日何か予定はある?」
「え? 特には、ありませんけど」

 不意に話題を変えられ、私は困惑した様子で答える。

「それは良かった。朝食後に、僕と一緒に王都に行かない? 学園時代は大分真面目に過ごしていたようだから、今日は羽目を外してもいいよ」

 彼の言っている通り学園時代、常に上位をキープするために私は帰宅後予習を欠かさなかった。
 私は天才ではない。
 努力をして手に入れたものだけど、苦痛に感じることはなかった。
 良い成績を収めれば両親に褒めてもらえたし、予習をしているとルシエルが教えに来てくれる機会がそれなりにあったから。

(王都か。私には友人なんて呼べる存在はいないから、行く機会もそんなになかったな)

 私が王都を訪れるのは、必要なものを買いに行くときだけだった気がする。

「フィー、聞いてる?」
「は、はいっ!」

 突然、ルシエルの足がぴたりと止まり、顔を近づけられると私は慌てるように答えた。
 私の返答を聞いて、彼はにっこりと微笑む。

「いいお返事だね。じゃあ決まりってことでいいかな」
「え!? 私、まだ行くなんて……」

 勝手に話を進められて、私は戸惑った口調で言い返そうとする。
 すると彼の人差し指が私の唇に押し付けられ、言葉が止まった。

「予定はないってさっき言ってたよね。僕の話を無視したのだから、当然付き合ってもらうよ」
「……っ!!」

 強引に決められてしまい、私は困惑していた。
 しかし、彼と王都に行くことは嫌ではないし、どちらかといえば嬉しい気持ちのほうが強い。

「フィーの卒業祝いも兼ねて、今日は沢山楽しもう。最高のデートにするつもりだから、楽しみにしていてね」
「デート……?」

 彼の口から出た思いも寄らない言葉が理解出来てくると、私の頬はみるみるうちに沸騰していく。
 顔だけではなく、全身が火照っているような気さえする。
 
「フィーはデートって言っただけで、そんなに顔を真っ赤にさせてしまうの? ああ、可愛すぎるだろう。こんな顔をしているくらいだから、嫌ではないよね」
「……はいっ」

 答えるのが若干恥ずかしかったが、否定する気は起きなかった。
 それ以上に、ルシエルと王都でデートをすることが嬉しかったから。

(どうしよう、どうしようっ!! デートだって……!! うそ、みたい……)

 私は心の中で驚くほどに興奮していた。
 当然、そんなことを口に出すことは恥ずかしくて出来ないが、気持ちを抑えられないくらい今の私は浮かれている。

「ふふっ、フィーは素直でいい子だね。今日はデートなんだから、王都に着いたら恋人のように接するよ」
「え!? それは困りますっ!」

「大丈夫。周りは僕達を見ても仲の良い兄妹のようにしか思わないよ」
「そうかな……」

 私が不安そうに呟くと、ルシエルは「そうだよ」と明るい声で答えた。
 彼の言葉は信用ならないけど、周囲の人間は私達の存在をわざわざ気になんてしないだろう。
 そう思うと、少しだけ気持ちが楽になる。

(考え過ぎるのが私の悪い癖、なのよね。今日は余計なことは考えずに、思いっきり楽しんでみよう……!)

 ルシエルと王都に行く機会は滅多にないことだし、先程彼は卒業祝いだと言っていた。
 それならば、少しくらい羽目を外してはしゃいだとしても許してもらえるだろう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)

かのん
恋愛
 気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。  わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・  これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。 あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ! 本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。 完結しておりますので、安心してお読みください。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

ヤンデレにデレてみた

果桃しろくろ
恋愛
母が、ヤンデレな義父と再婚した。 もれなく、ヤンデレな義弟がついてきた。

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

×一夜の過ち→◎毎晩大正解!

名乃坂
恋愛
一夜の過ちを犯した相手が不幸にもたまたまヤンデレストーカー男だったヒロインのお話です。

処理中です...