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第八章・ユリアの決意。6

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 悲しさよりも嬉しの方だ。陛下は、なかなか本心を見せようとしない。
 変な意地を張りツンデレで。意地悪なことばかり言う。でも気持ちの優しい人だ。
 純粋で寂しがり屋で泣き虫なところもある……放っておけない人。だから余計に戸惑ってしまった。帰るかどうか……。
 元の世界には帰りたい。でも彼を見捨てられない。本当の私の本音は、どちらなの?
 悩んでいると時の神という黒猫は、ため息を吐くと私の方を見てきた。
『仕方がない。君に猶予をあげよう。明日の夜、この時間にもう一度おいで。その時までにどちらを選択するか聞かせてほしい。元の世界に戻るか、このまま転生した姿で居るか』
 黒猫は、そう言うと噴水の中に飛び込んでしまった。あっ⁉
 私は慌てて噴水のところに駆け寄ると光りも消えて何もない噴水になっていた。
 本当に……時の神だったんだ⁉
 唖然とするが、ようやく自分が何故異世界に転生してしまったのか理由を聞くことが出来た。まさか誤って魂が入れ替わっていたなんて。
 驚くが納得する部分が多かった。ようやく家に帰れる。だけど……。
 私はチラッと陛下が居る方向に振り向いた。まだ悲しそうに涙を流していた。
 どうやって話そう……。気まずい雰囲気にどう接したらいいか悩んだ。
「隠していて……ごめんなさい。私……異世界の人間なの。ここの世界の人間じゃないわ」
「……聞いていた性格とは違うとは前から思っていた。だが……それよりも妻として居てくれただけでも良かったと思っていた……なのに」
 さらに拳をギュッと強く握り締めている。ショックを受けているのかもしれない。
 いや、それ以上に傷つけた……。
「陛下……」
 すると陛下は、パッと背中を向けて小走りで皇宮の中に入ってしまう。私は慌てて呼び止めるが無視されてしまった。怒ってしまったのだろうか?
 だって仕方がないじゃない……。私とあなたとは、住む世界が違うの。
 向こうには両親が居るし友達も居る。来た時は、いきなり嫁ぐことになったり、ややこしい性格をしている陛下に腹を立てたり意外なギャップに戸惑わされたりもした。
 バタバタしていたせいか、あまり家族が居なくて寂しいとか、恋しいとか思う暇もなかったわ。この世界に居るのが当たり前のようになっていた。
 でも……このチャンスを逃したら二度と、私は元の世界には帰られなくなる。
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