蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

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第七章 守るべきもの

7-2 エドナサイド

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 帝都から、少し離れた平地。 

「どうしてこうなったんでしょうか?」
「でも、戦いに巻き込まれた時は、背中を任せる相手のことは知らないと、安心しませんですわ」

 カチュアさん達を見守るあたし達。

 カチュアさんと、アイラさんが互いに向き合う。まさに、決闘なんだよ。

「アイラさんって、確か『鳥籠』と言われていたのを聞いたことがあります」 
「それって、二つ名だよね? でも、どういうことなの?」
「さあ。ルナにはわかりません」
「まあ、見ればわかるぜ。そのままだから」

 鳥籠って、鳥が入る籠のことだよね? きっと、鶏肉が大好きで鳥を捕まえるから、鳥籠って、名づけられたんだよ。

「マリンから、ある程度聞いている。ヴァルキュリア族だっけ? あなたは」
「そーらしいわ~」
「その力、見せてもらうよ」

 カチュアさんは、今いる場所から、一歩後ろへ下がったんだよ。

 シューン!!

 ビックリしたんだよ!

 すると、カチュアさんが、数秒前までいた所から、数本の鎖が出現したんだよ。

「あれって、アルヴスさんが、悪いことをした人を縛り付けていたのと、同じなんだよ」
「拘束術。攻撃にも、使えるんです。拘束術は地の魔術の応用。アイラさんの得意魔術は恐らく地ですね」

 次々と、カチュアさんのいた足場から、鎖が出現していったんだよ。

「こんなテンポよく魔術って、使えるものですか?」
「アイラさんって、確か、勇能力の持ち主でした。そうなると……無詠唱ですか」

 カチュアさんは、いつものこと、なんだ、けれども、まるで何処から、鎖が現れるか、分かっている、じゃないかって、くらい、上手く避けているんだよ。

 だけど。

  一本の鎖がカチュアに襲いかかってきたんだよ。その鎖は地面から出てきたのではなく、アイラさんが投げ付けた、鎖だったんだよ。だけど、カチュアさんは、問題なく躱したんだよ。

「君は凄いな、この状況で、僕からの、攻撃を躱すなんて」

 投げ付けた鎖は、アイラが鎖を持っている方の手を引くと戻っていったんだよ。

「アイラさんから、出された鎖は、魔術ではないようですね」
「アイラの武器も鎖なんだよ」
「拘束系の武器に魔術。……だから、異名は『鳥籠』ですか?」

 ルナちゃんが、納得しているみたいなんだけど、あたしには、どういうことなのか、イマイチ、わからないんだよ。

「じゃあ、こんなのはどうだ?」

 地面からまた、鎖が出現したんだよ。だけど、出てきた鎖はカチュアさんの真下ではなかったんだよ。次々と出てくる鎖はカチュアさんの周りに出現したんだよ。そして、鎖はカチュアさんを閉じ込めたんだよ。真上まで、鎖で塞がり、まるで籠なんだよ。

「この鎖からは、逃れられない」

 カチュアさんが、鎖で、できた籠に閉じ込められちゃったんだよ!

 地面から、鎖が出てきてカチュアさんは躱すんだよ。だけど、籠からも鎖が出てきて、それもカチュアさんは躱したんだよ。次々と出現する鎖を避け続けるんだよ、カチュアさんは。

「鳥籠の中にいるのに、鎖を全て避けるなんて! これはヴァルキュリアの力か?」

 カチュアさんは、躱し続けるんだよ。だけど、このままじゃ、カチュアさんは、力尽きちゃうんだよ。

「このままだと、危ないわ~」
 
 カチュアさんが、ぼそっと、何か言っていたようなんだよ! 気のせいかな?

 すると、カチュアさんの全身から、蒼い炎が出てきたんだよ。

「あれが、伝説の女将軍と同じ」

 カチュアは走り出し、襲いかかってくる鎖を、剣で薙ぎ払ったんだよ。

 そして、一斬り、籠目掛けて斬りつけると、出口が出来て、カチュアは、籠の中から脱出できたんだよ。

 籠はカチュアさんが、脱出したと、同時に消えたんだよ。

 アイラさんは隙を与えさせなかったんだよ。カチュアさんが脱出したとの同時に鎖を投げつけたんだよ。

 カチュアさんは、軽々と躱したんだよ。

「あまい!」

 鎖は軌道が変わり、カチュアさんの背後目掛けて戻ってきたんだ。

 カチュアさんは、それも避けると。鎖を掴んだんだよ。

 そして。

「いくわよ~」

 カチュアさんは、力一杯に鎖を引っ張ったんだよ。

「うわ!」

 アイラさんは鎖を持っていたため、アイラさんも飛んでいったんだよ。空高く飛ばされた、アイラさんは鎖を手放した。

「危ない、危ない」

 アイラさん。着地が上手いんだよ。

「そこまで! これ以上、やったら、キリが無くなる」

 マリンさんが止めに入ったんだよ。

 カチュアさんは剣を鞘に収めたんだよ。

「暗殺集団を撒かせたことはある」

  アイラさんは手を出した。握手かな?

「これから宜しく」
「こちらこそ~」

 互いの手を握るたんだよ。

 ジューーー。

 アイラさんは直ぐに手を離した。アイラさんの手には、煙が出ていたんだよ。

「だいじょぶ?」
「ああ……」
「ごめんなさい。たぶん、わたしが……」
「いや、平気だ」



 手合わせは、終わり、いざっ、出発なんだよ。

 ルナちゃんは手を振りながら、あたし達を見送りをしたんだよ。

「気をつけてくださいよ! 特にエドナさんは!」

 あたしたちは再び旅立つんだよ。

 あれ? あたしの後ろで、カチュアさんとアイラさんが話している。

「一つ聞いてもいいかしら~?」
「何だ?」
「あの手合わせで、あなたは、誰を狙っていたのかしら~?」
「え?」
「手持ち武器の鎖以外。そう、あなたが扱った魔術ね~。明らかに、わたしを狙っていたものではないわ~。……始めは。あなたの攻撃は、途中で軌道が変わっちゃって、わたしを狙いを定めていたわね~」
「……」
「それにあの魔術。明らかに、手合わせでは放つものでは、ないのよ。まるで殺しに掛かるような。そして、その気はわたしに向けられたものでは、ないのよ~」
「……殺すか? 僕を?」
「え? 何でかしら~?」
「いや、聞きたいのは僕だけど」
「今は感じないのよ。誰かを殺したい気を。たぶん、それはあなたの本心ではないのね。とても、苦しんでいるわ~」
「ごめん、今は話せない」
「どーして? 話しだけでも、聞くわ~」
「いきなり、ネタばらしは面白くない。旅は長いんだ。その間にちょっと、ずつネタばらしをしていくさ」
「そーいうものなの~?」
「……そうだな」
「分かったわ~。話したい時に話してね~」
「分かった。ありがとう」

 少しだけだけど、二人の会話は聞き取れないんだよ。

 でも、これだけは分かるんだよ。楽しい会話では、ないことなんだよ。そんな気がするんだよ。
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