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エンディング後

悪役令嬢、決別する

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◇◇◇

「頼む!! 娘に会わせてくれ!! 」

 エントランスで喚き散らしているのは……お父様だった。しかしあの威厳に満ちた姿とはうって代わり、皺が深く刻まれていて髪も白いものが混ざっている。
 記憶の中のお父様とは似ても似つかないその姿に私は思わず目を疑った。

 短い間で十歳は老けているように見える。

「お父様……? 」

 私が呟くと、お父様は弾かれたように私を見つけ、近付いてくる。しかしそれを制するように兵士たちが彼を押さえつけた。

「王妃様に近付くな! 」

「王妃……? 私の娘だ! 娘に会いに来て何が悪い! イリア!! 」

 兵士に羽交い締めにされながらも、真っ直ぐに私を見るお父様。しかしその目は怖いぐらいギラついていて、少しだけ恐怖を覚える。

「一体何の用ですか? 」
 出来るだけ冷静に、声を荒げないように話しかける。

「聞いてくれ! お前を嫁にやってから私は信頼をなくし、ほとんどの財産を失ってしまった…… 」

「え!? 」

 私は声をあげる。クリミア家はそこそこの地位を持つ家柄だったはず。そう簡単に没落なんてするだろうか……?

「ロキ様の仕業でしょう」

 私の表情を察してか、こそっとラビネが耳打ちする。
 なるほどそれなら合点がいく。彼が何らかの情報を貴族たちに流したのだろう、王様のいうことだ。皆信じるしかない。

「だから頼む、私とイリアは何の確執もなかったと他の貴族たちに伝えてくれ! 」

「でもお父様は私の言うことを何一つ信じてくれなかった! 」

 毒殺事件のあのとき、私は父に叩かれた。
 私の言い分もろくに聞かず、エミリアのことだけを信じて。

「それは違うんだ……私はただ……今まで父親らしいことを出来なかった分エミリアが可哀想だと思って……」

「浮気しといてよく言いますわね。エミリアに父親らしいことが出来なかったのもあなたのせいでしょう」

 母を裏切り他の女に走ったのは彼。
 私には何の責任もない。

「親に向かってあなたとはなんだ……!!! 」

 私に良い反応が得られなくて激昂したお父様が顔を真っ赤にする。
 
「私はイリア=リセンティア。あなたとはもう他人です。二度と顔を見せないで」

「待ってくれイリア……。このままじゃ私は首をくくるしか……」

 脅しの次は自分の命を餌にするのか?
 この男の小物ぶりにほとほと嫌気がさす。
 私は兵士に目配せするとこう言い放った。

「つまみ出しなさい。二度とこのお城に足を踏み入れさせないで」

「はっ」

 びしっと敬礼をした兵士たちが男を捕らえる。
 
 尚も私の名前を呼び、もがく男だったがもはや何の感情も湧かなかった。

「さようなら。もう会うこともないでしょう」

 私は一言そう告げると、彼に背を向けてその場を後にした。
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