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馬車の中2
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屋敷につくまで、グラリン様はずっと笑いながら、
主様が勝つかスティール様が勝つか楽しみですよ、私はスティール様の味方をしますよ、
と意味不明なことを言っていたし、あと
主様がちょっかい出してきたら助けますが、必要ですか?
と聞いてきたから、
それは必要です!
と答えたら、またお腹を抱えて笑われた。
流石に苛ついてきたから、そっぽを向いて窓を見た。
だって酷くない?
笑っている意味も分かんないし、言っている言葉の意味も分かんないし、助けて欲しいか、と聞かれて助けて欲しい、とちゃんと答えたのに、また笑われて気分が言い訳がない。
只でさえ、この現状についていけなくて、実は、結構不安なのに、
そのへこたれそうな気持ちを持ち上げている中、公爵子息だけでなく、姫様に会ったり、とか非現実がありすぎで、より不安になっているのに拍車をかけてこの笑い。
という訳で、景色を見ていた。
景色は余計な事喋らないからね。
ふん。
笑いながら何か言ってくるグラリン様に全く答えず無視していたら、流石に笑いを止めて、謝罪の言葉に変わった。
が、それよりも気になる事が目の前に入って来たから、結局謝罪について返事が出来なかった。
何故かと言うと、屋敷に近づくにつれ見た事のある紋章の旗と、見た事のある紋章のマントをつけた騎士が増えだした。
ガルマン侯爵家の紋章だ。
私の屋敷は王都近くに屋敷を持っているが、本当に王都近くになると土地が破格の値段にるし、別にそんなに近くなくてもいいから端の端だ。
森近くのなんにもない場所に、うようよと騎士達が歩いているのは異様で物々しい。
そうしてこの馬車が見えると即座場所を開け頭を下げる姿を見ると、なんだが申し訳ない気分になる。
「子爵令嬢。気分を害して申し訳ありません!私の気持ちが緩んだせいで、失言をしてしまいました」
「それよりも、今日の晩餐には陛下や王妃様、もしくは上級貴族とやらは出席するのですか?」
結局、私はグラリン様の、必死の言葉を全て無視し、気になった事を聞いてしまった。
かなりショックを受けた顔に一瞬なったが、悪いけどどうでもいい。
「え、あ、いいえ。物資事業は全てガルマン侯爵様と殿下、として主に任されていますので参加されませんし、今回は子爵家での晩餐ですから全て断った、と聞いています。あの、子爵令嬢スティール様、私は決して子爵令嬢を馬鹿にして笑ったのではなく、主に対してそのようにものを言われるご令嬢が楽しくて、笑ってしまったのです。ほら、我が主はあの通り腹黒でございますが、顔も権力も揃っておりますからご令嬢達はこぞってご自分をアピールするのが、子爵令嬢スティール様は全くその素振りはなく、新鮮で笑ってしまったのです。ですから、絶対にバカにした訳ではありません!」
私が無視したのがかなり堪えているみたいで、可愛い顔な分だけ可哀想に見えて、
何だが、
とっても、
腹がたってきた。
そうよ、こうやって可愛い顔やイケメンはお願いしたら全部許されると思っているんだ。ちょっーと、甘い声とか、悲しい声出したら女は言う事聞くと思ってる。
グレンがそうだった。
人間という生き物は、1度でも嫌な気分になってしまうと、違う人間だと分かっていても同じように見えて壁を作りたくなるみたい。
うーん、困った。とってもイライラしてきた。
しっとりと濡れたような瞳で謝罪してくる顔が、哀願に見えてしまって逆に冷静になってしまう。
でも、この人は公爵子息に頼まれ偶然、
いや、偶然か?
私がこういう顔が好きじゃないと知ってて選んできた。
つまり、この方は顔は悪いが根本的には悪くない?
「今の言葉は、本音、ですか?私が公爵子息になびかないのが面白くて笑った、というのは」
「本音です!」
本音っぽいな。
「子爵という立場をバカにしている訳ではないのですね?」
「勿論です!姫様の言うように、隠し球、と言う方に会うのを楽しみにしてました」
あの人は、どういうふうに私を説明してるんだ?
「公爵子息が私の邪魔をしてきたら、本当に止めてくれまか?」
「騎士に二言はありません!元々、主様がスティール様の側につくように命を下した時点で、スティール様の言葉には逆らいません。ですが、当主であるヴェルディ公爵様の命なら、私は申し訳ありませんがその命に従います」
当然だな。
「分かりました。では、謝罪を受け入れますが」
「ありがとうございます!」
座っているのに深々と頭を下げてくるグラリン様に、少し重たく感じた。
「謝罪を受け入れるのに、もうひとつ条件があります」
「何でしょうか?」
「グラリン様はお幾つですか?」
「私、ですか?私は今年21歳になります」
「じゃあ同じ歳です!」
「そう、ですか?」
「じゃあ、もう少しざっくばらんな話し方をして欲しいな。堅苦しいし話方だと私が相談しずらいの」
「つまり、本気で主を避けたい、という事か?」
うんうん、いいねぇ。その話し方と、その無邪気な瞳。
「あったり前よ。隠し球とか大層に言うけど、巻き込まれただけなんだから、迷惑してるのよ!」
「そこまで毛嫌いするのは聞いてて楽しいが、まあ、なんと言うか、男としては、可哀想な気分になるな」
苦笑いするグラリン様に、首を傾げた。
「どうして?あんな女タラシのような男になびく令嬢の方が可哀想よ」
「女タラシ?主、が?」
何故かとても疑問符を投げかけられた。
「だってあんなキザな事言う言い慣れてるからでしょ?」
「そういう人もいるけど、主はそういう人ではないなけど、まあ、スティール様にそう見えているなら、男して最低な奴だな。では、私におまかせあれ」
にっこりと微笑むグラリン様が、本当に心から言ってくれているのに安堵したのと、また、笑いを堪えているようで、とても不思議だった。
主様が勝つかスティール様が勝つか楽しみですよ、私はスティール様の味方をしますよ、
と意味不明なことを言っていたし、あと
主様がちょっかい出してきたら助けますが、必要ですか?
と聞いてきたから、
それは必要です!
と答えたら、またお腹を抱えて笑われた。
流石に苛ついてきたから、そっぽを向いて窓を見た。
だって酷くない?
笑っている意味も分かんないし、言っている言葉の意味も分かんないし、助けて欲しいか、と聞かれて助けて欲しい、とちゃんと答えたのに、また笑われて気分が言い訳がない。
只でさえ、この現状についていけなくて、実は、結構不安なのに、
そのへこたれそうな気持ちを持ち上げている中、公爵子息だけでなく、姫様に会ったり、とか非現実がありすぎで、より不安になっているのに拍車をかけてこの笑い。
という訳で、景色を見ていた。
景色は余計な事喋らないからね。
ふん。
笑いながら何か言ってくるグラリン様に全く答えず無視していたら、流石に笑いを止めて、謝罪の言葉に変わった。
が、それよりも気になる事が目の前に入って来たから、結局謝罪について返事が出来なかった。
何故かと言うと、屋敷に近づくにつれ見た事のある紋章の旗と、見た事のある紋章のマントをつけた騎士が増えだした。
ガルマン侯爵家の紋章だ。
私の屋敷は王都近くに屋敷を持っているが、本当に王都近くになると土地が破格の値段にるし、別にそんなに近くなくてもいいから端の端だ。
森近くのなんにもない場所に、うようよと騎士達が歩いているのは異様で物々しい。
そうしてこの馬車が見えると即座場所を開け頭を下げる姿を見ると、なんだが申し訳ない気分になる。
「子爵令嬢。気分を害して申し訳ありません!私の気持ちが緩んだせいで、失言をしてしまいました」
「それよりも、今日の晩餐には陛下や王妃様、もしくは上級貴族とやらは出席するのですか?」
結局、私はグラリン様の、必死の言葉を全て無視し、気になった事を聞いてしまった。
かなりショックを受けた顔に一瞬なったが、悪いけどどうでもいい。
「え、あ、いいえ。物資事業は全てガルマン侯爵様と殿下、として主に任されていますので参加されませんし、今回は子爵家での晩餐ですから全て断った、と聞いています。あの、子爵令嬢スティール様、私は決して子爵令嬢を馬鹿にして笑ったのではなく、主に対してそのようにものを言われるご令嬢が楽しくて、笑ってしまったのです。ほら、我が主はあの通り腹黒でございますが、顔も権力も揃っておりますからご令嬢達はこぞってご自分をアピールするのが、子爵令嬢スティール様は全くその素振りはなく、新鮮で笑ってしまったのです。ですから、絶対にバカにした訳ではありません!」
私が無視したのがかなり堪えているみたいで、可愛い顔な分だけ可哀想に見えて、
何だが、
とっても、
腹がたってきた。
そうよ、こうやって可愛い顔やイケメンはお願いしたら全部許されると思っているんだ。ちょっーと、甘い声とか、悲しい声出したら女は言う事聞くと思ってる。
グレンがそうだった。
人間という生き物は、1度でも嫌な気分になってしまうと、違う人間だと分かっていても同じように見えて壁を作りたくなるみたい。
うーん、困った。とってもイライラしてきた。
しっとりと濡れたような瞳で謝罪してくる顔が、哀願に見えてしまって逆に冷静になってしまう。
でも、この人は公爵子息に頼まれ偶然、
いや、偶然か?
私がこういう顔が好きじゃないと知ってて選んできた。
つまり、この方は顔は悪いが根本的には悪くない?
「今の言葉は、本音、ですか?私が公爵子息になびかないのが面白くて笑った、というのは」
「本音です!」
本音っぽいな。
「子爵という立場をバカにしている訳ではないのですね?」
「勿論です!姫様の言うように、隠し球、と言う方に会うのを楽しみにしてました」
あの人は、どういうふうに私を説明してるんだ?
「公爵子息が私の邪魔をしてきたら、本当に止めてくれまか?」
「騎士に二言はありません!元々、主様がスティール様の側につくように命を下した時点で、スティール様の言葉には逆らいません。ですが、当主であるヴェルディ公爵様の命なら、私は申し訳ありませんがその命に従います」
当然だな。
「分かりました。では、謝罪を受け入れますが」
「ありがとうございます!」
座っているのに深々と頭を下げてくるグラリン様に、少し重たく感じた。
「謝罪を受け入れるのに、もうひとつ条件があります」
「何でしょうか?」
「グラリン様はお幾つですか?」
「私、ですか?私は今年21歳になります」
「じゃあ同じ歳です!」
「そう、ですか?」
「じゃあ、もう少しざっくばらんな話し方をして欲しいな。堅苦しいし話方だと私が相談しずらいの」
「つまり、本気で主を避けたい、という事か?」
うんうん、いいねぇ。その話し方と、その無邪気な瞳。
「あったり前よ。隠し球とか大層に言うけど、巻き込まれただけなんだから、迷惑してるのよ!」
「そこまで毛嫌いするのは聞いてて楽しいが、まあ、なんと言うか、男としては、可哀想な気分になるな」
苦笑いするグラリン様に、首を傾げた。
「どうして?あんな女タラシのような男になびく令嬢の方が可哀想よ」
「女タラシ?主、が?」
何故かとても疑問符を投げかけられた。
「だってあんなキザな事言う言い慣れてるからでしょ?」
「そういう人もいるけど、主はそういう人ではないなけど、まあ、スティール様にそう見えているなら、男して最低な奴だな。では、私におまかせあれ」
にっこりと微笑むグラリン様が、本当に心から言ってくれているのに安堵したのと、また、笑いを堪えているようで、とても不思議だった。
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