蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

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第一章 蒼髪の少女

1-5 ナギサイド

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 いや~、ビックリしたな~。本当にビックリしたな~。さっきの光景見て、ビックリしない人なんていないでしょう?

 まず、カチュアが目を覚ましてから、いきなり、豚が、いや、牙を生やしていたから、猪か。その猪みたいな生き物に、襲われるなんて。

 てか、猪って、あんなにメタボ体型だっけ? 猪は以外とスリムだったような……気のせいか? まあ、猪はいいっか。

 ……良くなかったよ! あの時、心臓止まるかと思ったよ! 目を覚ましてから、いきなり大ピンチだったから!

 しかし、そんな大ピンチをひっくり返すような光景を見てしまった。

 それは、カチュアが目を覚ましたばかりなのに、襲って来たその太った猪、見たいな奴を斬りつけて倒しちゃったんだよ! 一瞬だったから、分からなかったけど、カチュアが使っていたのは剣だったかな? それにしても、あれは中々できないことだよな。

 どうやら、カチュアは、のんびりした雰囲気と裏腹に、凄まじい反射神経の良さの持ち主のようだ。

 カチュアが夢の中? で、危機感を感じていたけど、この猪のことか。それを夢の中? から、危険を察知するなんて、恐ろしい子だ。

 それは、それとして。……ここは現実世界よね? そして、なんで、私はカチュアの中にいるの? 夢の中では、彼女と対面していたのに。……これは、私の完全な勘だけど、どうやら、あれは、カチュアの、夢の世界というよりも、何っていったらいいのかは、わからないけど、私の精神が彼女の中に入っている? って、ことになるわよね?

 にしても……。

「ふは~。お腹一杯~。ご地蔵様でしたわ~」

 猪の丸焼きとシチューを、丸ごと食べたよ、この人。私の見立てだと、三人前はあったはずなのに。

 この料理は、カチュアが助けた女の子が、カチュアによって斬りつけられた猪の肉を使って調理をしたんだよね。

「よかったんだよ! 急に、倒れた時は、ビックリしたんだよ!」
「おいしかったわ~。ありがとね~。わたし、もう三日も食べてなかったのよ~?」

 それは……、腹が減るよね。

「あ! あたしの名前はエドナなんだよ。この近くにある村、ライム村に住んでいるんだよ。あのー、さっきは、ありがとうございます」
「いいのよ~、それにお互い様だから~」

 エドナって子が、お辞儀した時に、揺れる物体が目に行ってしまった。

 このエドナという子も……、おっぱいデカい! さすがにカチュアほどの、大きさはないんだけど。……カチュアは規格外だけど。それでも、やっぱりデカい! なんか、服の胸元辺りのボタンが取れてし。サイズが合わなくって、ボタンが吹っ飛んだのかな? 飛ぶ程大きいのかよ!! 

 しかも背小さい! 最近の子は発達いいの!? てか、そんな小さな体……って言っていいのかわからないが、その小さな体のエドナって子は、弓を持っているから、狩りでもしているのかな? 見た目は十二歳ぐらいなのに、一人で狩りしているなんて、逞しいわね。

 ……いや、背は小さいけど、胸に関しては大人顔負けのデカさだ。案外、見た目以上の年齢かしら。こんな、見た目だけど、実は、二十歳過ぎていたりして。口調には幼さを感じるが。

 あれ? よく見たら、矢を入れて置くための筒には、矢が入っていない。もう、品切れか? だから、あの太った猪に対抗できなかったのか?

「あっ! そーだわ~! わたしは、まだ、名乗っていなかったわ~。わたしは~、カチュアっていうのよ~。よろしくね~」
「カチュアさんって言うんだね。なんだか、カチュアさんの、蒼い髪と瞳を見ると、あの伝説の女将軍に似ているんだよ!」
『蒼い髪と瞳? それに伝説の女将軍? どこかで……』 

 頭の中に、言葉を思い浮かべる感じでなくって、口から言葉を出す感覚でしゃべってしまう。

「あれ~? この声は、夢の人? どこにいるの~?」

 カチュアは誰かを探しているかのように、辺りを見渡している。探しているのは、私か。……え?

『もしかして、私の声が聞こえるのか?』

 さっきの口から言葉を出す感覚でカチュアに尋ねると。

「どうしたんですか?」

 エドナが不思議そうに尋ねた。

「あれ? なんか、声聞こえないかしら~?」
「え!? ううん~、何も聞こえないんだよ」

 私の声は、エドナには届いていないようだ。でも、カチュアには聞こえるんだな。

『……もしかして、あなたにしか、声が聞こえないみたいね。私はしばらく黙っているわ。あなたが、変な人に思われると、いけないから』

 まあ、私から見れば、カチュアは、充分、変わった子なんだけどね。

『取り敢えず、周りに人がいるところでは、私と会話はしないほうかがいいわ』

 別精神が宿っているって、普通は信じなそうだから、私とカチュアだけの秘密にするため、カチュアに釘を刺したつもりでいた。

 そのつもりだ。そのつもりなのに……。

「あの~」
「あ! うん! なんだか、よく、わかないけど~、わたし以外にしか、聞こえない、うまく言えないんだけど……、うーん……、そっか! わたしの中に幽霊みたいな人が居るみたいなのよ~」
『て、おい! コラっ!! 何、即刻、バラしているんだよ!!』 

 完全に口を滑らせた感じではない! この子、隠す気、さらさらなかった!! 本当に何やっているんだよ!? そんな、別精神が宿っているって、普通は信じないから! だから、私のことは、言わない方がいいて、たった今、釘刺しといたんですよ! 

 それに、幽霊みたいな人って、何よ!? 背後霊か、何かですか、私は!? もっと、いい言い方はなかったんですか!?

 カチュアの中で怒り狂う私。

「そうなんだ! 不思議なことも、あるみたいなんだね!」

 納得するんかい! まあ、いいけど。これ以上のツッコミするのも、疲れるし。それにしても、幽霊は失礼でしょ。まあ、似たようなものと、割り切るしかないかな? 実際、私はここにいないから。……なんか悔しい。

「たしか~……。ナギちゃん、だったよね? 名前は?」
 
 あ~。確か、そんな名で、名乗っていったような? 自分の名前すら、覚えていなかったから、適当に名乗ったものだが。まあいいか。

『そうだけど』
「……ナギちゃんで、いいみたい~」

 カチュアが通訳者みたいになって、いるんですけど。私が直接話せれば……。この子、喋り方ががかなりスローペースだから。全然、会話が進まん。

「そうなんだ。あたしには、聞こえないですけど、よろしくなんだよ!」

 天然なのかな? と思ってしまうほど、いい子過ぎないかな? 普通信じないでしょ。はたから見ると一人芝居している変人でしょ。カチュアが。

『話戻させて』
「ねぇ~。ナギちゃんが話を戻してといから、話を戻そう~。…………何の話だっけ?」
『女将軍!』
「女将軍? ……わたしが知っている、その女将軍は~、蒼炎戦記に出てくる、女将軍しか知らないわ~。その女将軍のことかしら~?」
「そうです。蒼炎戦記は約七百年前に、起きた大きな戦いを、記されたもので、強大な力を得た支配王と、その妹の女将軍との戦いで、最後は女将軍が勝利したんだよ。カチュアさんのような、蒼い髪と瞳と、あたしが生まれ始めて、見たんだよ。それで、なんとなく、蒼炎戦記に出てくる女将軍シェリアと特徴が、似ているんだよ。カチュアさんは」
「そーなんだ~」

 なんだか、興味が無さそうな返事の仕方だな、これ。

 それにしても、蒼炎戦記に、伝説の女将軍シェリアか。機会が、あったら、それ関係の書物を読みたいわね。どこかで、聞いたことあるし、自分探しの手がかりになりそうだし。なんとなくだけど。

「それで、カチュアさんは、どうしてここに?」
「え? ええ、とお~、わたしは……」

  長い、「わたしは……」といいながらも三分くらい口を動かしてないよ。

「長い間、一人で各地に周っているのよ~。もう七年も~」

 そういえば、夢ではカチュアのことは、何も聞けなかったけど、この子は、一人旅していたんだ。あれ?

「七年も? カチュアさんって、歳いくつですか?」

 そうだよね。カチュアって、見た目が二十代いくか、どうかなのイメージだけど。その歳で七年前からって。

「うーん……十八歳ね~」
「ということは……」

 数えているようだけど、考えるのが長い。パッと答えられる計算だと思うのだが。

「十一歳の時からですか!?」

 あ~、よかった。時間かけて計算して、正解に導くなんて~。

「でも、どうして、その歳で旅をしていたんですか?」

 それは気になるよ。

「ちょっと、待っていてね~。今思い出すから……」

 いや、忘れてたんかい。でも、普通じゃないことは確かよね。十一歳で一人旅なんて。よく今まで無事だったよね。あの反射神経の良さは、十一歳の時は、まだ、身に付いていなさそうだから。

「う~ん……。自分探しの旅? かな~」

 適当だな。しかも、聞きたいのは、こっちなんだけど……。

 それにしても自分探しの旅って何があった? 十一歳って、将来の進路を真剣に、悩む年頃でもないでしょ……たぶん。

「そうなんですか?」

 いや! そんなんで、納得するところかよ!?

「ところで、何で河辺に寝てたんですか?」

 それは気になる。あの夢って、言うべきかはわからないけれど。あれ以前には、私はいなかったて、言っていたし、もしかしたら、あの夢を見る前、カチュアが、何をしていたかが、知れば、私がカチュアの中に宿った、きっかけがわかるかも、しれない。まあ、カチュアが覚えていたらの話だけど。

「旅の途中で、どっかの山にいたんだけど……。川辺のところを歩いていたら、足を滑らせて川に落ちちゃったの~」
『ちょっと待って! あんた、流されていたの?』

 目を開けた時は、河原にいたから、その辺で寝てただけだと、思っていたけど。いや、違うか、あんな猪がいるところで、呑気に寝るアホはいないか。

「山って、デク山のこと? 確か、村長さんが言うには、ここから歩いて、四日掛かるところだったような……、ということは、そんな長く流されてたいのですか?」
「あらあら~、そんなに流されちゃったのね~」

 いや待って。あんた、流されているのに呑気に寝てたの? どういう真剣しているんだよ!?

 もしかして、私もその川で溺れていたかしら!? 死ぬところにカチュアを器にした。それで私の体事態は失った、それなら辻褄は会うけど、そんなことが出来ればだけど。

 ……まあ、断言はできないし、この件はもう置いておこう、てか、今は忘れておこう。

「エドナちゃんは、一人で何していたの~?」
「狩りをしていたんだよ。まだ、何にも、狩れていないんだよ。調理したデブボアはカチュアさんが狩ったんです」

 ああ、やっぱり狩りしていたのね。でも、この子の頭に巻くスカーフって、普通は耳を隠しておくものだっけ? 耳も狩りをしていく中では、必要なのに。まあ、隠していたからって、まったく聴こえないことはないと思うはず。

「狩りをしていたところ、申し訳ないんだけど~、わたしをエドナちゃんの村まで、案内してもらって、いいかな~? 泊まる、ところが、ほしいの~」
「あの、私の家に泊まっても、いいですよ。あたし、今は一人暮らしなんだよ」
「いいの? ありがと~。……あ! そーだわ~。わたしも、狩り手伝うわね~」
「えっ!? いいんですか?」
「お礼よ~。せっかく、獲った、お肉はわたしが、全部食べちゃたわ~。それに夕ご飯を調達しないと~」
「そっか! そうと決まれば、さっそく行くんだよ!」

 エドナは走っていってしまった。

『行っちゃった……。何か……、あなたに似てるね』
「え~? そーかな~」

 うん、独特な世界観を持っているところが。……それよりも。

『……行かなくっていいの? エドナって子、もう見えないよ』
「……あ~! 本当だわ~、まって~、エドナちゃ~ん」

 遅れたカチュアはエドナを追いかける。

 まったく。この子は世話が焼けるわ。にしても、あの二人は、なんで初対面なのに、あんなに仲が良くなったんだ? お互い、お人好しなのか? 悪い人に騙されなければ、いいのだか。それでも、そういった勘がいいのか? いずれにしても、あの二人は、かなり危なっかしいのは、確かよね。

 こういうとき、精神で助かった。体があったら、あの二人に振り回されて身体的が疲れそう。……なんか、複雑。

 てか、あれ? エドナの矢とか入れとく筒を見てみると、あれ?
 
 あのー、エドナさーん、あなた矢は?
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