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「覚えてくれてたんだ」
すこし冷たくなったカップを見つめながら懐かしく思った。
「当たり前だろ。初めて見た時から気になっていた。だから・・・跡をつけたんだ」
「跡を?」
「ああ。一目見て目が離せなかった。きっかけを作ろうと子供ながらに頑張ったんだけどな」
「フィー?」
何を言おうとしているの?
その思い詰めた顔は何?
ドキドキしてきた。
「後から聞いた。その国の王子の婚約者だ、と。何度も諦めようとした。スティングがどれだけ王子を好きなのか見ていてわかった。だから、スティングが幸せになるならそれで良かったのに、そうじゃなかった」
フィー?
私の持っていたカップを取り、テーブルに置いた。
「それなら、俺が変わってスティングを幸せにしたいと思った。だから、この国に来たんだ」
「この国に・・・来た?」
フィーは、私の手を強く握り淀むことなく言葉を紡いだ。
「スティングを奪うために、この国に留学を父上に頼んだんだ。ずっと好きだった。俺を選んでくれ、スティング。あの時スティングが言っただろ?思っていることを言わないと後悔する、と」
「・・・!?」
その言葉が嘘でないと態度からでもわかった。
「今の状況で、弱くなっているスティングに言うのは卑怯だ、と分かっている。だがそれでもいいんだ。その弱さにつけ入りたいんだ。俺を、選んくれ。何があっても俺は、スティングを許せる。スティングが何かしたいのたら、それを手伝ってやるよ!」
「・・・なに言ってるの・・・。フィーの馬鹿!!フィーは帝国の皇子だよ、そんな事言ったら都合良く使われちゃうよ!私だって、フィーを都合良く使ってしまうかもしれないよ!?」
「使えよ!何かしたいんだろ!!」
「・・・フィー?」
「さっき、助けるつもりでいた、と言っただろ?」
しまった、と思った。余計なことを知らずに言ってしまった。
「そんな顔するな。カレンを呼んでくる。少し話そう。・・・スティング、俺が嫌いか?」
思いっきり首を振った。
「違う・・・の・・・。巻き込みたくないの。これは・・・私達の問題だもの」
途端にぎゅうと抱きしめてきた。
「俺の事を考えてくれているなら、心配するな。それとも、公爵殿も呼んだ方がいいか?」
「・・・ううん、お父様はまだいいわ」
「わかった。カレンを呼んでくる」
そう言って部屋を出ていった。
途端に身体が熱くなり、ドキドキしてきた。
フィーが昔から私を好き?
その為にこの国に来た?
そう言われてみれば、2人の会話でそんな風な感じがあったような気がする。
私は、フィーが好きになれる?
いや、勿論嫌いじゃない。一緒にいて楽しいし、私のことを考えてくれている。
考えれば考えるほど、ドキドキしてきてた。
これまでの私は殿下の事だけを考え、誰かに、私の事を好きになって欲しいと思ったこともなかったし、誰かが、私の事を想っているなんて、思いもしなかった。
それも、帝国皇子である、フィーが、私を?
あの綺麗な顔で、あの優しい、フィーが私を?
え!?
私を!?
ぐるぐると色んな考えが浮かぶ中、
フィーの顔がすぐに浮かんできて、
慌てて消したが、
すぐに浮かんできた。
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