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「スティング、大丈夫!?」
わっ!!
カレンが、勢い良く扉を開け私に走り寄ってきた。
なんだが分からない自分の感情の中について行けなくて、カレンが急な登場にとても驚きすぎて声が出なかったのが幸いした。
びっくりした。
「だ、大丈夫よ」
「良かった。よく我慢したと思うよ」
カレンが清々しい顔で、さ、座って、と私の肩をぐっと持ち座らせ、横に座ってきた。
凄い圧があるんだけど?
「スティングの事、御義姉様、と呼ばなくてもいいよね?」
はい?
「帝国には、クルリも連れてきてね」
はい?
「婚約から、婚儀まで、ううん、全部の催しの時には私とお揃いのドレスだからね」
はい???
「いつ、お父様に挨拶に来る?そうだ!もうすぐ夏休みだから、一緒に帰ればいいね!」
「ま、待って!まだ何も返事してないよ!」
「待てよ!俺はスティングの気持ちを大事にしたいんだ!!」
「はあ!?」
私達の言葉にカレンは、凄い形相で私とフィーを睨んだ。
「フィー、自分の気持ちを伝えたんでしょう!?ここまで来て何よ!わざわざ、ケジメを付けるために用もないこの国をお父様に頼み込んで留学して、あんなクズの王子からスティングを攫うために来たのよ!スティングだって、クズ王子だとやっと気付いて、あんなに泣いていたんでしょ!それまで馬鹿みたいにあの優しく、クズ王子を信じたけど、やっとクズのクズだと分かったのよ!その流れでフィーを受けいれないわけ無いじゃない!」
なんだろ。
そう、はっきり言われると凄くへこむ、
気持ちになってしまう。
確かに、クズ王子、だとやっと気付いたけれど、気づくのが遅すぎて自分に落ち込むわ。
でも、気になるキーワードが沢山ある。
「ちょっと聞いてもいい?さっき、用もないこの国に言ったでしょ?この国は留学に元々入ってなかったの?」
「入ってなかったわ。正直この国は大した事ないもの」
ばっさりと断言された。
「それに、何の目的があってこの国に来たのだ?とよく聞かれるけど、友好を結ぶ為、それだけなの。普通に考えて私達のような学生の未成年で、何ができるのよ。国の悪事を暴いたりするのは適した使徒がやっているわ。逆に余計な事に首を突っ込むな、と釘を刺されたわ」
納得した。
「だけど、フィーがスティングがいるからどうしても、と頭を下げてお父様に願い出たのよ。私としては、もっと大国の女性が相応しいと言ったのだけれど、頑固なフィーを誰も説得出来なかったの」
その通りだわ。この国は大したことないし、フィーなら大国の姫君との方が絶対いいもの。
この言い方から、カレンは嘘はついていない。という事は、本当にこのお2人の留学は、ただの牽制なのだ。
でも、それをどれだけの人が信じるだろうか?
後ろめたさがあるなら余計に色々勘ぐって不安になる。
それも、公爵令嬢の私と帝国皇子、皇女が親密となれば、王妃様は心中穏やかでは無いだろう。
「そんな真剣に悩まないでよ。ここに来てスティングを見て、大好きになったわ!私もスティングなら大賛成よ!ねえスティング、普通に考えてさあ、この国にいたらたとえクソ王子から離れたしても、言っていた派閥とかで、スティングは大切にされないよ。それなら、フィーを選んで帝国に来た方が、ずっと待遇もいいし、大切にされるよ」
「カレン!スティングの気持ちを考えろよ!」
「考えてるよ!こんな国にいても、楽しくないでしょ?」
「だからと言って・・・、俺に気持ちがないのなら迷惑なだけだ」
「そこは時間が経てば大丈夫!」
「どこからその能天気な考えが出てくるんだ!」
「はあ!?フィーの為に言っているんでしょうが!!」
また、兄妹喧嘩らしきものが始まってしまった。
どちらも私のことを考えてくれている。
それに、言っている事は正しい。
殿下を離れ、フィーを選べば、私は女性の頂点である皇后として約束させる。そうなれば、この国の王妃様などどうとでもなる。
でもそれでいいの?
この気持ちが、これまでの事が、そんな簡単に片付くの?
それに、
決めたんだ。
「2人ともありがとう。その、フィーの事はまだ、急すぎてすぐには返事は出来ないけれど、ちゃんと考えてるわ」
前に座るフィーは恥ずかしそうしにしながらも、優しく笑ってくれた。
「その前に、私にはやるべき事があるの。確かに大した事のない国だけど、私の国よ。これまで殿下を中心に動いてきたけど」
これからは、
「国のために動くわ」
王妃様を潰す。
「俺も手伝う」
「だから、駄目だってば。お父様に言われているでしょ」
「言わなきゃ分からないだろ」
「すぐにバレるってば」
「ありがとう、でも、大丈夫。何しなくてもいいわ。今までと同じように側にいてくれたら、あとは私が動くわ」
「何か面白しろそうだね」
「ふふっどうかな?でも、面白くいきたいわね。そうね、カレン、フィー、私と悪事を暴きましょうか」
「それ楽しそう!それも、私は手出ししなくてもいいんでしょ?」
「俺は手伝いたい」
真面目に答えるフィーにとても嬉しかった。
「2人の意見を尊重できるわ。手出ししなくても、手伝ってくれている。それで、全てを解決よ」
「スティング、凄いいい顔してるよ」
「確かに」
「2人のおかげよ。今とてもスッキリしているもの。さあ。帰ろうか?お父様達は違う部屋にいるの?」
「隣の部屋にいるわ。それにしても、スティングが去った後は、見物だったわよ」
カレンはくっ、と意地悪に頬を上げ笑いだした。
「見物?」
「スティングが泣いてホールを出たことがあの王族にとっては予想外だったのでしょうね。いつも歯向かわない、王子大好きスティングが泣いた。それも帝国皇子が、誰も付いてくるな、と言い残して後を追いかけるように出ていった」
そ、そうね。
「その直後にヴェンツェル公爵様をはじめ、公爵様達が集まりだし、話し始めて、ダンスの曲が流れても誰も踊らない。少ししてヴェンツェル様達ご家族が出ていって、追いかけるように王妃と王子がでたけど、そこは任せといて」
「任せといて?」
「帝国護衛で壁作って足止めさせて、その中を私は悠々とヴェンツェル公爵様と合流したわ。もう、笑いを堪えるのが必死だったわ。通しなさい、とか、退けない、とかもう、大喚きの、大騒ぎよ」
帝国護衛の壁。
その向こうに、王妃様?
考えて思わず笑ってしまった。
「ちょっとそれ見たかったわね。特に王妃様の慌てた顔をね」
「奥にまだ、いるんじゃない。ここに入ってくる時、護衛に、まだ喚いていたもの」
「あら、それは見ないとね。今日は何か気分がいいから、ビビの服でも着てあげようかな」
「本当に!?急いで帰ろうよ。お腹すいたしね」
「だね。なんにも食べてないもんね」
3人で顔を見合わせると、笑いがでて立ち上がり部屋を出た。
「スティング!」
帝国護衛の奥で必死に呼ぶ殿下と、忌々しい顔で睨む王妃様が見えた。
自然に微笑みが漏れ、背を向けた。
「行こう、フィー、カレン」
「スティング!」
いいえ、殿下。
もうあなたの声に、震える心が、私にはもうないわ。
「待てよ、スティング!!」
幾度も私が、殿下の為を想い名を呼んだかしれないのに、殿下はその声に耳を傾けてくれなかった。
ねえ、殿下。
人の気持ちはなんて脆くて、
危うく、
相反するのかしら。
殿下、
もう、
疲れたわ。

あなたを愛するのに疲れました。

さようなら、
私の愛。

さようなら、
殿下。

私は、
あなたの敵となります。

私達はお父様と合流し屋敷に帰った。
楽しい食事の後お父様に、
私は公爵派として、毅然と動きます、
と、断言した。

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