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第二章
065 空飛ぶマッチョ
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「もう一度放ちなさいな! フォイアボルト!」
イザベルの指先から再び焔がまるで雷のように迸り、先頭を走るオーガの1体を撃つ。オーガは、まるで雷に打たれたかのようにビクッと体を震わせると、焔に飲まれ、まるで松明のように燃え上がる。燃え上がったオーガは、痺れて動けないのか、そのまま倒れて動かなくなった。
動くこともままならず、体を焼かれていくのをただ黙って見続けるしかないなんて悪夢だろう。イザベルの精霊魔法は、僕の喰らいたくない魔法第一位である。でも、イザベルが言うには、これはまだ中級程度の精霊魔法に過ぎないらしい。上級精霊魔法とかどんな恐ろしい魔法なんだろうね。
「GAUGA!」
「UUU!」
仲間の惨状には目もくれず、残った4体のオーガたちは、イザベル目掛けて駆けてくる。イザベルの精霊魔法を脅威と判断したのだろう。襲う目標をイザベルに定めたようだ。
「はぁあああああああああああああ!」
そんなオークたちの行く手を阻むように、ルイーゼが凛とした声を張り上げて、正面からオーガたちへと突っこんでいく。黄金の髪を靡かせて、剣を片手に駆けて行く姿は、まさに戦乙女のようだ。
「GAUGAGA!」
「UUUWA!」
オーガたちにも動きがあった。二手に別れたのだ。2体はそのままイザベルへ。そして、残る2体はルイーゼへと向かうのが見えた。
本当は、ルイーゼがオーガを3体を引き付けて、その隙に残る1体をラインハルトが素早く仕留めることが理想だったけど、なかなか現実は思いどおりにならないね。
僕は地面に転がったままマジックバッグから取り出したへヴィークロスボウを両手で構える。大きく、ゴツく、そして重いクロスボウだ。飾りっ気の無い純粋な殺意を形にしたような、ひどく冷徹な印象を抱かせる。
僕はクロスボウの狙いをイザベルに近づくオーガへと定める。
オーガは、棍棒の先に尖った石を括り付けただけの原始的な武装をしていた。だが、侮ることはできない。その巨躯と身体能力は脅威だ。みるみるうちにこちらに近づき、オーガたちの姿が大きくなっていく。クロスボウの重さに加えて、オーガたちの素早さに翻弄されて、なかなか狙いが定まらない。しかし、僕は躊躇わずに引き金を引く。
ボウンッと弦が重く空気を引き裂き、クロスボウに装填されたボルトが射出される。ボルトはオーガからかなり左の虚空を穿った。ハズレだ。
僕は構えていたクロスボウを投げ捨てると、マジックバッグからもう1丁のクロスボウを取り出した。これも件のレッドパーティからの戦利品のへヴィークロスボウだ。へヴィークロスボウは全部で4本押収した。マルギットが持っているのが1丁、僕のマジックバッグに3丁収められている。
腰のマジックバッグからへヴィークロスボウ取り出し、今度は森に向けて構え、静止する。できれば援護射撃をしたいところだけど、僕の腕では命中しそうにない。それに、敵のオーガに増援があるかもしれない。僕はその警戒だ。
この頃になると、ルイーゼとオーガたちが激突する。僕は森の様子を警戒しながらルイーゼを祈るように見守る。ここがダンジョンならモンスターの強さはある程度分かるけど、野生の魔物相手ではそうもいかない。無いとは思うけど、ルイーゼが倒されるようなら、すぐさま援護しなければいけない。
僕の倍はありそうなほど大柄で、縦にも横にも分厚い屈強なオーガと、オーガの腰くらいまでしかない小さな女の子が真正面から全力でぶつかる。
緊張の一瞬―――。
「やぁあああああああああああ!」
物理は仕事をしているのか問い詰めたくなるほど非常識な光景が目の前で繰り広げられた。なんと、衝突を勝利したのはルイーゼだった。
「GOUA!?」
「HUNGA!?」
ルイーゼにバックラーで殴られたのか、半裸のムキムキマッチョが放物線を描いて空を飛ぶ。
見ていたのに信じられない光景だ。だって、普通はルイーゼが弾き飛ばされると思う。本当に物理は仕事をしているのか問い質したいほど奇怪な光景だった。
そして、僕が空飛ぶマッチョに目を奪われている間にルイーゼがなにかしたのか、ルイーゼと対峙するオーガが左肩から血をドプドプと流していた。傷は深そうだ。赤かったオーガの体が、更に赤黒く染まっていく。
ルイーゼの様子を見るに、オーガたちを圧倒しているように見えた。どうやら対応可能なレベルの強さらしい。
ルイーゼはよくやってくれた。敵のモンスターや魔物と一番最初に接触するのは、パーティの盾であるルイーゼだ。ルイーゼには、相手がどの程度の強さなのか測る試金石のような役割もある。彼女は見事、オーガたちが対応可能なレベルであることを身をもって示してくれた。
強さも分からない、情報もない相手に斬り込んでいくルイーゼの胆力、度胸はすさまじいの一言では足りないほどだ。今回の遭遇戦のMVPを決めるとしたら、間違いなく彼女になるだろう。
ルイーゼが打ち勝てる相手だと示してくれたおかげで心にゆとりが生まれた。これを慢心としないように気を引き締めないと。
僕は森の監視を続行しながら、この戦いの行く末を見守るのだった。
イザベルの指先から再び焔がまるで雷のように迸り、先頭を走るオーガの1体を撃つ。オーガは、まるで雷に打たれたかのようにビクッと体を震わせると、焔に飲まれ、まるで松明のように燃え上がる。燃え上がったオーガは、痺れて動けないのか、そのまま倒れて動かなくなった。
動くこともままならず、体を焼かれていくのをただ黙って見続けるしかないなんて悪夢だろう。イザベルの精霊魔法は、僕の喰らいたくない魔法第一位である。でも、イザベルが言うには、これはまだ中級程度の精霊魔法に過ぎないらしい。上級精霊魔法とかどんな恐ろしい魔法なんだろうね。
「GAUGA!」
「UUU!」
仲間の惨状には目もくれず、残った4体のオーガたちは、イザベル目掛けて駆けてくる。イザベルの精霊魔法を脅威と判断したのだろう。襲う目標をイザベルに定めたようだ。
「はぁあああああああああああああ!」
そんなオークたちの行く手を阻むように、ルイーゼが凛とした声を張り上げて、正面からオーガたちへと突っこんでいく。黄金の髪を靡かせて、剣を片手に駆けて行く姿は、まさに戦乙女のようだ。
「GAUGAGA!」
「UUUWA!」
オーガたちにも動きがあった。二手に別れたのだ。2体はそのままイザベルへ。そして、残る2体はルイーゼへと向かうのが見えた。
本当は、ルイーゼがオーガを3体を引き付けて、その隙に残る1体をラインハルトが素早く仕留めることが理想だったけど、なかなか現実は思いどおりにならないね。
僕は地面に転がったままマジックバッグから取り出したへヴィークロスボウを両手で構える。大きく、ゴツく、そして重いクロスボウだ。飾りっ気の無い純粋な殺意を形にしたような、ひどく冷徹な印象を抱かせる。
僕はクロスボウの狙いをイザベルに近づくオーガへと定める。
オーガは、棍棒の先に尖った石を括り付けただけの原始的な武装をしていた。だが、侮ることはできない。その巨躯と身体能力は脅威だ。みるみるうちにこちらに近づき、オーガたちの姿が大きくなっていく。クロスボウの重さに加えて、オーガたちの素早さに翻弄されて、なかなか狙いが定まらない。しかし、僕は躊躇わずに引き金を引く。
ボウンッと弦が重く空気を引き裂き、クロスボウに装填されたボルトが射出される。ボルトはオーガからかなり左の虚空を穿った。ハズレだ。
僕は構えていたクロスボウを投げ捨てると、マジックバッグからもう1丁のクロスボウを取り出した。これも件のレッドパーティからの戦利品のへヴィークロスボウだ。へヴィークロスボウは全部で4本押収した。マルギットが持っているのが1丁、僕のマジックバッグに3丁収められている。
腰のマジックバッグからへヴィークロスボウ取り出し、今度は森に向けて構え、静止する。できれば援護射撃をしたいところだけど、僕の腕では命中しそうにない。それに、敵のオーガに増援があるかもしれない。僕はその警戒だ。
この頃になると、ルイーゼとオーガたちが激突する。僕は森の様子を警戒しながらルイーゼを祈るように見守る。ここがダンジョンならモンスターの強さはある程度分かるけど、野生の魔物相手ではそうもいかない。無いとは思うけど、ルイーゼが倒されるようなら、すぐさま援護しなければいけない。
僕の倍はありそうなほど大柄で、縦にも横にも分厚い屈強なオーガと、オーガの腰くらいまでしかない小さな女の子が真正面から全力でぶつかる。
緊張の一瞬―――。
「やぁあああああああああああ!」
物理は仕事をしているのか問い詰めたくなるほど非常識な光景が目の前で繰り広げられた。なんと、衝突を勝利したのはルイーゼだった。
「GOUA!?」
「HUNGA!?」
ルイーゼにバックラーで殴られたのか、半裸のムキムキマッチョが放物線を描いて空を飛ぶ。
見ていたのに信じられない光景だ。だって、普通はルイーゼが弾き飛ばされると思う。本当に物理は仕事をしているのか問い質したいほど奇怪な光景だった。
そして、僕が空飛ぶマッチョに目を奪われている間にルイーゼがなにかしたのか、ルイーゼと対峙するオーガが左肩から血をドプドプと流していた。傷は深そうだ。赤かったオーガの体が、更に赤黒く染まっていく。
ルイーゼの様子を見るに、オーガたちを圧倒しているように見えた。どうやら対応可能なレベルの強さらしい。
ルイーゼはよくやってくれた。敵のモンスターや魔物と一番最初に接触するのは、パーティの盾であるルイーゼだ。ルイーゼには、相手がどの程度の強さなのか測る試金石のような役割もある。彼女は見事、オーガたちが対応可能なレベルであることを身をもって示してくれた。
強さも分からない、情報もない相手に斬り込んでいくルイーゼの胆力、度胸はすさまじいの一言では足りないほどだ。今回の遭遇戦のMVPを決めるとしたら、間違いなく彼女になるだろう。
ルイーゼが打ち勝てる相手だと示してくれたおかげで心にゆとりが生まれた。これを慢心としないように気を引き締めないと。
僕は森の監視を続行しながら、この戦いの行く末を見守るのだった。
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