美獣と眠る

光月海愛(こうつきみあ)

文字の大きさ
105 / 172

タコとゲス

しおりを挟む

 
 「……課長、ちょっと、それはこんな場で言う事じゃないですよー、それよりオツマミ追加しますかぁ?」

 側にいたオペレーターの先輩が、やんわりと話を流してくれようとしたのに、

「こんな酒の場以外でする話でもなかろう!。これは上司命令だ! 後藤  お前、月山にヤられたのか? それともバージンなのか?答えろ!」

 ヨシや加納を含め、オッサンども( 男全般 ) は、何故か処女というものに執着したがる。


「その命令には、応えられません」

 チビチビではあるけれど、飲んだ酒の力も借りて、セクハラ発言に負けじと拒否をする。


「なんだ?  たかだかオペレーターの分際で俺になんて口をきいてるんだよ? 社会人のくせに酒の場の盛り上げかたも知らんのか? お前なんか、即刻パートに格下げだっ!」

 たかだかと言うなら、あなたもでしょ?!
 営業だか庶務だか知らないけど、課長にそんな人事の権利なんてないはず。
 真っ赤になって怒る課長の顔は、まるで茹でタコみたい。

「あんまり横暴するなら、こちらも考えます。訴えますから」

 こんな二人のやり取りを、加納がニヤニヤしながら見つめていることに気がついてしまう。


 「課長、お疲れさまです。もぉ後藤さんをからかうのは止めてあげましょうよー」

 酒瓶をもって、主役の癖に、こんな端の席に寄ってきた。

 茹でタコとゲスの間に挟まれて、酒はますます不味くなる。


「 加納発、″ 後藤は月山にバージンを食われた″ 説を俺は真に受けたんだぞ?  あの ″ 歩く経常利益 ″ と呼ばれていた月山がそんな羨ましいことしてたのかと腹立たしくて!  」

「アハハ、そうだったんですか?  俺も真実は知らないんですよー」

 さっきから感じていたんだけど、この課長は月山さんのことが目の上のタンコブだったんだろう。

 月山さんが役職降りての転勤が決まった途端、足を引っ張るような話ばかりをして。
 加納と良く似てるわ。


「あんまり後藤をからかうと、月山さんのパンチが飛んできますよ、ほら、今だって、上層部に囲まれながらもこっちを睨み付けてるでしょ?」

 加納が、上座にいる主役達の方を指差すと、戸崎さんの横で専務達に飲まされながらも、私達の方に視線をやる月山さんの姿が見えた。

「なんだぁ? あの野郎? 自分は戸崎を横に置いといて、俺が後藤に手を出さないか監視してんのかぁ?」

 タコ課長は、酒の力を借りて言いたい放題。

 違う。月山さんは、加納のことを見張ってるんだよ。
 加納の本性を知ってしまったから。

「ちょっと男前だからって、女子社員は皆自分のモノって勘違いしてるのかもしれないですねぇ! 月山元部長はー?」

 それを、加納のアホが更に煽る。

「なにぃ!? 勘違いも甚だしい男だな、月山は!そんなら 、見せつけてやるか! 女子社員は皆のモノだって!」

 加納に乗せられて、勘違いはお前だろ? 発言をした課長は、


「後藤のファーストキスは頂きだ!」

「はっ!?!」

 皆がいるのにもかかわらず、汚い唇を押し付けてきた。
















しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~

恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」 そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。 私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。 葵は私のことを本当はどう思ってるの? 私は葵のことをどう思ってるの? 意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。 こうなったら確かめなくちゃ! 葵の気持ちも、自分の気持ちも! だけど甘い誘惑が多すぎて―― ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

6年分の遠回り~いまなら好きって言えるかも~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
私の身体を揺らす彼を、下から見ていた。 まさかあの彼と、こんな関係になるなんて思いもしない。 今日は同期飲み会だった。 後輩のミスで行けたのは本当に最後。 飲み足りないという私に彼は付き合ってくれた。 彼とは入社当時、部署は違ったが同じ仕事に携わっていた。 きっとあの頃のわたしは、彼が好きだったんだと思う。 けれど仕事で負けたくないなんて私のちっぽけなプライドのせいで、その一線は越えられなかった。 でも、あれから変わった私なら……。 ****** 2021/05/29 公開 ****** 表紙 いもこは妹pixivID:11163077

思い出さなければ良かったのに

田沢みん
恋愛
「お前の29歳の誕生日には絶対に帰って来るから」そう言い残して3年後、彼は私の誕生日に帰って来た。 大事なことを忘れたまま。 *本編完結済。不定期で番外編を更新中です。

こじらせ女子の恋愛事情

あさの紅茶
恋愛
過去の恋愛の失敗を未だに引きずるこじらせアラサー女子の私、仁科真知(26) そんな私のことをずっと好きだったと言う同期の宗田優くん(26) いやいや、宗田くんには私なんかより、若くて可愛い可憐ちゃん(女子力高め)の方がお似合いだよ。 なんて自らまたこじらせる残念な私。 「俺はずっと好きだけど?」 「仁科の返事を待ってるんだよね」 宗田くんのまっすぐな瞳に耐えきれなくて逃げ出してしまった。 これ以上こじらせたくないから、神様どうか私に勇気をください。 ******************* この作品は、他のサイトにも掲載しています。

処理中です...