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賭け

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 「プロポーズ……話、飛躍しましたね」

 嬉しい、というより驚きだ。

 何でそうなる? どういう心境の変化?

 遠距離恋愛もしてないのに、仕事だってどうなるのか分からないのに。

 ……でも、やっぱり嬉しい。

「まぁ、立ってないで座れ」

 ずっと、ベッドそばで突っ立っていた私の手を引っ張る月山さん。
 私が椅子に座ってもなお、その手を離しはしなかった。

「俺、すげー現実的なんだよ。夢は見ないタイプで、宝くじとかパチンコもしたことのないマジで面白味のないツマンナイ男なんだ」

 非ギャンブルは、初耳だけど。( むしろそっちの方がいい)
 とても現実的なのは知ってます。
 貴方が、私に現実を見ろって教えてくれたんですよ?

「そんな俺だけど、今日は賭けてみたんだよ」

「……賭ける?  何をですか?  長崎行く前にこっちで年末ジャンボでも買ったんですか?」

「そうそう、地方よりもやっぱり人工密集地の東京のほうが当たり確率高いらしくて…………じゃない!」

 「じゃ、競輪?」

「じゃないっ」

「……馬?」

「馬じゃねー!」

 笑ったあとの、私を見つめる月山さんの目が真真剣になった。

「信じられないかもしれないけれど。落ちてくるヨシと後藤の前に飛び出して、もし、どっちとも守れたなら、後藤にプロポーズしてみようって、……そのつもりで受け止めたんだ。今、作った話と思わないで聞いて欲しい」


 とても39歳の男性が願掛けした内容とは思えなかったんだけど。


「プロポーズと言っても直ぐにじゃない、後藤の仕事もあるし、俺もずっと九州に留まってるつもりもなくて……必ずまた、這い上がってくるから、東京に戻って来れたときは、真剣に考えて欲しい」

 私の手を握る月山さんの手が、とても温かかった……。


「急がないから、頭の片隅にでも置いててくれ」

 現実のことなのに、夢みたいに幸せな気持ちになった。







 


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