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「おはようございます。フィー皇子様、カレン皇女様」
すぐに裾を持ち挨拶した。
いつ来たのだろう。
「おはようございます、スティング様」
「おはようございます、スティング様」
お2人がにこやかに、けれど、鋭い目付きで挨拶を返した。
2人とも怒っている。
「こ、これはお2人揃ってどうされました?」
殿下は急な登場の2人に当然狼狽えながらも愛想笑いをうかべた。
「この国の王子は、私達に挨拶もなし?ああ、いらないわ。言われてする程度、という本音なのでしょう?ありがとう、知れて良かったわ」
殿下が慌てて挨拶しようとした所をにっこり笑いながら鋭く止めた。
殿下は青ざめ俯かれ、キョロキョロと周りを見た。
このお2人の登場の中、誰も助けに来れるわけが無いが、殿下は、誰かが助けてくれると思ってるのだろうな。
遠巻きにいる王妃派を見つけたようで、さすがに手招き出来ないが、そう見える必死が良く伝わってきた。
自嘲気味な気分になった。
私は何があっても殿下を助け、口添えをしてきた。それが幸せで、自分の価値のような気がしていた。
それなのに、今は、まるで正反対。
私を嘲り、信じず、私でない、誰かに助けを求めようとしている。
私の気持ちは届いてなかったのだろうか?
「もう一度聞くわ、これは一体何事?お分かりのようにこの場は、多数の生徒が行き交う正門。そこで、男3人が女1人に詰め寄るとは、どういう事ですか?それも、相手は公爵令嬢。答えの内容によっては、許されない事よ!」
よそ見をしていた殿下に、よりカレンの怒りは膨らんだ。
聞いたこともない低い声で、カレンは私の横にたった。
帝国の皇族だ、と思わせる威厳と、品位在る立ち振る舞いに、震えが出た。
「こ、この者が嘘をついていたので、問い詰めていたのです、皇女様」
殿下のこんなに怯えた姿は初めて見た。
可哀想だ、と思う反面、もっとみたい、という不思議な気持ちもあった。
「この者、ですって?公爵令嬢であり、ご自分の婚約者をそのように呼ぶのですか?私はそこも問い詰めたいわ。いつもそう呼んでいるの?それとも後ろにご友人がいるから、あえて呼ぶの?配慮のない呼び方をするようにこの国では教えられるているの?それも、ここでは誰が聞いているかわからない現状で・・・ああ、ごめんなさい。そのような事も考れない程度の方でしたね。また、あなたの事を知れたわ」
威圧は変わらない。いや、逆に冷静に問い詰めるカレンがより怖く感じる。
「あ・・・いえ、スティング殿、です」
殿、と呼んでくれるのを久しぶりに聞いたようなきがする。
「はああ。挨拶と一緒でこちらから言われなきゃ出来ないの?フィー、メモしといてね。この国の王族の教育を見直すべきだわ」
「勿論だ。特にその王子のな」
「ま、待ってください!」
「それで、スティング様がどのような嘘をついたのかしら?」
殿下の慌てた言葉を全く無視してカレンは腕を組み睨んだ。
「失礼をお詫び致します」
「聞こえなかった?スティング様がどのよう嘘をついたの?聞かれたことだけ答えなさい。いちいちこちらか注意しないと答えれないの?」
苛立つカレンに殿下は急いで頭を下げた。
「・・・申し・・・訳ありません。昨日、フィー皇子様とカレン皇女様とご一緒に帰った、と嘘をついておりまして」
「嘘じゃないわ。ご一緒に帰ったわ」
「え?ですが、誰もそのような事は言いませんでした」
「また、おかしな事を言う人ね。スティング様が言ったのでしょう?だから、それを嘘だと勝手に思い込んだのでしょう?嘘つきは、あなただわ。誰も言いませんでした、ですって?よく言えるわね」
素晴らしいほどの揚げ足の取り方だわ。
「そ、それは・・・申し訳ありませんありません。私の説明不足でした」
「そうね、前からあなたは説明不足が多すぎる王子ですもね。申し訳ないと全く思っていないのに口先だけで、何度も同じ事を繰り返させる」
「それも書いとくな」
え!?殿下は真っ青な顔でフィーを泣きそうな顔で見た。
「お願いね。それと、そこの王子の左後ろにいる、あんたよ」
すっとコリュ様を指さした。
ひっ、と小さな悲鳴が聞こえた。
「私達が一緒に帰る所を見ているわ。ご丁寧に挨拶もしてきたわ。それなのにそいつからの報告はなかったの?」
「おい、どういうことだ!?見ていたのか!?」
「いや・・・その・・・つい忘れて・・・いまして」
「つい?へえ、昨日の事をもう忘れるの。ちょっとかなり面白い事言ってくれるわね。その程度の人間とご友人なのですね、あなたは。それとも、あなたの事を馬鹿にしてるんじゃない?報告する程じゃないって。これまた、説明不足の王子に相応しいご友人ですこと」
「だが、まともな教育を受けてない王子だ。まともな人選が出来るわけないだろ」
「確かに」
くすくすとバカにした笑いを見せる2人に、ますます空気が重たくなった。
「お前!何故教えなかった!!」
振り向きコリュ様に思いっきり怒鳴った。
「煩いわよ。自分の無能な人選に、何を八つ当たりしているの?子供みたいに人のせいにしないのよ」
「ある意味しれて良かったんじゃないか?無能な人間だとわかったんだから」
フィーが薄笑いしながら冷たく言った言葉に、殿下は、引き攣る顔で笑みを見せた。
「そ、そうですね。言われるように気づけて良かったです」
「でもねえ、この国の王子に対して報告を忘れ、その上、公爵令嬢をこのように晒し者にするのは、許されないよね。我が帝国ならば、死刑よ」
「そ、それは・・・我々はまだ学生ですから・・・」
この状況でその言葉は良くない。
子供だから許される、とそんな事思っていても今、言うべきではない。
殿下はいつもそうだ。空気が読めない。
素直と言えばそうだが、王族に生まれた時点で、子供、と言う逃げは通じない。
でも、はっきりとわかった。
2人は私のために怒っているし、殿下を一度も名前で呼んでいない。
あなた、か、王子、だ。
殿下は気付いていないようだが、野次馬で集まった学生達の中にはそれを気づく者もいる。
ああ、駄目です、殿下。
もう少し、もう少し、考えて喋って下さい。思った事を口に出してはいけません。
お2人をの怒りをこれ以上買ってはいけません。

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