美獣と眠る

光月海愛(こうつきみあ)

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メジャー

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 【Virtue  先行発売シングル  ″ ヴィーナス″ オリコンチャート第一位】

【Virtue  5hアルバム   ″monster″   オリコンチャート第一位】

【Virtue 再開記念 in 武道館  ライヴDVD&Blu-ray  オリコンチャート第一位】


 ややマニアックな音楽性で、国民的アーティストとは程遠かったヴィジュアル系バンドが、音楽業界に華々しい記録を打ち出したのは、ヨシのお母さんの三回忌の年だった。



「横浜アリーナ、セーター席三列目!! これって凄い奇跡じゃない!  晶はどうせ最前列でしょ??」

寧々が電話で、取れたチケットの報告をしてくれる。


「まさか。ライヴハウスじゃないんだよ? 寧々と同じく三列目!」

「そーなの?!  元カノだから特別待遇なんだと思ってた!」

「元カノでもないし、三列目ってだけでも特別だよ」

 ーーVirtue  プロデビュー5周年記念ライヴ。
 私はそれを最後にバンギャを卒業しようと思う。




  横浜アリーナ、開場前。

「あ、樋口君、久しぶりね!」
 
 グッズの列に並ぶ寧々と、彼氏の樋口くんと遭遇する。

「晶、久し振りだね」

「うん、仕事が忙しくてライヴもなかなか行けなくなって」 

「やっぱり出世すると違うねー、昔は何よりもライヴ優先してたのにさー」

 寧々がチクリと言うのも気にならない。

「出世はしてないよ、本社のデザイン企画部に所属してるだけ」

 仕事が楽しくて、ライヴへの依存が減った、というのもある。
 それに、Virtueのライヴも人気上昇とともに、大規模なものが多くなったから。

「出世も大事だけど、ちゃんと主婦業こなしてんの?  女って、家事もしなくちゃいけないからさぁ」

 女が家事をする、とは決まってはいないけど。
 樋口君が心配してくれるように、はっきり言って、あまりできていない。

 だけど、

「あ、晶の旦那さん発見! あれ、そうだよね? トイレから出てきた人!」

「こんばんはー」

「もぉ!旦那さんも来てるなら来てるって言いなさいよー」

 この、キレイ好きでマメな月山さんに助けられて、結婚生活と仕事を、なんとかうまく両立させることが出来ていた。


「晶。俺、先に会場の方に並んでるから、グッズは二人で持てるだけにしとけよ」


「はぁい」

 広い真っ直ぐな背中、サラサラの黒髪。
 端整な顔に、長い脚。

 一人で移動する月山さんに、寧々と樋口くんが見惚れているのが分かった。

「ヨシの父親だけあるなぁ、さすが美中年」

 月山さんが転勤してから二年。

 加納の汚職による退職。
 東京支社の業績悪化。
 それに反した月山さん率いる福岡支店の経常利益アップなどがあり、大電広告代理店に無くてはならない存在となった彼は、私と約束した通り、もとの場所まで這い上がってきた。


「まさか、晶がいち早くウェンディグドレス着るなんてね」


 ーー私と月山さんは、今年の春に挙式を上げた。












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