美獣と眠る

光月海愛(こうつきみあ)

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聖母

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 ダメ元で告白したら、プロボーズを貰い、感極まっていたところにヨシがノックもせずに現れる。

「お取り込み中だったか?」

 私の顔を見て、ヨシが何か察知したようだ。
 その手には、飲み物や食べ物、ティッシ等を抱えていた。

「……急な入院で迷惑かけたな」

  月山さんがヨシに謝る。

 いやいや。謝る必要はないですよ。
 むしろ感謝される立場の人ですよ。

「あぁ、ほんとだ。強靭な身体のつもりでいても、身1つで飛び出してきたら大怪我もする」

  ヨシが顔をしかめて乱暴に荷物をテーブルに置く。

「……そうだな、何も受け止めなくても、普通に落ちていても怪我はしなかったかもしれないな」

「そ、そんなことないです、月山さんのおかげで私たち無傷で済んだんですよ!」

「年寄りが無理したら、こうやって後で心配されるんだよ」

 それなのに、ヨシったらモロ悪態だし。
 どんだけ素直じゃないの?

 さっきまであんなに狼狽えていたくせに。


「でも、その無理のお陰でこいつは無傷だ……」

「え」

 素直じゃないくせに、時々こうくる。


「晶に傷がつかなくて良かった、もう俺じゃ傷も癒せないから」

 お別れした今でも、さらっと私をドキッとさせる。


「ありがとな、オッサン」


「……オッ……」


 月山さんにも、もっと、その優しさをあげて欲しいよ。


「じゃあ、俺は一先ず、帰って入院グッズ買い物してくるわ。長崎行き、延長になったしさ」

「え」

 ヨシは、血だらけの上着を掴んで見せて、

「これじゃ、マジで吸血鬼かゾンビ映画の衣装だから着替えてくる。  晶は、ここでゆっくりしていけよ」

 病室から一人で出ていこうとする。

「ゆっくりって、病室なんだけど」

「それとな」

  ヨシは、不意に立ち止まり、

「″ 急がないから ″ とか呑気なこと言ってる暇ねーと思う。早くしないと、新婚生活が、介護生活になっちまうから」

「はっ?!」

  最後まで憎まれ口を叩いていた。

「ヨシノリ……っ」

 月山さんの呼ぶ声には振り向かなかったけれど、見えたその横顔は、微かに笑っていた。


「我が息子ながら……男前過ぎる」


 月山さんが言うように、その時のヨシの顔は神々しいほど中性的で美しかった。

 ほんとうに聖母みたいな微笑みだった。











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