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第二章:私の心を掻き乱さないでくださいっ!
51.悩ませるもの①
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今日は復学して二日目を迎えるのだが、初日に比べると私に向けられる視線も殆ど消えていて内心ほっとしていた。
だけど私の心はざわついていて、落ち着かない。
私をこんな気持ちにさせているのは……。
角を曲がり教室が見えてくると、そわそわとしている令嬢達の姿が目に入った。
(なんだろう……)
不思議に思い視線を更に奥へと向けると、一際目立つ存在が目に入り足がピタリと止まる。
その姿を視界に捉えてしまうと心拍数が上がり、私の足は動けなくなっていた。
壁際に背を向けるように立っている人物こそ、昨日から私の心を乱している張本人だったからだ。
(なんで、エルネスト様がここに……)
昨日のことを思い出すと、どんな顔をして会えばいいのかが分からない。
どうしよう……と焦り、落ち着きがない様子で意味も無く視線をあちらこちらへと向けたりしていた。
今の私は完全に動揺している。
まさかこんな朝一番に会うことになるなんて、思ってもみなかった。
私が立ち止まっていると、ヒソヒソと話す令嬢達の話し声が耳に入ってきた。
「やっぱりいつ見ても素敵ね。だけど、どうしてここにエルネスト様がいらっしゃるのかしら。誰かを待っているように見えるけど……」
「きっとイルメラ様よ。この前一緒にいるところをお見かけしたわ」
「やっぱりお二人は婚約なさるのかしら。はぁ、そうだとしたらショックだわ」
「ちょっと、そんな話をイルメラ様に聞かれたら……」
(あ、そっか。イルメラ様って私と同じクラスだった)
イルメラに会いに来たと言う話を聞いて、少しだけがっかりしてしまった。
それと同時に自分に会いに来たのだと、勝手に勘違いしてしまったことに恥ずかしさを覚える。
昨日エルネスト本人から、イルメラは婚約者ではないと聞かされた。
だけど候補に挙がっている以上、今後そうなる可能性もないとは言えない。
そんなことを考え始めてしまうと、胸の奥がもやもやとしていく。
私が表情を曇らせていると、ふわっと甘い香水のような匂いが漂った。
そしてすぐ隣をさらりとした長い銀髪の髪が、靡くように通り過ぎていく。
視線を横に傾けると、ストロベリーのような色の瞳を持つ令嬢の姿が目に入った。
スラッとした綺麗な体型だけど、大きな瞳のせいで少し幼さを感じさせる顔立ち。
そして彼女は奥にいる人物を見つけると、表情を崩し少女らしい屈託のない笑顔を見せる。
「エルネスト様」
「これはイルメラ嬢、おはよう」
彼女の声はこちらにも伝わってくるくらい、明るく弾んでいるように聞こえた。
呼び声に気付いたエルネストは、優しい表情でイルメラに挨拶を返していた。
「おはようございます。エルネスト様がこちらの教室に来られるなんて、珍しいですね」
「ある人を待っていてね」
「それって、もしかして……」
私は戸惑った様子でその光景を眺めていた。
二人の様子を見つめているのは、恐らく私だけではないはずだ。
不意にエルネストの視線がこちらに向いた。
間違いなく視線が合った。
だけど突然のことに驚いてしまい、私は露骨に視線を逸らしてしまった。
ドキドキし過ぎて、目を合わすことすら恥ずかしいと感じてしまう。
(ど、どうしよう……)
「見つけた」
「え?」
エルネストはぽつりと呟くと、ゆっくりと歩き出した。
いくら目を向けないようにしていても、真っ直ぐに見つめられている視線は何となく感じる。
私は戸惑いから逃れるために俯いていた。
すると足音が目の前で止まり、視界に誰かの足下が映る。
(……っ)
「それで隠れているつもりか?」
「……っ!?」
突然耳元で囁かれ、ビクッと体を震わせゆっくりと顔を上げた。
そこには優しい顔で見つめるエルネストの姿があった。
「お、おはようございますっ」
「おはよう、フェリシア」
私は慌てるように挨拶をした。
するとエルネストは笑顔で返してくれたが、それに続く言葉が私の口からは出てこない。
周囲の視線も当然私達の方へと向けられていて、緊張から更に声が出せなくなっていたのだろう。
「固まっている様子だけど、大丈夫か?」
「……っ」
エルネストは黙っている私を見つめ問いかけてきた。
その原因を作っているのは間違いなくエルネストだ。
だけど周りの視線が気になって、困った顔を向けて表情で訴える事しか出来ない。
「突然会いに来たから、驚かせてしまったか?だけど君のその困った顔、相変わらず可愛らしいな」
「ど、どうしたんですか……」
そんな台詞を周りに聞かれてしまうのが恥ずかしく感じて、私は慌てるように問いかけた。
「フェリシアの顔が見たかった、というのは理由にはならないか?」
「……っ、ちょっとこちらにっ!」
エルネストは微笑みながらサラリと答えてきた。
顔の奥が一気に熱くなり、私はエルネストの腕を掴むと教室とは別方向に向かい歩き始めた。
周りの視線が耐えられなかった為、この場所から一刻も早く逃げ出したかったというのが理由だ。
(いきなり、何を言い出すの……!?皆が見てるのに。恥ずかしい……)
だけど私の心はざわついていて、落ち着かない。
私をこんな気持ちにさせているのは……。
角を曲がり教室が見えてくると、そわそわとしている令嬢達の姿が目に入った。
(なんだろう……)
不思議に思い視線を更に奥へと向けると、一際目立つ存在が目に入り足がピタリと止まる。
その姿を視界に捉えてしまうと心拍数が上がり、私の足は動けなくなっていた。
壁際に背を向けるように立っている人物こそ、昨日から私の心を乱している張本人だったからだ。
(なんで、エルネスト様がここに……)
昨日のことを思い出すと、どんな顔をして会えばいいのかが分からない。
どうしよう……と焦り、落ち着きがない様子で意味も無く視線をあちらこちらへと向けたりしていた。
今の私は完全に動揺している。
まさかこんな朝一番に会うことになるなんて、思ってもみなかった。
私が立ち止まっていると、ヒソヒソと話す令嬢達の話し声が耳に入ってきた。
「やっぱりいつ見ても素敵ね。だけど、どうしてここにエルネスト様がいらっしゃるのかしら。誰かを待っているように見えるけど……」
「きっとイルメラ様よ。この前一緒にいるところをお見かけしたわ」
「やっぱりお二人は婚約なさるのかしら。はぁ、そうだとしたらショックだわ」
「ちょっと、そんな話をイルメラ様に聞かれたら……」
(あ、そっか。イルメラ様って私と同じクラスだった)
イルメラに会いに来たと言う話を聞いて、少しだけがっかりしてしまった。
それと同時に自分に会いに来たのだと、勝手に勘違いしてしまったことに恥ずかしさを覚える。
昨日エルネスト本人から、イルメラは婚約者ではないと聞かされた。
だけど候補に挙がっている以上、今後そうなる可能性もないとは言えない。
そんなことを考え始めてしまうと、胸の奥がもやもやとしていく。
私が表情を曇らせていると、ふわっと甘い香水のような匂いが漂った。
そしてすぐ隣をさらりとした長い銀髪の髪が、靡くように通り過ぎていく。
視線を横に傾けると、ストロベリーのような色の瞳を持つ令嬢の姿が目に入った。
スラッとした綺麗な体型だけど、大きな瞳のせいで少し幼さを感じさせる顔立ち。
そして彼女は奥にいる人物を見つけると、表情を崩し少女らしい屈託のない笑顔を見せる。
「エルネスト様」
「これはイルメラ嬢、おはよう」
彼女の声はこちらにも伝わってくるくらい、明るく弾んでいるように聞こえた。
呼び声に気付いたエルネストは、優しい表情でイルメラに挨拶を返していた。
「おはようございます。エルネスト様がこちらの教室に来られるなんて、珍しいですね」
「ある人を待っていてね」
「それって、もしかして……」
私は戸惑った様子でその光景を眺めていた。
二人の様子を見つめているのは、恐らく私だけではないはずだ。
不意にエルネストの視線がこちらに向いた。
間違いなく視線が合った。
だけど突然のことに驚いてしまい、私は露骨に視線を逸らしてしまった。
ドキドキし過ぎて、目を合わすことすら恥ずかしいと感じてしまう。
(ど、どうしよう……)
「見つけた」
「え?」
エルネストはぽつりと呟くと、ゆっくりと歩き出した。
いくら目を向けないようにしていても、真っ直ぐに見つめられている視線は何となく感じる。
私は戸惑いから逃れるために俯いていた。
すると足音が目の前で止まり、視界に誰かの足下が映る。
(……っ)
「それで隠れているつもりか?」
「……っ!?」
突然耳元で囁かれ、ビクッと体を震わせゆっくりと顔を上げた。
そこには優しい顔で見つめるエルネストの姿があった。
「お、おはようございますっ」
「おはよう、フェリシア」
私は慌てるように挨拶をした。
するとエルネストは笑顔で返してくれたが、それに続く言葉が私の口からは出てこない。
周囲の視線も当然私達の方へと向けられていて、緊張から更に声が出せなくなっていたのだろう。
「固まっている様子だけど、大丈夫か?」
「……っ」
エルネストは黙っている私を見つめ問いかけてきた。
その原因を作っているのは間違いなくエルネストだ。
だけど周りの視線が気になって、困った顔を向けて表情で訴える事しか出来ない。
「突然会いに来たから、驚かせてしまったか?だけど君のその困った顔、相変わらず可愛らしいな」
「ど、どうしたんですか……」
そんな台詞を周りに聞かれてしまうのが恥ずかしく感じて、私は慌てるように問いかけた。
「フェリシアの顔が見たかった、というのは理由にはならないか?」
「……っ、ちょっとこちらにっ!」
エルネストは微笑みながらサラリと答えてきた。
顔の奥が一気に熱くなり、私はエルネストの腕を掴むと教室とは別方向に向かい歩き始めた。
周りの視線が耐えられなかった為、この場所から一刻も早く逃げ出したかったというのが理由だ。
(いきなり、何を言い出すの……!?皆が見てるのに。恥ずかしい……)
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