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本編
781 墓ドロ
「よし、すぐ蘇生に取り掛かる。だから待機していてくれ」
「ん? 処置ってどう言うことなん──はあっ!?」
担ぎ込まれた死体を前に、ちょうど部屋に帰って来ていたマイヤーが驚く。
片足は膝上から下が存在せず、右腕は全体的に焼けただれボロボロだった。
「ト、トウジ!?」
すぐに後ろに控えていたイグニールの元に詰め寄る。
「これは一体、どう言うことなん!」
「……」
「黙ったままじゃわからんやろ! 何やってん、どうしてん!」
イグニールの両肩を掴み、取り乱すマイヤー。
だが、彼女は俯いて答えきれないままだった。
「落ち着け、ダンジョンで怪我を負っただけだ」
代わりに、ウィンストが状況を説明する。
「憤怒の戦闘での重傷だ。心配するな、治る」
「心配するなて、するに決まっとるやろ! なんやねん!」
「マイヤーお嬢様、落ち着いてください」
難しい顔をしたリクールの制止を振り切って、マイヤーは叫ぶ。
「あんたら、毎回こんな怪我しとるん!? なあて!?」
「……しないわよ」
ぽつり、とイグニールが呟いた。
噛み締めていた唇が血で滲んでいた。
「いつもだったら、平気な顔して笑ってるわよ!!」
「イ、イグ姉……」
声を荒げた姿に、思わず怯えるマイヤー。
その姿を見たイグニールは、ハッとして額を押さえていた。
「ごめんマイヤー……部屋で頭冷やしてくる……」
返事も聞かず、スタスタと自室に向かうイグニール。
みんな、どうして良いのかわからない表情でその様子を見ていた。
「マイヤー……トウジ、ちょっと疲れただけなんだし……」
「ジュノー……それなら、ええねんけど……」
「うむ、小さな賢者と呼ばれる私がいるから心配するな」
安心させるように振る舞うウィンスト。
みんなその言葉を信じるしかなかった。
「蘇生とか物騒なこと言っとったけど……ほんま頼むで?」
「任せてくれ、トウジは私が必ず救い出す」
ウィンストは、動かなくなった体を抱えて空き部屋へと向かう。
「と、とにかく飯にしよう! こういう時は飯だ、飯!」
重たい空気を払拭するべく、パインが前掛けをして厨房に立った。
「まったく……シケた面してんじゃねぇよ」
「うん……なんかお腹空いたし……」
「おう。待ってろ待ってろ。美味い匂いさせてたらひょっこり顔を出すさ」
快活そうに笑うパインを見て、少しだけ空気が和らいだ。
「そうですね、酒盛りして待ってましょう」
「いやリクール……うち今日は酒ええわ……」
「えっ! お嬢様が!?」
「なんやの、その驚いた顔……うちかて飲みとうない日もあんねん」
マイヤーはため息をつくと、この場をつかつかと後にした。
「ちょっとイグ姉の様子だけ見てくる。このままじゃ、心配やから」
「おう、すぐ飯つくっから呼んでこい呼んでこい」
はあ、なんと重っ苦しい雰囲気なのだろうか。
何もできないこの状況が、すごくもどかしい。
俺は、みんなの目の前にいるんだけどな……。
なんとか、おーいとアクションを取っても反応はない。
それもそのはず、死んでいるからだ。
俺の死体はウィンストが客間に連れてって、なんかごつい魔法陣の上に乗せてある。
片足は失われ、服もボロボロ、右手から腕と肩にかけて焼けただれて……。
改めて客観視すると、俺やべえ。
こら死ぬわ……うん……。
え?
今こうして語ってるのはどこのどいつかって?
死んだ俺だ。
詳しくいうと、オンラインゲームで死亡した後の、いわゆる墓ドロ状態。
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