253 / 650
本編
554 エルカリノ討伐戦・7 逝き地獄
しおりを挟む「くっ、ああっ! なんなんやー! くぅ~~!」
「ほんとね! なんなのかしらこれ! んッ!!」
「ふああああ~なんか力抜けちゃった~ぅぁぁ~」
そんな三者三様の様子となっている女性陣がモンモンとしている中である。
一方トウジの方はと言うと……。
◆
「あーっ! やっぱブニー出さない方がよかった!」
船に張り付きながら、もう何度果てたことか……。
船ニー。
くそ!
出さなきゃよかったんだが、ブニーがめちゃくちゃ頑張ってくれている。
俺の想像していたよりも、遥かに多くの海賊たちを叩き落としていた。
さらに、怪物っぽく恐ろしく演技しろと言ってある分もしっかりこなす。
「ォォォォォオオオオオオ! ホギュァアアアアアアア!!」
「うわああああああ!?」
「ク、クラーケンって咆哮なんてあげるのかよ!?」
「うわっ! す、墨だ! 墨を吐きやがった!」
「みんなにげろー! にげろおおおおおお!」
普段は出さないクラーケンのガチ雄叫び。
海シリーズはみんな「ォォォォ」かと思っていたんだが、ブニーは「ホギュアア」もいけるらしい。
どこからそんな声を出しているのか知らんけど、まあ聞こえるからそういうことにしておいてくれ。
そして、新たな技である墨なんだが……。
これがなんと船を溶かすんだわ……。
煙幕兼、溶解液の様な性質を持っているらしく。
武器にも用いることが可能とのこと。
さて、溶解液が船についてじわじわとかして行く。
この事実がどういうことかわかるかな?
一つ、ブニーの特殊能力についておさらいしておこう。
【サモンカード:クラーケン】
等級:ユニーク
特殊能力:攻撃時・被撃時10%の確率で快感を得る
溶解液の攻撃が永続的に行われている様な状況だ。
はい、必ず快感が押し寄せて来ます。
連続でとんでもない勢いで、マジで、墨やめろ!
「あああああーっ!」
ヤベー!
マジでヤベー!
快感が一瞬だけとかだったら、まだマシだった。
しかし、連続だと思った以上にキツイ。
「ォォォォォオオオオ!」
「ギャアアアアアアア!」
「は、早く攻撃しろー!」
攻撃するなー!
攻撃しても被撃時も条件なんだぞ!
お試しで使って見たのだけど。
今後一切ブニーの登用はやめにしようかって思った。
ブニーも、この一回のチャンスを無駄にしないためか。
頑張る。
とにかく頑張ってくれて、めちゃくちゃ船を落とす。
海賊たちを海に落とし、ワルプの異常状態ハメに。
「くっ、頑張ってくれてるからこそ戻し辛いぞこれ!」
我慢しても我慢しても、波が押し寄せて決壊。
あっ、世界平和。
あっ、宇宙平和。
あっ、人類皆兄弟。
これ……俺のグループに入っているみんなは大丈夫かな?
いや、マジのガチで。
グループリストにある名前はライデン、イグニール、マイヤー、ジュノー。
そしてカリプソ。
男装の女性は、グループ員俺を含めて6人制限に引っかかってダメだった。
こりゃ、カリプソも船でとんでもない目にあってるだろうな、うあっ!
ビリビリ、ビリビリビリ。
海面に電流が伝っている。
そうか、特殊能力は召喚したサモニング図鑑の連中にも乗っかる。
ビリーも堪えきれずに放電してしまっている様だった。
なんかすごく巨大な魚が電流で痺れて海面に浮かび上がっている。
「ワルプー、魚集めといてくれ!」
「ォォォ……」
従順で真面目で優しいワルプが少し動くのをためらっていた。
だよな……。
若干海流操作が乱れて船同士がぶつかって混乱が起こっている。
お前も、結構色々と厳しい状態なんだよな。
船の衝突による混乱によって、さらにブニーが大暴れ。
状況は、すごく良い。
奇襲は成功して、混乱に混乱を重ねて一気に船が沈む。
しかし。
しかーし!
戦いが白熱すれば白熱するほどに、俺の息子も白熱。
もう、いろんな所が敏感になってしまった。
これは麻薬にも近い効果かもしれない。
将来、なんかそういうことをする時に召喚しておくといいかもね。
感度マシマシになって、たぶんえらいこっちゃだろう。
「んなこと考えてる場合じゃない! パ、パンツと擦れるだけでやべえ!」
ブニー!
一旦ストップしろ!
もう海賊船はいいから!
海賊船はいいからー!
だが、俺の思いは届かない。
叫び声をあげたら、せっかくの隠密作戦が台無しとなってしまう。
必死にブニーいい加減にしろ、と念じるのだけど。
「ホギャアアアアアアアアアアアアア!」
ええ、通じてません。
精一杯、怪物役を演じてくれています。
どうしたらいい。
ビリーを一旦戻して、ワシタカくんに乗って離脱するか?
いや、ワシタカくんが空中でイってしまったらまずい。
海に真っ逆さまになってしまう。
お、恐ろしい子!
ブニー恐ろしい子!
ど、どうしよう。
どうしよう!
焦燥感と快感が入り混じる謎の感情に苛まれながら考える。
も、戻そう。
もういいや、ブニーもういい。
そう決心がついたところで、今度は目の前に巨大な水柱が上がった。
──ドボオオオオオオオオオオオオン!
「こ、今度はなんだ!? な、なんだー!?」
「シーモンクが呼び寄せるのは一体だけじゃなかったのか!?」
「あのクラーケンじゃないのかー!?」
海賊たちの叫び声。
俺も船の横にへばりつきながら水柱に視線を向けると。
なんと水柱の中から、三又の槍を持った巨人が姿を現した。
巨人が喋る。
『旧友の助けを求める声に呼ばれて来てみれば……いったい何の有様だ……』
なんだこいつ!?
「ポ……ポセイドン……」
「ポセイドンまでやって来やがったー!」
ポ、ポセイドン!?
そ、それって海の神様みたいな存在だよね!?
マジか!?
◆
一方その頃。
「くっ、なんで治らないんだ! こ、このままだと眠れないし、あだ名が夢精マンになってしまう……!」(ライデン)
「「「あう……くぅ……ぅぅ……ァっ……」」」(女性陣3名)
=====
ずっと攻撃時(与撃)だと考えてたんですが、被撃時だったので特殊能力に攻撃時と追加しました。
申し訳ないです。
ナマナマしい描写を書くのはちょっと違うと思ったんで、こんな感じでよろしくお願いします。
トウジが「あーっ」な時も、みんな「あーっ」してます。
98
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
無名の三流テイマーは王都のはずれでのんびり暮らす~でも、国家の要職に就く弟子たちがなぜか頼ってきます~
鈴木竜一
ファンタジー
※本作の書籍化が決定いたしました!
詳細は近況ボードに載せていきます!
「もうおまえたちに教えることは何もない――いや、マジで!」
特にこれといった功績を挙げず、ダラダラと冒険者生活を続けてきた無名冒険者兼テイマーのバーツ。今日も危険とは無縁の安全な採集クエストをこなして飯代を稼げたことを喜ぶ彼の前に、自分を「師匠」と呼ぶ若い女性・ノエリ―が現れる。弟子をとった記憶のないバーツだったが、十年ほど前に当時惚れていた女性にいいところを見せようと、彼女が運営する施設の子どもたちにテイマーとしての心得を説いたことを思い出す。ノエリ―はその時にいた子どものひとりだったのだ。彼女曰く、師匠であるバーツの教えを守って修行を続けた結果、あの時の弟子たちはみんな国にとって欠かせない重要な役職に就いて繁栄に貢献しているという。すべては師匠であるバーツのおかげだと信じるノエリ―は、彼に王都へと移り住んでもらい、その教えを広めてほしいとお願いに来たのだ。
しかし、自身をただのしがない無名の三流冒険者だと思っているバーツは、そんな指導力はないと語る――が、そう思っているのは本人のみで、実はバーツはテイマーとしてだけでなく、【育成者】としてもとんでもない資質を持っていた。
バーツはノエリ―に押し切られる形で王都へと出向くことになるのだが、そこで立派に成長した弟子たちと再会。さらに、かつてテイムしていたが、諸事情で契約を解除した魔獣たちも、いつかバーツに再会することを夢見て自主的に鍛錬を続けており、気がつけばSランクを越える神獣へと進化していて――
こうして、無名のテイマー・バーツは慕ってくれる可愛い弟子や懐いている神獣たちとともにさまざまな国家絡みのトラブルを解決していき、気づけば国家の重要ポストの候補にまで名を連ねるが、当人は「勘弁してくれ」と困惑気味。そんなバーツは今日も王都のはずれにある運河のほとりに建てられた小屋を拠点に畑をしたり釣りをしたり、今日ものんびり暮らしつつ、弟子たちからの依頼をこなすのだった。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
私が死んで満足ですか?
マチバリ
恋愛
王太子に婚約破棄を告げられた伯爵令嬢ロロナが死んだ。
ある者は面倒な婚約破棄の手続きをせずに済んだと安堵し、ある者はずっと欲しかった物が手に入ると喜んだ。
全てが上手くおさまると思っていた彼らだったが、ロロナの死が与えた影響はあまりに大きかった。
書籍化にともない本編を引き下げいたしました
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。