装備製作系チートで異世界を自由に生きていきます

tera

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本編

769 愛し来る、2

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「いとしくる、れいりょう……うーむ」

 運命だ運命だと言いつつも、今もなお争い続ける賢者。
 律儀に、日本語で日記として情報を残しておく彼女だ。

 保険として残しておいたものが、愛頼みだなんて……。
 そんなまさか。
 賢者の世界の言葉つまり日本語で……愛し来る、冷涼。

「いとしくる、漢字だと、愛し来る」

 まさかとは言わんが……。
 愛し来るでアイシクルとか言わんだろうな。
 冷涼がわからんが、ミントか?
 スースーする感覚がミントっぽいからね。

「はあ、ただの親父ギャグじゃないといいけど」

「何がかの?」

「いや、少し愛し来る、冷涼って言葉で思ったことがあって」

「なにかの! 他に思うことがあるなら言うのじゃ!」

「なら……アイシクルミントって、知ってる?」

「アイシクル……ミント? 知っとるが、それがどうかしたのかの?」

「えっと、賢者の言葉で“いとしくる”って“アイシクル”とも読むんだよ」

「むむ?」

「冷涼がわからんかったけど。ミントってスースーするもんだろ?」

 決して冷たくはないが、爽快感はなんとなく伝わる。
 アイシクルと言うのならば、氷系のミント。
 冷涼と言っても、過言ではないはず。
 つーか「愛し来る」とか、逆にくさ過ぎて見逃しそうなヒントだ。

「なら、それさえあれば、パパは正気に戻るのかのう!?」

「わからないけど、そうじゃないのかなーって」

「いいや、わしもなんだかそんな気がしてきたのう!」

 当たってるかもしれないけど、そうじゃないかもしれない。
 いや、普通だったら馬鹿げてると思うはずなのだが……。

「あやつじゃったら、そういうこともするのじゃろう」

 変に納得するラブだった。

「どちらにせよ、藁にもすがる想いでの? 2本くらいあった方がいいじゃろ」

「まあね」

 頷く、確かにその通りだ。
 彼女の言う通り、準備だけはしておいた方がいいだろう。

「で、アイシクルミントはどこにあるんだ?」

「トイレじゃ」

「えっ」

「芳香剤としてずっとおいとるのう」

 マジか。
 パインのおっさんが言うには、伝説の代物に近いのだけど。
 ラブからしてみればただのトイレの芳香剤。

「この格差よ……」

「何言っとんじゃ? トイレは最奥の隣の部屋での」

 走りながら、ラブは続ける。

「パパの部屋のすぐ側。今は超絶危険地帯なのじゃ」

「だったら……さっさとみんなに合流しなきゃだな」

「うむ!」

 アイシクルミントを取りに行く前に、確実に憤怒とぶつかる。
 その時は、グレイトキングさんとジュニア、ロイ様の出番だ。

 精神に直接呼びかける方法として、幸せ攻撃も存在する。
 しかしながら、憤怒状態はあらゆる状態異常無視。
 全ては怒りに飲み込まれてるらしいから、この手は使えない。

「次はどっちに向かえば良いかの!」

「このまま真っ直ぐでみんながいる」

 マップを確認しながらナビゲートする。
 俺たちが走っている間、彼らは運良く合流できていたようだ。
 そして、憤怒を止める選択肢をとった俺と同じように。

 奥へ。
 最奥へと進んでいるようだった。

「大丈夫だ、ラブ。みんないるなら、絶対に負けない」

「まるで自分に言い聞かせとるようじゃのう?」

「まあな」

 言い聞かせておかないと、精神衛生上よろしくないだろう。
 自分の士気を上げておかないと、いざって時に動けない。
 憤怒の襲撃を受けた時、そうだったろう。
 知り得た情報は少ないが、それでもあらゆる仮説を立てて動け。

 俺には、今まで戦ってきた記憶が頭に入っているんだから。
 この世界に来てからもそうだ。
 そして、今までネトゲで幾度となくボス戦をして来た。
 難しい状況でもなんとかできてたはずだろう。



 その時、俺はラブと話していて気づかなかった。
 マップに表示されているイグニールたちのマークから、一体だけが移動していることに。

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