装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

555 海の支配者と呼ばれる存在

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『貴様らか、我が旧友を甚振る不届きものは』

 海から顔を出した巨大な顔面が、鋭い眼光を海賊たちに向けて言う。

「う、うう……海の支配者……」

「ど、どうすりゃいいんだ……」

「ク、クラーケンどころじゃ……」

 船よりも巨大なその顔に、甲板に出ていたものたちは固まっていた。
 足が棒になってしまったが如く、甲板の上で立ち尽くし眺めていた。

 本能が思うんだ、これはヤバイと。
 そして脳が指示を出す。

 無になれ、今のお前は生き物でもなんでもないただのオブジェクト。
 生き物である、と相手に認識させないことが重要なのだ。

『まったく、水面をチョロチョロするアメンボどもが……分を弁えろ』

 海賊たちをアメンボと言う、その迫力。
 確かにこの巨人から見たら俺たちは水面に浮かぶアメンボだ。
 特に俺なんか本当にアメンボの中のアメンボ。

『で、我が旧友のシーモンクはどこにいる?』

「……」

 黙る海賊たちに、ポセイドンはカッと目を見開いて怒鳴った。

『──どこにいる、と聞いとるんだッッ!!』

 その瞬間、ブワッと海原を衝撃か駆け抜けていく。
 威力はキングさんのガチ雄叫びを思わせた。
 うん、紛うことなきポセイドンはキングさんクラス。
 いや、それ以上なのかもしれない。

『ふむ、これでも答えんか?』

 だったら、とポセイドンの後ろに尾びれが出現する。
 ポセイドンの下半身は魚のような形態になっているらしい。

 人魚だな、巨大な人魚。
 それがポセイドン。

『5秒やる、その間に答えなければ津波を起こす──5、4、3』

「──待て、ポセイドン! お前の助けに来た旧友はここにいる!」

 始まるカウントダウン。
 どうすることもできずに立ち尽くす海賊たち。
 そんな中、雄叫びのような大声が夜の海に響いた。

「分を弁えろだと? ふん、海賊が自由にして何が悪い」

 巨大な海賊船が、海に散らばる壊れた船の残骸の中を近づいてくる。

「だ、大船長!」

 大船長、つまりはエルカリノ本人が登場か。
 なんだかんだ、昔も遠くの船に引っ込んでて姿がわからなかったんだよな。
 容姿は威厳あるヒゲを蓄えた普通のおっさんにも見える。
 隣には魚の顔を持った修行僧みたいな魔物がいて、あれがシーモンクのようだ。

『エルカリノか、まだ貴様はこんなところでごっこ遊びに興じてるのか?』

「ごっこ遊びだと? まあ、貴様からしたらそうかもしれんな」

 エルカリノは鼻で悪と言葉を続けた。

「何をしている! たかがクラーケンごときに慌てふためきおって! すぐさま船を立て直せ!」

「は、はひっ! 大船長!」

「で、でも! 前方を走る船に連絡も取れなくて、混乱しちまったんでさあ!」

「なに……? 夜に紛れて何者かが攻撃を仕掛けて来た、と言うことか……?」

 思考が早いな、ドンピシャだ。
 ブニーがここまで派手に大暴れできたのも、ある程度の戦力を俺が削ったからなのである。
 まだばれないと思っていたが、ここはそろそろ引きどころかもしれないな……。

 申し訳ないが、こっそり海をワルプと抜け出て、ブニーにはしんがりを勤めてもらおう。
 最悪ブニーを生贄のような形にしてしまうかもしれないが、ここは仕方がない。
 あとで図鑑に戻したら謝っておく。

「まあいい、その話はあとで詳しく聞かせてもらう。まず先にポセイドンと交渉だ」

『交渉? 貴様たちが交渉の場に立てている、と言うのか?』

「そうだとも。貴様の旧友とやらを甚振ったのはワシらだ」

『……ほう』

 ポセイドンから大きな殺気が漏れ出ていた。
 他の海賊がガタガタと体を強張らせる中である。
 エルカリノだけは平然としたまま言った。

「シーモンクは解放する、そして二度と関わらないと約束する」

『それは交渉でもなんでもないぞ?』

「だから、一度力を貸せと言っとるんだ。今日1日だけで良い」

『……断れば?』

「断れば? どうせ殺されるのがオチならば、シーモンクも殺す」

『ふむ……』

「甚振ったことは素直に謝ろう。しかし、ワシらも後がないでな」

 ポセイドンは、鎖で繋がれエルカリノの隣にいるシーモンクを見ながら問いかける。

『何故、あの減らず口を使い我を呼んだ? その理由を答えよ?』

「これから決戦がある、その勝利の絶対的なものにしたいのだ」

『なるほど、我欲のために、我に力を貸せと言うのか』

「海賊だ。我欲に生きて何が悪い」

 エルカリノは恐れることなく言葉を続ける。

「この戦いに勝てば旧友は返し、それから向こう100年は貴様に従おう」

『貴様らが我に従ったところで、我になんの得もないわアホめ』

「ワシらは陸地に足を伸ばせる。海を統べた後は陸だ、陸にならば貴様の求めるものがきっとあると思わんか?」

 何かを知っているような、そんなエルカリノの言葉に、ポセイドンはしばし押し黙った。
 そして、答えを告げる。

『……よかろう、この我が力を貸す』

「ならば、交渉成立だな」

 殺気が抑えられ、周りの海賊たちが安堵の表情をする。
 エルカリノも表情を綻ばせた、その瞬間──尾びれが大きく動いた。

 とんでもない轟音とともに、巨大な波が発生する。
 高波?
 いや、津波に近い。

 津波は、有無を言わさず、正面に広がっていたエルカリノ大海賊団を。
 その全ての船を、包み込んだ──。

『ただし、対価は貴様らの命を持って支払ってもらう』
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