美獣と眠る

光月海愛(こうつきみあ)

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バッドタイミング

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 「疫病神……?」

 うなだれて、自分を責めるような顔……。
 こんなヨシ……見たことない。
 取り敢えず、ヨシをそばの長椅子へと腰掛けさせる。
 ヨシの手にこびりついた赤い血が、惨劇を物語っていて、思わずギュッと、その手を握りしめた。

 ヨシは手術中のランプをボンヤリと見つめ、か細い声で話始める。

「前も話したけど。俺が出来ちまったことで、母さんは夢中になってたアイツと引き離されたんだ、妊娠してなきゃ別れてなかったかもしれない」

「時期が悪かったんだよ……」

 ヨシの心の奥底を、ちゃんと聞くのは初めてのような気がした。

「おまけに、妊娠と出産で、生まれつき弱かった心臓が一気に悪くなって、母さんの寿命を縮めちまったし」

 お祖父さんが葬儀の時に悲しそうに話してた…。

「アイツも、俺と関わらなきゃ仕事うまくいったままだったのにさ…」

″ アイツ  ″……。

  ヨシはいつも月山さんをそう呼ぶ。

「……親子だもん、そりゃ関わるよ」

 いつになったら、″ お父さん ″ と呼ぶことが出来るんだろう?

「お互いに親子なんて意識はない。分かり合いたいなんて、思ってもないのに、…何で、あいつ、飛び込んできたかな?」

 騒ぎに気付いた月山さんは、誰よりも早くエスカレーターの下に走り寄ってきた。


″ ヨシ!″

 って、確かに名前を呼んでた。


「月山さんは口に出さないだけで、いつもヨシのこと思ってるよ」


″ 後藤   ……ヨシノリを頼んでいいか? ″

 恋愛よりも、仕事よりも、何よりも、ヨシのこと  一番に考えてる。
 本人がそれに気付いていないだけ。

「だから、自分のこと、疫病神だなんて言わないで……」

 ヨシの手に、真珠のような滴が落ちた。潤んだ瞳が顔を上げたのと同時に、手術中のランプが消えたーー。


  ヨシも、月山さんもちゃんとお互いに思い合っている。それが、せっかく分かったのだから、
 どうか、月山さん、ヨシの涙を止めてほしい。

 まだ、あの人のところに行かないで、ここにいて欲しいーーー


「ご家族の方ですか?」

 手術室から出てきた医師が私たちの方を見る。

「……はい」

 ヨシが、すくっと立ち上がり医師からの言葉を待った。私も息を飲む。

 私たちは、日本の医療を過信していたのかもしれない。

「申し訳ありません、手を尽くしましたが…………」

 二人の前に突きつけられたのは、非情な現実だったーーー。

















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