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029 悲しい目
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そのまま外で話し込むのもアレなので、僕たち『百華繚乱(仮)』は、冒険者ギルドの個室を借りることにした。それにしても、この(仮)っていつまで付いてるんだろうね?
「それ、本当なの?」
「まさか、そんなギフトが実在するとは……」
「マジぱねぇーッス……」
「神よ……」
以上が僕の【勇者の友人】のギフトのスキルを聞いたイザベル、ラインハルト、マルギット、リリーの反応だ。ルイーゼの正体不明の謎の力が解明されて喜ぶかと思ったんだけど……皆、難しい顔を浮かべている。あるぇー? えー?
「この力はあなたのおかげだったのね! あなたってすごいのね!」
そんな中、ルイーゼだけは僕をキラキラした青い瞳で見つめていた。なんだか照れてしまう。
「すごい、どころかすご過ぎます。人に【勇者】のギフトを授けるなんて、それこそ神の御業です。他の冒険者や貴族、権力者の知るところとなれば……」
「あの…! 教会も…その、危ないです……」
「教会もですか……。クルトさん、今の話、他の誰かにしましたか?」
ラインハルトとリリーがひどく慌てたように心配そうに僕を見る。2人の様子を見る限り、事態は僕の想像以上にマズイらしい。2人の空気に飲まれ、僕も一気に緊張してしまう。喉がカラカラだ。
「だ、誰にも言って……あ! 『極致の魔剣』には喋っちゃった……マズイ…かな?」
「それは……【勇者】アンナのギフトもクルトさんのギフトによるものですよね?」
「そうだよ」
「それはまた……」
ラインハルトが顎に手を当て考え込む。こんな時になんだけど、まったく、絵になるイケメンぶりだな。
「相手がクルトさんを追放したのは周知の事実。相手は速やかに、そして内密にクルトさんを連れ戻したいはず……。クルトさん、『極致の魔剣』から何かアクションは?」
「戻ってこないかって言われたけど、断っておいたよ」
ラインハルトが驚きの表情を浮かべる。
「相手がよく承諾しましたね」
「いや…まぁ…うん……」
さすがに自らあんな惨状を作りだしたとは言えず。曖昧に頷く。
あの時の僕はどうかしていたね。きっと、自分でも気が付かなかった溜まり溜まったものが一気に噴き出したんだろう。自分でも信じたくないくらいだよ。たぶん自分の力に酔っていたんだと思う。
しかし、いくら力に溺れていたとはいえ、自分の中にあんな性質の悪い人を弄るような残虐性があるのかと思うと吐き気がする。これじゃあ奴らとなにも変わらないじゃないか……。
力が人を歪ませるなんてよく聞く話だけど、その歪みの種は元々本人が持っているのだと思う。力によって発芽し、大きく育つだけで、歪みの元になるものは本人の持つ性質による。つまり、あの醜悪な自分も力によって新たに生まれたものではなく、元々自分の持つ一面に過ぎない。
力というのは恐ろしい。見たくもない自分の本性を見せつけられるのだから。
その力を人に与えるギフト【勇者の友人】を持つ僕は、歪んだ鏡のような存在かもしれない。
今の【勇者の友人】は、“友人”から【勇者】を選定するギフトだ。僕が指定できる“友人”の枠は5枠。そして、その中から2名を【勇者】に指名できる。
「とにかく、『極致の魔剣』は気にしなくてもいいよ」
「そうですか…? クルトさんを手放すとは思えませんが……」
難しい顔で疑問に首を捻るラインハルトを「大丈夫、大丈夫」と誤魔化す。
「だとしても、相手は【勇者】の力を失ったことを隠したいはずです……『極致の魔剣』から積極的に情報が流れることはないと思いますが……注意が必要です」
ラインハルトの言葉にリリーが頷き、イザベル、マルギットも難しい表情を浮かべている。ルイーゼはよく分かっていないのか、きょとん顔だ。かわいい。
それにしても……。僕は単純に自分のギフトの強さに喜んでいたけど、強過ぎるギフトは、面倒事を呼ぶらしい。
たしかに、考えてみれば、他者を【勇者】にできるギフトなんて需要があり過ぎるだろう。ただの田舎の村娘だったアンナが貴族になる一歩手前までいったんだ。【勇者】になりたい人間なんていくらでも居るに決まってる。『極致の魔剣』のように、僕を脅してでも【勇者】の力を得ようとする輩も出てくるだろう。とても厄介な事態になるのは目に見えてる。
それに、ラインハルトやリリーが言ったように、貴族、教会などなど【勇者】の力を求める権力者の存在もある。いつ僕のギフトの能力がバレて、僕の奪い合いになるか分からない。僕の想像以上に状況は悪そうだ。
「どうしたらいいんだろう……」
「それは……」
僕の途方に暮れた声に、ラインハルトが言葉を詰まらせる。
「……ひとまずは隠し通すしかありません。そして、可能な限り早く冒険者の認定レベルを上げる必要があります」
「認定レベルを?」
何のために?
「この国、ツァハリアス王国は、無数のダンジョンを擁する冒険者大国です。冒険者の持ち帰るダンジョンの産物が、この国の力を支えています」
そのため、ツァハリアス王国では、冒険者に対して様々な優遇措置を取り入れている。高レベルの冒険者ともなれば、下手な貴族よりもよほど大事にしてもらえるらしい。
「高レベル冒険者になれば、失うには惜しいと思わせれば、国や冒険者ギルドが味方になってくれるかもしれません」
この国は冒険者の地位が高い。そして、それを統括する冒険者ギルドの発言権もまた高い。国や冒険者ギルドが後ろ盾になってくれるなら、粗雑な扱いは受けないだろう。
「ですが……」
ラインハルトの顔が曇る。そして、僕を悲しそうな目で見たのが妙に印象に残った。
「それ、本当なの?」
「まさか、そんなギフトが実在するとは……」
「マジぱねぇーッス……」
「神よ……」
以上が僕の【勇者の友人】のギフトのスキルを聞いたイザベル、ラインハルト、マルギット、リリーの反応だ。ルイーゼの正体不明の謎の力が解明されて喜ぶかと思ったんだけど……皆、難しい顔を浮かべている。あるぇー? えー?
「この力はあなたのおかげだったのね! あなたってすごいのね!」
そんな中、ルイーゼだけは僕をキラキラした青い瞳で見つめていた。なんだか照れてしまう。
「すごい、どころかすご過ぎます。人に【勇者】のギフトを授けるなんて、それこそ神の御業です。他の冒険者や貴族、権力者の知るところとなれば……」
「あの…! 教会も…その、危ないです……」
「教会もですか……。クルトさん、今の話、他の誰かにしましたか?」
ラインハルトとリリーがひどく慌てたように心配そうに僕を見る。2人の様子を見る限り、事態は僕の想像以上にマズイらしい。2人の空気に飲まれ、僕も一気に緊張してしまう。喉がカラカラだ。
「だ、誰にも言って……あ! 『極致の魔剣』には喋っちゃった……マズイ…かな?」
「それは……【勇者】アンナのギフトもクルトさんのギフトによるものですよね?」
「そうだよ」
「それはまた……」
ラインハルトが顎に手を当て考え込む。こんな時になんだけど、まったく、絵になるイケメンぶりだな。
「相手がクルトさんを追放したのは周知の事実。相手は速やかに、そして内密にクルトさんを連れ戻したいはず……。クルトさん、『極致の魔剣』から何かアクションは?」
「戻ってこないかって言われたけど、断っておいたよ」
ラインハルトが驚きの表情を浮かべる。
「相手がよく承諾しましたね」
「いや…まぁ…うん……」
さすがに自らあんな惨状を作りだしたとは言えず。曖昧に頷く。
あの時の僕はどうかしていたね。きっと、自分でも気が付かなかった溜まり溜まったものが一気に噴き出したんだろう。自分でも信じたくないくらいだよ。たぶん自分の力に酔っていたんだと思う。
しかし、いくら力に溺れていたとはいえ、自分の中にあんな性質の悪い人を弄るような残虐性があるのかと思うと吐き気がする。これじゃあ奴らとなにも変わらないじゃないか……。
力が人を歪ませるなんてよく聞く話だけど、その歪みの種は元々本人が持っているのだと思う。力によって発芽し、大きく育つだけで、歪みの元になるものは本人の持つ性質による。つまり、あの醜悪な自分も力によって新たに生まれたものではなく、元々自分の持つ一面に過ぎない。
力というのは恐ろしい。見たくもない自分の本性を見せつけられるのだから。
その力を人に与えるギフト【勇者の友人】を持つ僕は、歪んだ鏡のような存在かもしれない。
今の【勇者の友人】は、“友人”から【勇者】を選定するギフトだ。僕が指定できる“友人”の枠は5枠。そして、その中から2名を【勇者】に指名できる。
「とにかく、『極致の魔剣』は気にしなくてもいいよ」
「そうですか…? クルトさんを手放すとは思えませんが……」
難しい顔で疑問に首を捻るラインハルトを「大丈夫、大丈夫」と誤魔化す。
「だとしても、相手は【勇者】の力を失ったことを隠したいはずです……『極致の魔剣』から積極的に情報が流れることはないと思いますが……注意が必要です」
ラインハルトの言葉にリリーが頷き、イザベル、マルギットも難しい表情を浮かべている。ルイーゼはよく分かっていないのか、きょとん顔だ。かわいい。
それにしても……。僕は単純に自分のギフトの強さに喜んでいたけど、強過ぎるギフトは、面倒事を呼ぶらしい。
たしかに、考えてみれば、他者を【勇者】にできるギフトなんて需要があり過ぎるだろう。ただの田舎の村娘だったアンナが貴族になる一歩手前までいったんだ。【勇者】になりたい人間なんていくらでも居るに決まってる。『極致の魔剣』のように、僕を脅してでも【勇者】の力を得ようとする輩も出てくるだろう。とても厄介な事態になるのは目に見えてる。
それに、ラインハルトやリリーが言ったように、貴族、教会などなど【勇者】の力を求める権力者の存在もある。いつ僕のギフトの能力がバレて、僕の奪い合いになるか分からない。僕の想像以上に状況は悪そうだ。
「どうしたらいいんだろう……」
「それは……」
僕の途方に暮れた声に、ラインハルトが言葉を詰まらせる。
「……ひとまずは隠し通すしかありません。そして、可能な限り早く冒険者の認定レベルを上げる必要があります」
「認定レベルを?」
何のために?
「この国、ツァハリアス王国は、無数のダンジョンを擁する冒険者大国です。冒険者の持ち帰るダンジョンの産物が、この国の力を支えています」
そのため、ツァハリアス王国では、冒険者に対して様々な優遇措置を取り入れている。高レベルの冒険者ともなれば、下手な貴族よりもよほど大事にしてもらえるらしい。
「高レベル冒険者になれば、失うには惜しいと思わせれば、国や冒険者ギルドが味方になってくれるかもしれません」
この国は冒険者の地位が高い。そして、それを統括する冒険者ギルドの発言権もまた高い。国や冒険者ギルドが後ろ盾になってくれるなら、粗雑な扱いは受けないだろう。
「ですが……」
ラインハルトの顔が曇る。そして、僕を悲しそうな目で見たのが妙に印象に残った。
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