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「学生、だから?」
「そ、そう、そうです。少しおふざけが過ぎただけです」
ああ・・・。
駄目ですってば、何故素直に謝れないのですか。
「そこの2人、名を名乗りなさい!」
カレンは叫び、殿下の背後にいる2人を指さした。
逆鱗に触れた。
なんて、相応しい言葉だろう。
黒髪と漆黒の瞳が燃えるように見え、襲い被さるようにとてもカレンが大きく見え、恐ろしくも綺麗だった。
「ド、ドレシャン・フィルタでごさまいます」
「コリュ・テレリナ。テレリナでごさまいます」
弾かれたように声を出し名を言った。
理解した。
カレンはわざと2人の名前を周りにいる生徒に聞こえるようにしているのだ。
帝国皇子と皇女の機嫌を損ねた2人だと、周囲に知らしめ、そうして殿下もいるのだと、より注目させる為に。
「王子、私達がこの国で過ごす日々のことは、全て帝国に報告する事になっている。一語一句詳細に。この国での処分が出来ないのなら、変わりに私がやってあげるわ。王子もろともご一緒に、帝国裁判に!学生のおふざけ!?そんな態度をこの国では公爵令嬢に平然とするとなれば、帝国皇女として見逃せないわ!!」
「申し訳ありません!!」
「座るな!」
膝をつこうとした3人を、フィーが鋭く止めた。
「カレン、少し落ち着こう。俺も納得はしないが、見る目のない王子がやっと自分の周りには無能な友人しか居ないと気づけたんだ。少し様子を見てやろう」
「はあ。そう?フィーがそう言うなら、仕方ないわねえ。じゃあ王子、そちらで処分を決めて、国を通じて帝国に書面を送って頂戴」
不謹慎ながらも少し笑いが出そうで、下を向いて一生懸命に我慢した。
2人とも急に演技っぽくなったのだもの。本気で帝国裁判にかける気は無いんだわ。
「え・・・帝国にですか?」
大袈裟だ、と驚くのと、この件に殿下本人が関わっているから、都合良く書けない。
「当たり前でしょ?今日の事は報告されるのよ。その報告と、この国での処分を照らし合わせて、本当に正しいものかを判断するわ。喜んでよ。わざわざ、皇后様から判断を頂くわ」
うわあ、絶対逃げられないようにしたわね。
皇后、つまりはお2人のお母様だ。何度かお会いしたことがあるが、お2人が留学の為、ご一緒に過ごす時間が少ないせいか、何かのパーティー等で久しぶりにお会い出来るととても嬉しそうで、いつもお2人に側にいて心配をしていた。
微笑ましかった。
という事は、その処罰にこの2人が納得しなかったら皇后様は頷かないだろうな。
「さ、じゃあ教室に戻りましょう?そろそろ授業始まるわよ。王子、スティング様」
「そう・・・ですね」
人は気持ちに正直なのだな、と殿下を見て感心した。
意思がないようなふらふらな足取りなのに、脱兎のごとく早歩きで何にもつまずく事無く歩いていった。
気持ちはわかるわ。
「俺達も行こう」
フィーの少し気を使ったような微笑みに、有難く、心が暖かくなった。
歩き出すと予鈴がなった。
普段こんな時間ギリギリに生徒はいないはずなのに、沢山の生徒が同じように早歩きしていた。
逆の立場だったら、私も気になって見てしまうわ。
「どうして分かったの?・・・私を助けに来てくたのでしょう?」
「・・・前から知っていたんだ。本当は前から助けたかったんだが、話もしていないのに助けるのはおかしいだろ?」
「でも、もう友達よ。私カッコよくなかった!?ビビを助ける親友!これ、小説に幾つも載ってて、やってみたかったの!!」
そっち?
「違うだろ!ほら、スティングが呆れてるだろ!!違うから。ずっと前から友達になりたかったんだ。だから」
「そうそう、ずっと前からね」
「う、うるさい!えーと、友達になったから、護れるように護衛つけた?あれ?違うな」
「落ち着きなよ、フィー。つまりね、前から気になってけど接点がない私達が口出すのはおかしいでしょう?でも、友達なら、困ってたら助けたいもの。だから、私達の護衛でついてる1人をスティングに回したの。その護衛から連絡が来たから急いで来た、という訳」
「いいの、そんな人を私につけて!?帝国の護衛と言ったら精鋭部隊でしょう?」
「いいんだ、友達なんだから」
フィーの微笑みが私の胸を突き刺した。
また、
胸が苦しい。
そうか、こんなに優しくされたのは久しぶりだからから、嬉しいのだ。
「ありがとう、フィー、カレン」
素直に言った言葉に、2人は嬉しそうに微笑んでくれた。
助けに来てくれて嬉しかった。
どうしてそう思ったのだろう?
私は、殿下に何をされても、これまで何とも思わなかったのに、何故、フィーとカレンの行動にこんなにも温かい気持ちになり、殿下に対しての気持ちが落ち着いているのだろう?
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