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本編
770 愛し来る、3
「すまん、待たせた」
ラブに背負われて程なく、みんなと合流できた。
駆け寄って来たイグニールが、俺の足を見てギョッとする。
「ト、トウジ……その足……」
「気を失ってる時に運悪くぶった斬れた」
なんだか、このままダンジョンと戦う際。
手足片っぽずつ毎回犠牲になるとか。
そんな展開が想像できるのだけど……。
マジで勘弁して欲しいと思った。
前回も今回も、幸いなことに保存状態は良い。
けど、遅れて消えたら治るかもわからん。
「心配いらん、凍らせて応急処置はしとる」
「で、でも……」
「本人も痛がっとらんから大丈夫じゃろ」
「まあね」
おそらく気にしたら相当痛みが走るだろう。
だが、仕方がない。
事が済むまで別のことを考えて気を紛らわす。
それが一番良いと思えた。
「痛いのは嫌だけど、腹を括れば割と平気だよ」
痛みって想像した状況とかが怖いのであって。
実際はこんなもんだ。
やらなきゃいけないことがある。
それを優先する場合は、割と忘れられるのだ。
「心配、かけないでよ」
「……ごめん」
少し泣きそうな目をするイグニール。
今までもこんな気持ちを抱かせていたのかもしれない。
そう考えると、すごく申し訳なく思えてくる。
「心配は後だ。少しまずい状況になった」
グレイトキング状態になったキングさんが、ぬっと体を前に出す。
どことなく、難しい顔をしていた。
「まずい状況?」
「そうね。気が動転して話しそびれちゃった……」
イグニールも目を拭って話し出す。
「トウジと合流する前、何者かに強襲された」
「えっ!? 大丈夫だったのか!?」
「ええ……でも……」
伏せ目がちにイグニールが告げる。
「ジュノーが連れて行かれちゃったの……」
「主よ、我がいながら申し訳ない」
すぐにマップを確認する。
一つだけ、グループメンバーのマークが別の場所にあった。
その場所とは、このダンジョンの最奥である。
「憤怒が来たのか?」
「主よ、だったら憤怒が来たと告げる」
どうやら集合して移動している途中。
何者かがジュノーをさらって姿を消したそうだ。
見た目は憤怒ではなくローブを纏っていたらしい。
「じゃあ誰……ビシャスか」
すぐに誰だか予想できた。
このダンジョンにいた勢力ってビシャスたちの仲間だろ。
そうじゃなければ、おかしい。
普通、何も知らない冒険者や魔物であれば、逃げ出す。
憤怒の攻撃で、ダンジョン全体が一部崩壊したようなもんだから。
「くそったれめ」
思わず悪態をつき、壁を殴る。
どれだけこっちを引っかき回せば気がすむんだ。
悪意のビシャス。
マジで何考えてるかわからないし、厄介だ。
「すまぬ、主よ、本当にすまない」
「良いよ」
申し訳なさそうな表情を作るキングさんに言う。
「連れて行かれたものは仕方ない」
今の状態のキングさんが出し抜かれるとは思わないが……。
憤怒の支配領域になっている今、勘付き辛いのだろう。
責めるようなことはしない。
完璧なんて世の中存在しないからな、俺だってそうだ。
「助ければ良い。どっちにしろ、俺は憤怒のところに行くんだからな」
「うむ。我に挽回の機会をもらえるか?」
「責任を感じなくて良いよキングさん。みんなで行こう」
キングさんにそんな顔は似合わない。
もっと傲慢で、猟奇的な笑顔。
バトルジャンキーの裏側に、俺たちを思う確かな心。
それが、キングさんの絶対的な安心感なんだ。
「そうね」
「そうじゃの!」
「うむ」
イグニール、ラブ、みんなが笑う姿に。
キングさんもニヤリといつもの笑顔を浮かべた。
そうだよ、それそれ。
ビシャスを相手する時は、俺もこの笑顔しようっと。
「主に、絶対なる勝利を今一度約束しよう」
「心強い」
まだ空いている枠の一つでグリフィーを召喚する。
足を失った俺と、みんなの移動手段だ。
戦いの場面になったらロイ様を召喚し直そうか。
「よし、とにかく行こう。途中で作戦を説明する」
「プルァ! 先陣は我が切る、道案内を!」
=====
「なんか俺たち、空気だな?」
「致し方ない。無駄に話に割って入っても、混乱するだけだろう」
「ギャオ」
「パイン、お前は死ぬ気で空気になっておくことが重要だ」
「……まあ、そんな感じはする。超危険な香りするし」
「私の側にいれば基本的には死なないはずだ。空気になれ、お前は空気だ」
「なんか傷つくんだけど……しゃーねーか」
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