【勇者の友人】~【勇者】のギフトの本体が、僕だった件について~戻って来いって言われたって、今更君たちを“友人”だとは思えないよ。

くーねるでぶる(戒め)

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第二章

066 ほっぺ

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 残すオーガはあと4体。ルイーゼが2体のオーガの足止めに成功しており、圧倒している。既に3体のオーガを戦闘不能にしており、幸先の良いスタートだ。だけど、2体のオーガがルイーゼを突破してしまった。パーティの盾を突破してしまった。

 なおもイザベルを目指して進むオーガたちを阻む人影がある。金髪長身のイケメン、ラインハルトだ。ルイーゼと同じく銀色に輝くアイアンアーマーを身に付けている。もう完全に見た目はどこかの王子様だ。ラインハルトが背中に革のベルトで吊ってある両刃の真っ黒な大剣に右手を添え、オーガたちへと走り寄る。

 オーガたちはラインハルトよりも大柄だ。体格の差は歴然。しかも2対1だ。一見絶望的に見える。だけど、僕にできることはない。オーガとラインハルトの距離が近すぎる。ここまで近いと誤射が怖い。イザベルも誤射を恐れて手出ししないのだろう。もしくは、精霊への魔力補充のため魔法が使えないのかもしれない。

 僕にできるのは、相変わらずただ祈ることだけだ。無力な自分にイライラする。

 僕の無力感などよそに、はたして運命の時は訪れる。

 オーガとの距離が0に近づく瞬間、ラインハルトが急加速して、跳躍と呼べるほど大きく踏み込んだのが分かった。僕は体格とリーチの違いから、先手はオーガが取るだろうと思っていた。でも、ラインハルトは大きく踏み込むことでリーチの差を潰し、一気に自分の距離へと持ち込んだのだ。

 ラインハルトの走りは、十分速い速度だったけど、たぶん、今までわざと少し手を抜いて走っていたのだろう。そして、オーガたちの攻撃範囲に届く直前に全力で大きく踏み込んで、一気に距離を潰してしまった。全てはオーガたちの目測を狂わせて自分が先手を取るための策だ。

「GAGA!?」
「GUABA!?」

 オーガたちから驚きの声が聞こえた気がした。オーガたちは、武器を振り上げる途中のような中途半端な格好だ。隙だらけの格好。チャンスである。そして、ラインハルトはこのチャンスを逃すようなヤツじゃない!

「はぁああづぁあああああ!」

 ラインハルトの背中の大剣がゴウッと太い風切り音を二回響かせ、大きくV字に閃く。ファストブレード。素早い振り下ろしからの斬り上げによる二連撃。本来なら取り回しのしやすい片手剣の技である。それを大剣で……僕はもう慣れたけど、本当に超重量物である大剣を扱っているのかと疑いたくなるほど非常識な光景だね。

 ラインハルトが軽々と扱っていた大剣だけど、その攻撃力は強力無比だ。

 ラインハルトの振り下ろされた漆黒の大剣は、防御に回されたオーガの石の斧を破壊。そのままオーガの体を斜めに両断。返す刀でもう1体のオーガの上半身を斬り飛ばしていた。斜めに両断されたオーガの体がズレるように滑り落ち、同じく斜めに斬り飛ばされたオーガの上半身は、赤黒い血と臓物を撒き散らしながら草むらに鈍い水音を立てて落ちた。共に上半身を失ったオーガの下半身が2体、ゆっくりと倒れ粘着質な水音を辺りに響かせる。

 流石はラインハルトだ。一太刀でオーガを2体を片付けてしまうなんて、すさまじいの一言に尽きる。男の僕でも惚れちゃいそうなくらいカッコイイ。

 ラインハルトは大剣をブンッと振り下ろすと、地面に真っ赤な弧が描かれた。大剣に付着した血を落としたのだ。何気ない仕草だけど、そんな姿もカッコイイ。

 カッコイイラインハルトから目を離してルイーゼの方を見ると、いつの間にかこちらも片付いていたようだ。ルイーゼの傍に2体の首無しオーガが転がっているのが見えた。森からオーガの来援はなさそうだし、これで戦闘終了だね。

「むぅー……」

 いつの間にか隣に立っていたリリーが、不満そうにほっぺたを膨らませていた。僕の護衛のため、戦闘に参加できなかったことが不満なのだろう。この小さくて愛らしい少女は、その見た目とは裏腹に戦闘狂の素質があるみたいだ。

「ぷー……」

 リリーには悪いけど、僕は近くにリリーが居るだけで心が軽くなる。

 周りは見晴らしのいい草原。敵襲があるなら森からだけど、そちらにはパーティの前衛が展開している。しばらく注視してみたけど、敵の増援もないみたいだ。僕はようやく安堵の息を吐いた。もう警戒を解いてもいいだろう。

 僕はよっこいしょと立ち上がると、リリーのほっぺたを指でつつく。リリーのほっぺたがぷしゅーっと元に戻った。リリーのほっぺたは、もちもちと柔らかくて温かくて、いつまでも触っていたくなるほっぺただった。ついノリで触っちゃったけど、僕なんかがリリーほっぺたを触っちゃってもよかったのだろうか? もしかして、かなり無礼なのでは?

 急に不安になる僕に、しかし、リリーはふにゃっと柔らかい笑顔を見せた。そして、不安から引っ込んだ僕の手を手に取ると、自分のほっぺたへと誘う。すべすべでもちもちとした柔らかさが手のひらに広がった。え? なにこれ? どういうこと?

 混乱する僕を尻目に、気持ち良さそうに僕の手に頬ずりをするリリー。ヤバイ。僕の中でなにかが暴れ出しそうに……。

「あら? 抜け駆けとはアンフェアでなくて?」

 突然聞こえたイザベルの声に、なにも悪いことはしていないのにドキッとしてしまう。

「いや、これは……」
「片手、空いてる……」

 言い訳じみた言葉を上げる僕に反して、リリーは冷静にボソッと呟く。イザベルに見られても頬ずりを止めるつもりはないようだ。

「なるほど……」

 リリーの言葉になぜか納得の声を零したイザベルが、残った僕の手を手に取った。

「頬ずりが好みなのかしら? それとも……こっちの方が?」

 僕の手が左手が導かれたのはイザベルの大きな胸の谷間で……!

「ちょいちょいちょーい! そこ! なにやってるのよ!?」

 もう少しでイザベルに触れそうなところで、ルイーゼの声が響き渡った。
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