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トランタ目線2
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「さて、仕事の話をしようか。あのクソ侯爵はいつから来るんだ?」
机に並べられた書類を手に取り、イグニスに聞いた。
その名を言うだけでも苛立ちを覚える。
「ガルマン侯爵様は5日後に王都に入る予定になっております」
俺がクソ侯爵といった言葉に、眉間に皺を寄せた。
「毎回毎回何故わざわざ自分から出向いてくるんだ?代わりの奴を来させればいいだろが。どうせ、俺達に文句言いたいだけだろう」
「それは、トランタの返し方が酷いからだろう」
宥めるように言うアトラスに、甘すぎる、といつも思うが王子として揉め事を避けたい気持ちも、立場も分かるだけに余計腹が立った。
それをわかっているからこそ、あのクソ侯爵は言葉強く突いてくるんだ。
「何言ってるんだ。こっちはあの手この手で物資を運んでるんだ。それをありたがたく思う気持ちがあいつにはさらっさらない!」
「その言い方はどうかと思うよ。北部の民を為を思えばこそ、僕達もガルマン侯爵殿も動いているんだ」
「分かってるが、だったらもう少し感謝の言葉を言うべきだろ?夏のは物資が腐りやすいのを知ってて、責めてくるのはどうかと思うぜ」
「そうだけど、そこを考えるのが僕達の仕事じゃないか。でも・・・もう策はないしね」
はあ、と深い溜息をつきながらパラパラと書類をめくるアトラスに、気持ちが暗くなった。
この国は大きく東西南北の4つに別れ、それぞれを侯爵家が治めている。
そうして公爵家が、さらに統治する。
東西をシュベルツ公爵家、
南北をヴェルディ公爵家、
となっている。
王都があるこの地は南部と呼ばれ、平地が広がり、気候もよく豊かな場所だ。
そして今難題となっているのが北部の日照での食糧不足。元々北部は土壌が固く作物が育ちにくいうえに、ここ数年日照りが続き、より食糧不足が深刻となっていた。
北部の特産物は宝石。
良質な鉱石が取れる鉱山が幾つもあり、それを加工し販売しているが、鉱山に携わらない民はどうなる?
クソ侯爵家からの報告では餓死者はいないとなっているが、そんな事はないだろう。
北部からの申請を受けたのは一昨年。本来このような人命の関わる大任は国王陛下自ら、もしくは公爵がやるべきだが、国王陛下次直々にアトラスと俺に命を下した。
アトラスを時期王に相応しいと知らしめる布石としたいのは否応にもわかった。
それは、俺にとっても地盤を固めるに為に有利に動くことも理解していた。
家が公爵とはいえ、次男とは家も継げず己の実力のみで這い上がるしかない。
運良くアトラスの友人となり共にいるのなら、手腕を発揮し時期王になくてはならない存在にならなければならない。
国王陛下はその機会を下さったのに、全く上手くかなかった。
涼しい時期はどの場所から運搬されても腐る事は少ない。だが、暑い時期に入ると生物は腐りやすく、北部に到着する頃には半分が傷んでいた。
そこをあのクソ侯爵は責めてくる。
わざと悪い品物を調達しているだの、北部を気に入らないから丁寧に扱わないだの、色々文句を言ってくる。
思い出すだけで腹が立つ。
只でさえ父上と仲が悪いせいか、俺に対して明らかに喧嘩を売ってくる。
「そんなに怖い顔しても仕方ないよ。これ以上の策はないんだ。箱も変えたし、人も増やした。運搬時間も色々変えてみた。野菜に詳しい人も増やしてみた。その他もやって見たけど変わらなかった。仕方ないよ。今回も同じようにするしかない」
「そうだが、あいつは俺とお前が気に入らないんだ。分かってるのか!?これ以上失敗したらお前の立場が弱くなるんだ!そうなれば、お前が国王になった時、あいつに頭が上がらなくなるんだ!」
「分かってるよ。でも、これ以上策がない。たとえ半分が腐ったとしても、作物を運ばないと北部の民が苦しむだけだ」
アトラスの辛そうながらも笑う言葉に、ふとスティールの顔が浮かんだ。
「そう、だ、イグニス。スティールの家は農作物を主要としていたな」
イグニスが調べてくれた資料を思い出した。
「その通りです。ニルギス子爵家ほぼ農作物で収入を得ていますが、こう言っては何ですが、平民相手に作っている品物ばかりです。 物資で選ばれた品物には足元にも届かないものばかりですよ」
「そうだろうが、何かしら糸口はなるかもしれないだろ」
「藁にもすがる、か」
「いや、会う口実だ」
呟くアトラスに冗談で言ったのに、あまりにも呆れた顔になり睨んできた。
「じゃあ楽しんできたら?その後のガルマン侯爵殿の悪口雑言に耐えれるくらいにね」
吐き捨てるアトラスに、少しは嫌味を言えるようになったんだな、と感心した。
「羨ましいだろ。お前も早く運命の女性を見つけるべきだな」
「そうだね。僕はいつも僕に微笑んでくれる女性を選ぶよ。誰かさんみたいに、姑息な手を使って捕まえたりしないよ」
「何を言う。使えるものは使うべきだろ?それに、運命の相手を見つけたんだ是が非でも手に入れるだろうが。誰かさんみたいに、仕事一筋、とは違うんだ」
ぽいとぞんざいに書類を机に投げ冷めたお茶を一気に飲んだ。
何故かいつもより美味く感じた。
そして、むっと睨むアトラスに得意げに笑って見せた。
机に並べられた書類を手に取り、イグニスに聞いた。
その名を言うだけでも苛立ちを覚える。
「ガルマン侯爵様は5日後に王都に入る予定になっております」
俺がクソ侯爵といった言葉に、眉間に皺を寄せた。
「毎回毎回何故わざわざ自分から出向いてくるんだ?代わりの奴を来させればいいだろが。どうせ、俺達に文句言いたいだけだろう」
「それは、トランタの返し方が酷いからだろう」
宥めるように言うアトラスに、甘すぎる、といつも思うが王子として揉め事を避けたい気持ちも、立場も分かるだけに余計腹が立った。
それをわかっているからこそ、あのクソ侯爵は言葉強く突いてくるんだ。
「何言ってるんだ。こっちはあの手この手で物資を運んでるんだ。それをありたがたく思う気持ちがあいつにはさらっさらない!」
「その言い方はどうかと思うよ。北部の民を為を思えばこそ、僕達もガルマン侯爵殿も動いているんだ」
「分かってるが、だったらもう少し感謝の言葉を言うべきだろ?夏のは物資が腐りやすいのを知ってて、責めてくるのはどうかと思うぜ」
「そうだけど、そこを考えるのが僕達の仕事じゃないか。でも・・・もう策はないしね」
はあ、と深い溜息をつきながらパラパラと書類をめくるアトラスに、気持ちが暗くなった。
この国は大きく東西南北の4つに別れ、それぞれを侯爵家が治めている。
そうして公爵家が、さらに統治する。
東西をシュベルツ公爵家、
南北をヴェルディ公爵家、
となっている。
王都があるこの地は南部と呼ばれ、平地が広がり、気候もよく豊かな場所だ。
そして今難題となっているのが北部の日照での食糧不足。元々北部は土壌が固く作物が育ちにくいうえに、ここ数年日照りが続き、より食糧不足が深刻となっていた。
北部の特産物は宝石。
良質な鉱石が取れる鉱山が幾つもあり、それを加工し販売しているが、鉱山に携わらない民はどうなる?
クソ侯爵家からの報告では餓死者はいないとなっているが、そんな事はないだろう。
北部からの申請を受けたのは一昨年。本来このような人命の関わる大任は国王陛下自ら、もしくは公爵がやるべきだが、国王陛下次直々にアトラスと俺に命を下した。
アトラスを時期王に相応しいと知らしめる布石としたいのは否応にもわかった。
それは、俺にとっても地盤を固めるに為に有利に動くことも理解していた。
家が公爵とはいえ、次男とは家も継げず己の実力のみで這い上がるしかない。
運良くアトラスの友人となり共にいるのなら、手腕を発揮し時期王になくてはならない存在にならなければならない。
国王陛下はその機会を下さったのに、全く上手くかなかった。
涼しい時期はどの場所から運搬されても腐る事は少ない。だが、暑い時期に入ると生物は腐りやすく、北部に到着する頃には半分が傷んでいた。
そこをあのクソ侯爵は責めてくる。
わざと悪い品物を調達しているだの、北部を気に入らないから丁寧に扱わないだの、色々文句を言ってくる。
思い出すだけで腹が立つ。
只でさえ父上と仲が悪いせいか、俺に対して明らかに喧嘩を売ってくる。
「そんなに怖い顔しても仕方ないよ。これ以上の策はないんだ。箱も変えたし、人も増やした。運搬時間も色々変えてみた。野菜に詳しい人も増やしてみた。その他もやって見たけど変わらなかった。仕方ないよ。今回も同じようにするしかない」
「そうだが、あいつは俺とお前が気に入らないんだ。分かってるのか!?これ以上失敗したらお前の立場が弱くなるんだ!そうなれば、お前が国王になった時、あいつに頭が上がらなくなるんだ!」
「分かってるよ。でも、これ以上策がない。たとえ半分が腐ったとしても、作物を運ばないと北部の民が苦しむだけだ」
アトラスの辛そうながらも笑う言葉に、ふとスティールの顔が浮かんだ。
「そう、だ、イグニス。スティールの家は農作物を主要としていたな」
イグニスが調べてくれた資料を思い出した。
「その通りです。ニルギス子爵家ほぼ農作物で収入を得ていますが、こう言っては何ですが、平民相手に作っている品物ばかりです。 物資で選ばれた品物には足元にも届かないものばかりですよ」
「そうだろうが、何かしら糸口はなるかもしれないだろ」
「藁にもすがる、か」
「いや、会う口実だ」
呟くアトラスに冗談で言ったのに、あまりにも呆れた顔になり睨んできた。
「じゃあ楽しんできたら?その後のガルマン侯爵殿の悪口雑言に耐えれるくらいにね」
吐き捨てるアトラスに、少しは嫌味を言えるようになったんだな、と感心した。
「羨ましいだろ。お前も早く運命の女性を見つけるべきだな」
「そうだね。僕はいつも僕に微笑んでくれる女性を選ぶよ。誰かさんみたいに、姑息な手を使って捕まえたりしないよ」
「何を言う。使えるものは使うべきだろ?それに、運命の相手を見つけたんだ是が非でも手に入れるだろうが。誰かさんみたいに、仕事一筋、とは違うんだ」
ぽいとぞんざいに書類を机に投げ冷めたお茶を一気に飲んだ。
何故かいつもより美味く感じた。
そして、むっと睨むアトラスに得意げに笑って見せた。
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