蒼炎のカチュア

黒桐 涼風

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第十一章 ヘルディアの傭兵

11ー3 エドナサイド

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 レオさんは、急にレオさんの故郷でもあるダグザへ、帰っていっちゃたんだよ。結局、その理由はわからなかったんだよ。



 あたしとカチュアさんは、宿屋の一階にあるフロントまで行くと。

「あれ~? ルナちゃん達だわ~。どこか行くの~?」

 宿屋から出て行こうとした、ルナちゃん、アイラさん、犬人形に入ったミラさんを見かけたんだよ。カチュアさんが三人に声を掛けたんだよ。

「あ! カチュアにエドナか。今から、僕の魔道具を作るための素材を買いに行くところだ」
「アイラさんの魔道具をですか?」
「僕は勇能力が使えなったから、魔道具を装備しないと、魔術が使えなくなったんだ」

 そう言えば、そうなんだよ。アイラさんは勇能力を持っていたんだけど、あの暴走が治まった後に、勇能力が使えなくなったんだよ。でも、何で使えなくなったのかな?

「はっはっは! ミラに掛かれば、材料があれば、魔道具を作れるのさ!」

 この、大きな声で笑う、ワンちゃんは大きな人形で、その中にはミラちゃんがいるんだよ。実際に、大きな声で笑っているのはミラちゃんなんだよ。

 でも、ミラちゃんは、こんなに大きな声で笑う人かな? ユミルさんのように、人見知りな性格だと思っていたんだよ。

「君は隠れる気があるのか? 小人族は存在が知られれば、狙われるんだよ」
「ただ、どこで調達するかだな」
「おーい。聞いているか?」

 アイラさんの声が、真剣に考えるミラちゃんには、届いていないんだよ。

 魔道具の材料か。どこにあるんだろう? そう言えば、ハルトさんが、武器作りに魔道具を作るに必要な素材も使うことがあるって、聞いたことがあるんだよ。となると……。

「そうだ! 武器屋をやっている、ハルトさんのお店に行こう! ハルトさんなら、魔道具を作るための素材を所持しているかも、しれないんだよ」
「その人は、武器を作れるのか?」
「うん」
「武器を作る人なら確かに、素材ぐらいは持っているかも、行ってみるか」



 ということで、あたし達はハルトさんのお店に向かったんだよ。

「ハルトさん! お久しぶりなんだよ!」
「おお! 小ちゃな嬢ちゃん久しぶりだな」
「エドナなんだよ! いい加減覚えてよ!」

 相変わらず、人の名前を覚えられない人なんだよ。

「あんたは……」

 アイラさんはハルトさんの顔をじっと、見ているんだよ。どうしたんだろう?

「は! そのハゲ頭! もしかして、あんた、ヴァルハルト!」
「ん? よく見たら、ユミルちゃんの従姉妹ちゃんじゃねぇか!」
「アイラだ! いい加減、名前覚えろよ。複雑な名前じゃないんだから。てか、ユミルお姉ちゃんの名前しか、覚えていないのは相変わらずか。他は忘れているのに」
「あれ? アイラさんとハルトさんって、知り合いだったの? それに、ハルトさんは、アイラさんと同じ空の勇者のユミルさんも、知っている見たいなんだい」
「昔の同僚だ」
「ところで、今、ハルトさんのことをヴァルハルトと呼びませんですか?」
「ヴァルハルトって、どこかで聞いたような~」
「ヴァルハルトは悪帝を倒した空の勇者の一人です。もしかして、あなたが!」
「え! ハルトさん、そうだったの?」
「そう言えば、俺の昔の名前はそうだったような」
「いや、本名を覚えていないんか!」

 ハルトさん。自分の昔の名前まで忘れているんだよ。ここまで、名前に関して無頓着だったなんて。

 はわわ? 今、「人のことを言えないだろうと」と聞こえたんだけど。気のせいかな?

「こいつは、こんな奴でね。悪帝の戦いの時でも、それで仲間に迷惑を掛けたんだよ。確か、あれは、偵察任務を任せられた話だったな。帝都に侵入する際、パートナーと仮名で呼んで、侵入していた時があったんだ。だけど、肝心のヴァルハルトは、その自分の仮名すら、忘れて、帝国兵に正体がバレて大変だったんだ」
「いや~、懐かしいな。あれは、あれでいい思い出だったな」
「なるほど。以前、ルナが、ハルトさんのことを、どこかで見たことあるっと思ったら、王宮で飾られていた、肖像画だったですね」

 ハルトさんが、かつての英雄ヴァルハルトだったなんて。驚きの事実なんだよ!

「てか、あんた。今まで武器屋をやっていたんだな」
「ハルトさんは、しばらくは、あたしの村に住んでいたんだよ」
「武器作りを活かして、街で武器屋を始めたんだよ。定期的に村には帰って、いたんだ」
「あんたに商売なんて、できたんだな。武器名すら、ろくに覚えられないのに」

 あ! それは、村長さんに、指摘されていたのを覚えているんだよ!

「あなたは、一応、商人さんですよね? 商品名覚えられないのは致命的では?」

 ルナちゃんの目が小さくなったうえ、大きく息を吐いたんだよ。どうしたのかな?

「武器種だけは、覚えられるけど」
「それすら、忘れていたら、医者に診てもらえよ」

 アイラさんも、目が小さくなったうえで、大きく息を吐いたんだよ。

 あたしは、ふっと、台の上に置いてあった鉱石が目に入ったんだよ

「はう? この鉱石は? かなりの大きいなんだよ」
「ああ。蒼の嬢ちゃんの武器作るために、取り寄せたんだが、これを武器を作るために加工するのが難しくって、盾なら、まだマシに作れるんだが」

 すると、犬人形の首が取れたんだよ。胴体から、ミラちゃんが出てきたんだよ

「あの~、これなら、ミラなら……作れます」

 さっきの勢いがいい喋り方でなくって、ビクビクした喋り方になったんだよ。

「ミラさん! 出てきてもいいんですか?」
「驚いたんた! 小さな嬢ちゃんよりも、小さな子がいたなんて!」
「もー! そこまで小さくないんだよ! それに、なんで、あたしが世界中で一番小さいことになっているの!?」

 頬を膨らませたんだよ。もー!!

「ヴァルハルト。こいつは、小人族だ。聞いたことぐらい、あるだろう?」
「そっか! こいつが。見るのは初めてだな」

 ハルトさんは、ミラちゃんの人形をじっと、見つめているんだよ。

「この人形は武器か?」
「違うんだよ! ミラさんの住処だよ」
「隠れているのは事実ですが、住処ではないですよ」
「そうだったの?」
「エドナさん。絡繰人形で戦う戦法を持つ、人形師というのがあります。ミラさんは、その人形師ですよね?」
「基本的には、使い分けています。人形だと、機敏には、動かないから、素早い相手には不利なんです」

 これ、武器だったんだね。そう言えば、この犬人形の口から、玉を吐き出したんだよ。その玉が障害物に当たると、爆破していたんだよ。

「この鉱石なら、カチュアさんのバカ力でも、耐えきれる武器が作くれるかもしれません」
「あら~。ホントーなの~?」
「ただ、この鉱石は重たいのです。ですので、この場で作らないと」
「なら、店内にある工房を使うといい」
「ありがとうございます……。ミ、ミラはここに残って、カチュアさんの武器を作ります!」
「ミラの護衛を兼ねて僕も残るよ。どのみち、勇能力が使えないから、今の僕では、カチュア達の力にはならない」
「あれ? 従姉妹ちゃんは勇能力の持ち主じゃなかったけ?」
「ハルトさんって不思議な人ですね。人の名前は覚えられないのに、それ以外だと物覚えいいんですね」
「まあ、こんな奴だから」

 アイラさんが、また大きく息を吐いたんだよ。

「勇能力だが使えなくなったんだ。だから、魔道具を作る素材の調達に……」
「なるほどな。俺は魔道具は作れないが、素材ならある。ただ、土台を作れても魔石がなければ、魔道具として成り立たない」
「あ、魔道具なら、ミラが作れます。魔石なら、いくつか、持っていますので……」
「なら、大丈夫か」
「あ! そうだ! エドナさん、これを……」

 ミラちゃんから、宝石が二つも付いている腕輪見たいなものを渡されたんだよ。これって。

「これは魔道具? でも、あたしは……」

 実は、あたしは魔道具がなくっても魔術が使えることを最近知ったんだよ。あたしはどうやら、妖精族という亜種らしんだよ。

「ちょっと! その話は、ルナから聞いたから知っているんだ。その話はヴァルハルトがいるところでは……」
「知っていたじゃ、ないかしら~。エドナちゃんが、妖精族だっていうことを~」

 皆んな一斉に、ハルトさんに視線を向けたんだよ。

「知られちゃったか。まあ、この子らは、悪い子達じゃなさそうだし」
「村長さん達は知っていたんですね? あたしが妖精族だっていうこと」
「小さな嬢ちゃん以外の村人全員」
「何で、村の皆は知っていて、あたしだけ、知らなかったの?」
「妖精族の過去を知ってしまうと、怯えながら暮らすことになる。知らない方が幸せだと、思って、小さな嬢ちゃんには妖精族だということを隠していたんだ」
「でも、エドナは何故、人間の村に?」
「村長さんが言うには、生まればかりの小さな嬢ちゃんを父親が預けたと聞いていたが」
「村長さんには、お母さんはあたしが生まれた時に亡くなったと聞いていたんだよ。お父さんはまだ生きているって」
「あの村には、欲深い輩はいない。それに、あの村長さんは昔は大賢者と呼ばれていたんだ。一番、嬢ちゃんが安全に暮らせる人里だったんだ」
「というわけだから、正体を隠すのに、魔道具を着けてください」
「分かったんだよ」

 あたしは、魔道具を右腕に付けたんだよ。

「ちょっと、待って! 小さな嬢ちゃんの正体がバレたら、大変だ! ここは……」
「だいじょぶよ~。わたしがエドナちゃんを守るわ~」
「それに、戦争を終わらせないと何だよ! あたしの治癒術が役に立つんだよ」
「まるで、ユンヌを見ているようだ。自分が決めたことは、危険な状態なのに、誰かのために動いていた」
「マリンだって、戦うんだ。僕も魔道具ができ次第、追いつくよ」
「あ、そうだ。カチュアさん、これを」

 ミラちゃんは、大剣をカチュアさんに渡したんだよ。あれ? この大剣はどこから出てきたのかな?

「カチュアさんの、大剣が出来るまでの仮です」
「ありがとー。そーだわ~。これを」

 カチュアさんが持っていたのは、アイラさんの暴走時に、カチュアさんの大剣が壊れたから、ミラさんから、変わりの武器として、渡された斧だったんだよ。この斧は、投げたら、戻ってくるんだよ。

「カチュアさんなら、使えこなせますので持っておいてください」
「分かったわ~」
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