蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

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第九章 渓谷の発明少女

9-3 ナギパート

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「よく来てくれましたッス。お疲れのところ申し訳ございませんッス」

 この美人な女性はこのロレンス聖国の聖王ネフェニー。スイレンの母親だ。

 その隣にいるのが、その娘のスイレン。スイレンとネフェニーは人魚族と言われている亜種。人魚というと、何故だか、わからないが、下半身魚というイメージだが、足は人間と同じ足をしている。だけど、「魚」が付くだけあって、太もも辺りに魚のような鱗は付いている。

 もうひとり、ネフェニーの息子で、スイレンの兄である、レインがいるんだが、姿はないようだ。レインはスイレンの兄だが、人魚族ではなく、巨人族だ。父親は巨人族らしい。巨人族だけあって、体はデカい、そして、顔が見えない。だが、背が高いから、顔が見えないわけではない。

 そして、先に着いていた、ユミルとマリンがいた。

「あの~、本題に入る前に、何かあったッスか?」

 気には、なるよな。エドナ、レオ、アイラの姿を見れば。カチュアは顔が見えないから、どんな表情しているか、分からない。

 普段から、やる気を全く感じさせない、レオだが、死んだ魚のような目をしていて、生気が感じられない程。立ってはいるが、ぐったりしていた。実際、危うく、四つの果実に挟まれて、窒息死する所だったから、死人のような顔になっても仕方がないよな。
 
 エドナの方は手で顔を隠していた。指と指の隙間から、見える顔は赤くなっていた。これは、自身の寝相の悪さで、カチュアと口づけをしてしまい、その恥ずかしさで、赤くなった顔を抑えているのだ。

 てか、この子、恥じらいとか、あったのか?

 そして、実害がなかったアイラは、現実を避けるかのように、目の焦点がどこか、別のところを向いていた。

「アイラはどこを向いているんだ?」

 マリンが尋ねても。

「いや~、別に~」

 下手なごまかし方をするアイラ。

 二十代の女性だが、女の子同士の口づけが刺激が強いのか、現実逃避でもしている見たいだ。

「カチュアさんも一緒にいらっしゃたのに、三方と違っていつも通りですわ。あの三方は、何か、あったのか分かります?」

 ユミルがカチュアに尋ねる。

 てか、エドナにキスされたのに、変わりないのかよ!?

「ん~」

 黙り込んだ。

 相変わらず時間かかるんだよな。案の定、しばらく、考え込んで、口が開く。

「エドナちゃんが大胆で~……」
 
 言いかけようとしたところで。

「はわわわわ!!! 何でもない! 何でもないんだよ!!!」

 エドナが慌てて、カチュアの口を塞ごうとした。

「あ!」

 ドーーーーーン!!

 エドナは足を躓いて、カチュアに思いっきりぶつかってしまう。カチュアは普段敵の攻撃を、未来が読めるかってぐらい、軽々と躱せる。あの豊満なボディを持っているのに機敏に動けるのは怖い。それを言ったら、エドナも小柄ながら、体格に似合わない、ボディを持っているのに関わらず、足が速いんだ。

 豊満なボディはほっといて。

 そんな、カチュアだが、なぜか、エドナの転んだ拍子で引き起こす、突進などの被害を避けることはできないんだ。どうやら、カチュアは相手の悪意や殺意を感じて、攻撃を躱したりするらしい。仮に相手に背後を取られても。けど、ドジを起こしたエドナの場合はそれに該当するものがないから、事前に感じて、躱すことが出来ないらしいんだ。

「ちょっと! エドナさん!」

 仰向けに倒れたカチュアは、うつ伏せ状態のエドナの下敷きになっていた。その横に顔を赤く染まっているユミルの姿が。

 今はどんな状況というと、宿屋での出来事を、エドナが一部再現してしまった。

 そう、カチュアとエドナはまた、互いの唇をくっつけてしまった。

「はわわわわわ!!! ごめんなんだよ!!!」

 エドナは慌てて、立ち上がった。

 カオスだ。



「あの~、そろそろ本題にはいっていいッスか?」

 カチュア以外、目の焦点がどこか向いていた。エドナは手で顔を抑えていた。隙間から見えるエドナの顔は赤かった。

「あなた方は小人族を探しているッスね? それで、ロランス経由でヴァルダンにある渓谷へ向かうと」
「小人族がいる可能性があるかもしれない。一目が付かないところを探すのが一番と考えています」
「あそこはクレイジー渓谷といって危ない渓谷ッス。ただでさえ、危ないところッスが、さらに、巨大な鳥系魔物が住み着いているッス。魔人族との闘いの終戦後に知らせが入ったッス」
「それは本当か? ただ、住み着いているだけならいいのだが」
「でも、小人族がいるなら、ほって置けないわ~、被害にあうかもしれないわ~」
「いる断言はできないが、いると考えればほって置けないか。よし! ざあ、さっそく……」
「あの~」

 ユミルがゆっくりと手を上げる。

「わたくしは、医者さんから、魔人族の戦いで怪我を負った人の具合を見るの手伝って欲しいと言われましたの、残りますわ」
「わかったわ~。頑張ってね~」

 ユミルは残る。

「私も行きたいッスが、お母様とお兄様が臨時の魔人王の謁見に行かなければならなくなったッス。その間、私が王宮に残らないといけなくなったッス」

 スイレンも残る。

「あたしはカチュア達と一緒に行くよ」

 一番やる気を出さないレオが同行。

「妾は行くぜ」
「マリンが行くなら僕もいくよ」

 マリンとアイラのセットが同行。

「じゃあ~、行きましょうか」

 今回はカチュア、エドナ、マリン、アイラ、レオがクレイジー渓谷と呼ばれるほどの渓谷へ向かうことに。

 ところで、そんなところにエドナが行ってもいいのか? 悲惨な未来しか見えないんだが。
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