文字の大きさ
大
中
小
287 / 650
本編
588 トウジの心持ちと変な声
アドラーの目的は、ダンジョンを用いた資源管理の様な物。
俺が呼ばれた理由は、そのダンジョンとの交渉。
いったいどこで知られたのか、どこから漏れたのか。
奴は俺の行動域を粗方言い当てていた。
監視下に置かれていたとするならば、あの時洗い出したはず。
なのに、ロイ様を用いた検索にも全てひっからなかったのだ。
あ、ちなみに自我崩壊させてしまったアホはまだうちにいるぞ。
カリプソに送り返そうかとも思ったのだが、レベル高いし使える。
どっかの国に配属して、直属の密偵扱いにしようと思っていた。
全員を賄うことはできないが、一人くらいならば子飼いにしていい。
それも信用できるという一点において、洗脳染みた状態は好都合。
人でなし、と言われるかもしれないが……。
ふはは、それが世の中だバーカ。
俺は勇者でもなんでもない一般人なんだから許される。
変な宗教にも入ってないしな!
さて、話が脱線してしまったが、もっと厄介なのがいる。
そもそもデプリの魔法陣と魔国の魔法陣。
二つを掛け合わせてハイブリットタイプにすること。
複数の国が絡んでいる様な、力添えをした様な。
そんなところだろうと判断した。
ギリスにいる大切な人たちを守るためには、力を貸すことが一番だ。
「それにしても」
なんともふかふかなベッドに一人で転がって天井を見上げる。
いつもと違う、ポチもジュノーも、マクラス2号もいない。
「──寂しいな」
三十路にして人恋しくなるなんて、もう歳かな?
異世界に来て親のことを思い出し。
みんなと離れて、今までそばにいてくれたみんなを思い出す。
人生、いつだって終わってから気づくもんだと痛感した。
考える、予測する。
歴史に学ぶ。
事前にできることはたくさんあるんだが、やはり。
やはり人間とは、常々後悔する生き物である。
こういう危険な目に遭わせたくないから……。
やっぱり……。
「……」
コトが全て済むまでみんなと距離をとったほうが良い気がした。
面倒ごとから逃れているだけじゃ、いつまでたっても変わらん。
変わらんのだ。
一緒にどこまでも付き合ってくれると言っていたイグニール。
その言葉は大変ありがたくも感じたのだが、荷が重いだろう。
起動自体が複数の人が魔力を全力で出し合い起動する召喚魔法。
じゃあ今から召喚しますと言ってできるものではない。
だが、どこまで逃げても結局こうして、こうして付きまとってくる。
もし、やばい状況で俺だけ離脱してしまったら?
ダンジョンの深部にいて、俺だけこの状況になってしまったら?
一緒について来るであろうイグニールやジュノーは置いてけぼりだ。
「それは不味いな」
彼女ならば生き残れるとは思うが、不安だ。
俺は、彼女に死んでほしくないと、そばにいて欲しいと。
心の底から思っている……気がする。
イグニールがどうかは知らんがな。
「そのためには、一つ区切りをつけるべきだな、こりゃ」
やることは、勇者御一行にお帰りいただくこと。
その上で、もう二度と来れない様にその技術を消す。
魔王を呼ぶ召喚魔法陣も同じだ。
そこまでやってこその、俺にとっての平和が訪れる。
そんでもって。
全てが終わってから……終わってから……。
「俺は彼女に………………」
──貴様は全てが終わってから何を為す?
「……あ?」
なんか声が聞こえて来た。
ベッドから体を起こして左右を確認する。
うん、何もない。
窓の外には月が見えて、クロイツの城下町。
改めて知ったが、この城は丘の上にあるらしい。
どこの城も高いところが好きだな。
高さとは、権威の象徴でもあるのだろうか。
「で、なんだ今の声?」
……しーん。
聞こえなくなった。
だが、なんとなく予測はつくぞ。
混沌たる魔王の力の源さんだろ、これ。
ま、いいかで終わらせるほど俺は甘くない。
もっとも……。
色んな状況を置いてけぼりにしてここにいるがな!
「とりあえず、終わった後に何をするかだって?」
……。
「普通に生活するだけに決まってるだろ、アホか死ね」
──アホではなく、死なない。
答えが返って来たぞ!
この声の持ち主は、煽り耐性ゼロと見た。
「そもそも何かを為すために呼ばれたとか、そんなのもエゴだろ」
役目とやらは、全て勇者に丸投げしているが……。
別に勇者だって何かを為す必要なんてない。
それをすれば帰れる、とかハッピーな頭だからやってるだけ。
「被害者だぞ、こっちは」
勇者召喚なんぞ拉致以外の何物でもない。
そして高校生に使命持たせて、アホか。
「そんなクソ野郎どもの言い成りにも手先にもならんぞ」
正直言って、教団とかいう連中もいけ好かんしな。
──我の力を存分に使い、この世に破滅をもたらすがいい。
「いや、話し聞いてた? 嫌なんですけど」
──たかだか勇者ごときが、その力を使いこなせるとは思うことなかれ。
「俺に言うなよ……」
力もらってないから、そもそも。
カオスアビリティは、もともとプレイヤー強化要素。
名前がぽいってだけで、魔王の力とは無関係なのだ。
「あ、そうだ。今のうちに手持ちのお金で厳選しよっと」
アドラーの話が気になって、自分の新しい要素を忘れていた。
せっかく一つ解放可能なんだから、ゴッド等級で揃えなきゃね!
──おい、聞け。
「ってことで、さっそく解放100万ケテル」
白金貨一枚は重たいコストだが、良いの来てくれ。
こればっかりは運が作用するが、引きが良いときはいいんだよな、俺。
【カオスアビリティ】
・ゴッド/ジャンプ力+1000%
・Lv120より解放
・Lv140より解放
「早速ゴッド来たんず」
──おい。
「ジャンプ力+1000%ってなんだよ……こんなもんゲームにあったっけな……?」
一発で引き当ててしまったジャンプ力10倍アビリティ。
ゲーム内ではジャンプ力なんて最高150%くらいだったんだが……。
異世界改変がこのアビリティにもかかっていると見ていいだろう。
「えっと、今の俺のステータスだと……」
確か本気を出せば結構なジャンプができたはず。
ステータスによって強化された脚力から、力ずくで10メートルくらい垂直跳びできる。
あんまりこう言う部分を見せることはサモンモンスたちのおかげないが、実はそこそこ。
俺だって駆けっこだったらアンカー任されるレベルにはなっていたってこったな。
──聞け。
「どーすっかなー、変えて他の等級引いたらもったいないなー……」
──……。
「ま、しばらくこれで遊ぶか」
カオスアビリティなんて、三つ揃ってからが本番だ。
決めた、俺はしばらくハイジャンプおじさんになる。
──おい聞け。
インベントリでしまっちゃうおじさん。
ダンジョンで超しまっちゃうおじさん。
吸着の靴でくっつき虫おじさん。
潮流の靴であめんぼおじさん。
このゴッドジャンプでハイジャンプおじさん。
──話を聞けおじさん。
「着々とおっさん要素が増えて言ってるな……よし寝よっと」
──……クソ死ね。
「口悪っ……」
それから変な声が諦めた様に聞こえなくなった。
俺と同じ様に勇者にも囁いてるのかな?
影響されやすいタイプかもしれないから、なんだか面倒ごとになりそう。
はあ……あとでキングさんにでも、声の正体を聞いておこうか……。
感想 9,840
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
「お前さえいなければ」と言われたので死んだことにしてみたら、なぜか必死で捜索されています(旧:いらないと言ったのはあなたの方なのに)
水谷繭※7/30書籍発売予定です!6/29まで公開します。
完結まで一括投稿済。
なろうの方では削除する予定はありませんので、読み途中たけれど読みきれないという場合はそちらでお願いします☺️
精霊師の名門に生まれたにも関わらず、精霊を操ることが出来ずに冷遇されていたセラフィーナ。
セラフィーナは、生家から救い出して王宮に連れてきてくれた婚約者のエリオット王子に深く感謝していた。
エリオットに尽くすセラフィーナだが、関係は歪つなままで、セラよりも能力の高いアメリアが現れると完全に捨て置かれるようになる。
ある日、エリオットにお前がいるせいでアメリアと婚約できないと言われたセラは、二人のために自分は死んだことにして隣国へ逃げようと思いつく。
しかし、セラがいなくなればいいと言っていたはずのエリオットは、実際にセラが消えると血相を変えて探しに来て……。
◆表紙画像はGirly drop様からお借りしました
◆小説家になろうにも投稿しています
凱旋した英雄は聖女を選びました。~冬の補給路を守っていた私は静かに軍を去ります~
握夢(グーム)「君は後方にいただけだ」――
凱旋した英雄の婚約者からそう切り捨てられた私は、
静かに軍を辞職しました。
――冬の補給路管理。
――兵糧配分。
――医薬品輸送。
――損耗率管理。
全部、私の仕事だったのですが。
三週間後、
王国軍は補給崩壊。
「なぜ食糧が届かない!」
「なぜ兵が飢える!」
……逆にお聞きしますが、
今まで“なぜか全部上手く回っていた”理由を、
一度でも考えたことはありましたか?
これは、
誰にも評価されなかった兵站官(へいたんかん)が、
隣国の辺境伯にだけ価値を見抜かれ、
人生を取り戻す物語。
今更「戻ってきてくれ」と泣きつかれても、
私は隣国の最高機密ですので――!
真の皇帝は俺です ~面倒だから幼なじみに帝位を任せていたら、婚約者に捨てられました。正体を明かしたら全員後悔してももう遅い~
由香皇帝の仕事が面倒だったレインは、信頼する幼なじみアレクシスに表向きの皇帝を任せ、自身は陰から帝国を支えていた。
だがある日、婚約者エミリアは「権力も将来性もない」と彼を見限り婚約破棄を宣言する。
しかし彼女は知らなかった。
帝国を動かしていた真の支配者が誰なのかを。
これは全てを持ちながら隠していた男と、見るべきものを見失った者たちの後悔の物語。
悪役令嬢ですが、兄たちが過保護すぎて恋ができません
由香乙女ゲームの悪役令嬢・セレフィーナに転生した私。
破滅回避のため、目立たず静かに生きる――はずだった。
しかし現実は、三人の兄による全力溺愛&完全監視生活。
外出には護衛、交友関係は管理制、笑顔すら規制対象!?
さらに兄の親友である最強騎士・カインが護衛として加わり、
静かで誠実な優しさに、次第に心が揺れていく。
「恋をすると破滅する」
そう信じて避けてきた想いの先で待っていたのは、
断罪も修羅場もない、安心で騒がしい未来だった――。
処刑されるはずだった没落令嬢ですが、姫様の初夜を身代わりしたら子を授かりました
新 星緒没落伯爵令嬢のエルゼは大恩がある姫様を救うために、初夜の身代わりを引き受ける。
そして姫様や国を守るために誰にも行く先を告げずに国を去った。
三年後。初夜の晩に息子ヴァルターを授かっていたエルゼは、ひっそりと暮らしていた。ところが元婚約者に拉致られて、あわやというところに初夜の相手であるハインツ王子が現れる。
「ようやく見つけた。エルゼ、愛している」
「初夜の相手が君だと最初からわかっていたが?」
――身代わり初夜から始まる、純愛溺愛執着愛のお話!