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陰キャの僕と陽キャ女子の攻防
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僕、守山優樹は今までの人生、恋愛経験ゼロ、そういったお話には全く無縁の人生でした。
昨日のはカウントしていいのか分からないけど。
本当に本当に平凡な人生、特にこれといって人よりできることもないし趣味といえば漫画を読むことくらい。
あと強いていえばそこらへんの男子高校生よりは料理の腕に自信がある。
僕には姉がいるのだが、姉は家事がすごく苦手だ。
両親は外国で2人で暮らしており、ここ日本の実家には僕と姉の2人暮らしだ。
ということは必然的に僕が家事をすることになる。
小学生の頃から家事が苦手な姉な代わり僕が家事全般をこなしてきた。
姉は社会人で中学校で教師をしていて、仕事から帰ってくると疲れきっている。
僕はそんな姉を美味しい料理で元気づけたいと高校生になってからというもの勉強を重ね、料理の腕を上げている。
とはいえ料理が特技で趣味、なんて学校生活で人に自慢できる場面もないし言うつもりもない。
僕は女の子に好かれるような所はひとつもない当たり障りのないただの陰キャ。
教室で陽キャたちにいじられる対象にならないよう控えめな行動、ひっそりと教室の隅で息してることも悟られないよう静かに漫画を読むのが僕の学校生活だった。
今日も陽キャたちが輪になって楽しそうに話をしている。
陽キャたちの笑い声は枯れかけた花も一瞬で復活させ、見事に綺麗な花をもう一度咲かせる。(※僕調べ)
陽キャたちの輪のことを僕達陰キャは太陽のサークルと呼んでいる。
太陽のサークルの中心、人一倍光を放つ女の子。
西条ゆめ。
誰にでも笑顔で優しくて、クラスメイトはみんな友達だよといわんばかりに陰キャにも分け隔てなく普通に話しかけてくれる。
そんな太陽の女の子が昨日僕に告白してくれたなんて信じられない。
もはや昨日は夢だったのか。
西条ゆめだけに夢ってか。
「おい、優樹、おいってば!」
「ん」
「やっと返事した。ずっと話しかけてたんだぞ俺。俺がずっと独り言言っててやべぇやつみたいな感じになってたぞ」
「大丈夫だ。お前は元からやべぇやつだ」
「うるせぇ。この陰キャ」
「そうだよなぁ、僕達は陰キャなんだよなぁ」
「え?どういうこと?」
僕に気づかれず無視されても話しかけ続けてきたこの諦めない男、俺の親友の山本沰。こいつも生粋の陰キャだ。
「何かあったのか?優樹、朝からずっとボーッと太陽のサークル見てるじゃねぇか」
「あぁ。陰キャの僕が急に太陽にさらされたら強い太陽光で死んじゃうよなぁ」
「え?よく分かんねぇけど、そうだろうな」
「沰、お前恋愛したことある?」
「えっ!?何!?ももももちろん!したことなんなななななないけど!?」
「どうしてそんな動揺してるんだよ」
思わせぶりに動揺しやがって。
こういう時の動揺は、本当はある、の方の意味をもつものなんだ。
だが沰、僕は知っている。
お前も僕の仲間だということを。
「ないよなぁ。沰のことならなんでも知ってるぞ僕は」
「え、きもい」
「えっ、きもい?」
「あ、うん、正直きもい。なんでもお前に知られててたまるか。そして俺だって恋愛はいつでもできるように心の準備はしているつもりだぞ」
へへん、と自慢げに沰は腕組みをした。
「心の準備ってなんだよ」
「イメトレ、だな。女の子に告白されたらどう答えるかとか」
「え、何それ、めっちゃ知りたい」
今の僕の悩みにどストライクな内容だ。
ぜひいい答えを教えてくれ。
僕は興味津々に沰に少し顔を近づけ真剣に話を聞く体制に入った。
「おう!知りたいか!まずな、可愛い後輩の女の子に屋上に呼び出されるんだよ、ある日突然。俺はどうした?って優しくその子に言うんだ」
「後輩の女の子かぁ」
「そうするとその子が自分の胸に手をあてて深呼吸する。そしてこう言うんだ。山本先輩!私、先輩のこと前からカッコいいと思ってて!紳士で優しくてずっと好きでした!」
「一個も合ってない」
「そして俺は言うんだ。お前、俺の何を知っている、ってな。そしてそれから俺のことどれだけ知ってるかクイズを開催する。俺の好きな食べ物、俺の好きな色……色々聞いて全問正解した暁には俺の彼女になれるのさ!」
「お前どの立場でもの言ってんだ。今のでお前に一生彼女ができないことが分かったぞ。おめでとうな」
一生親友だ。沰よ。
期待していたものは何も収穫できず、何の参考にもならない恋愛経験ゼロ陰キャ仲間のくそ面白くない妄想話を聞いただけじゃないか。
あれ、でも待てよ?
確かに、好きなら僕のこと少しは知ってくれてるはず。
あの告白が罰ゲームとかなら僕のことなんか好きじゃないってことだし、興味ないさ僕のことなんて。
やばめの親友ながら最高のヒントを貰ってしまった。
「ありがとう、沰よ。お前は一生心の友さ」
僕は沰の両肩をガシッと掴んだ。
「あー、よく分かんねぇけど」
そうすると沰も同じように僕の両肩を掴んできた。
完成。
僕と沰の陰キャの小サークル。
小さい輪だが、この団結力は凄まじい。
僕は何だかとても勇気が湧いてきた。
持つべきものはやっぱり陰キャ友達!
「僕、頑張るよ!この世の中の闇を切り裂いてやるさ」
「あー、本当によく分かんねぇけど頑張れ!」
勝負は今日の放課後。
僕は陽キャたちの陰謀にはハマらない。
さあ来い!陽キャたちよ!
*
「優樹君、あなたのことが好きです。今日こそは良い返事ください!」
「グハッ!!」
「えっ!?ちょっ、どうしたの!?」
初めて女の子に優樹君と呼ばれ僕はキャパオーバーし、胸を抑えながらその場に膝まづいた。
「む、胸が、苦しい……!」
「優樹君!?体調良くないの?」
「くっ……貴様っ、何をした……何だこの胸を締め付けられる感じは……!」
「それは、恋よ!きっと!優樹君もしかして私の事好きになってくれた?」
「あ、それは違います。罠にはハマりませんので」
「え、何?切り替え早くない?」
僕はスクッと立ち上がり、さっきまでのことは無かったかのように振舞った。
ここはお馴染みになりつつある体育館裏。
そしてお馴染みになりつつあるけどなりたくない複雑な感情の僕と西条さん。
昨日のことは夢かと思ったけど、今日もここに来て告白されている時点で昨日も今日も夢じゃない。
「私の事、嫌い……?」
西条さんは不安げな表情を浮かべ、僕の目を真っ直ぐ見た。
「めめめめめっそうもない!!君のこと嫌いな人なんてあのクラス……いや、全人類にいないよ!」
「じゃあどうして付き合うのはダメなの?私が可愛すぎて俺には釣り合わないとか思ってる?」
「え、自分でそういうこと言う?」
「え、言う。だって可愛いのは事実だから仕方ないよね」
「あ、うん、事実だけれども」
「付き合えない理由聞かせてくれないと納得できないよ私」
なんて積極的な姿勢!
僕ごときにそんな本気にならなくても……。
学校イチのモテモテイケメンにそういう情熱は使うものだぞ。
「いや、昨日も言ったけどさ、こんなジメジメ取り柄なしくそ陰キャの僕を君みたいなキラキラ太陽眩しい系陽キャ女子が好きになるわけないって話」
「昨日よりバージョンアップしてる……」
さて、いよいよ、さっき大親友との会話で思いついたあの作戦を実行するしかないようだな。
これで怯んで諦めて逃げ出すんだな西条ゆめ!
お前のダークな作戦にはハマらないぞ!
「では、参りましょう!守山優樹プレゼンツ!守山優樹クイズ~!」
「えっ?何?どういうこと?」
「僕のこと好きなら答えられて当然な問題を今から出題しますのでお答えください!見事全問正解しましたら、真剣にお付き合い考えさせていただきます」
我ながら、本当に何様だよ僕は、と心の中で笑っているがこの作戦なら諦めてくれるかもしれない。
もしこの告白が不純なものであれば暴けるかもしれない。
これは僕と陽キャの戦いだ。
「……いいわよ。受けて立とうじゃない。私の本気、見せてあげる」
クワッと目を見開いて何故か中腰になり、恐らく戦闘態勢に入った西条さん。
僕も合わせて戦闘態勢に入った。
これからバトルでも始まるのかという雰囲気。
しかしながらこのお話はバトル物ではない。
残念でした。
「いくぞ。第一問」
「かかってきなさい」
「守山優樹の通学手段は?」
「自転車ね。家から15分。信号のタイミングが悪いと20分ね」
「早。答えんの早。そして細かい」
「え、合ってるでしょ?合ってるよね?」
「あ、はい、合ってます。即答で驚きましたが合ってます」
あまりの即答、正確な回答に僕はたじろぎ、少し後ずさりしてしまった。
一方の西条さんは戦闘態勢のまますごいドヤ顔でこちらを見ている。
ここで怯んではいけない、僕。
「さあ、次の問題ちょうだい」
僕を馬鹿にするような口調で煽ってくる。
右の口角を上げ、不気味な笑みを浮かべてくる。
あ、その顔、写メっていいですか?
もし何かあった時のために弱みを握っておきたい!
しかし今はそんな気持ちを堪え、僕はクイズを続けた。
「第二問。僕の得意なことは?」
口外してないし僕のことなど興味のないクラスメイト共に分かってたまるか。
「料理」
「早」
はたまた正解。
連続即答で正解。
嘘だろ?
クイズの答え事前に配ってた、とかそういうヤラセとかじゃないです。
「え、何?君なんなの?僕のこと知り尽くしてる?え、ストーカー?もしかして僕の弱みを握ろうと日々ストーカーしてた?」
「ストーカーだなんて人聞きの悪いわ。私、たまたま見たの。あなたが放課後、スーパーで買い物してるところ」
確かに僕は姉に夕食を作るため、3日に1度、家の近くのスーパーに学校帰りに寄って買い物をしている。
まさかその姿を西条さんに見られていただなんて。
どうだ、クラスメイトの陰キャメガネ男が特売のキャベツとか激安の醤油とかをニヤニヤしながら買い物しているのを見た気分は!
笑ってるんだろ?
陽キャのサークルで話題に出して僕のことみんなで嘲笑ってたんだろ?
「僕のことそうやっておちょくってんだろ?」
「違うんだけど。私ね、あなたが買い物してるのを見つけた時、買い物カゴに野菜とか調味料とか入れてて、明らかに料理する人の買い物だなって観察してしまったの。あ、この人料理してる、料理出来るんだって関心したの。それから何回も優樹君をスーパーで見て、いつも楽しそうに買い物してるのを見て、私も気づいたら楽しい気持ちで優樹君の買い物を見るようになって……」
「何回も……見てた……」
「そう。私、手料理が大好きで、彼氏や旦那にするなら絶対、料理できる人がいいって思うの。私に美味しい料理作ってくれて2人で美味しいねって食べるのが夢なの」
「僕が料理できる人だと思ったから好きになったってこと?」
「簡単に説明するとそうね。でもいつも見るようになってから色々気づいて、あなたは自分が思ってる以上に楽しい人よ。私は気づいたら優樹君、あなたが好きになってた。疑ってくるけどこれが私の本当の気持ち」
顔から火が出るように熱い。
僕は西条さんとまともに目も合わせられないまま、下を向き、何も言えないでいた。
どうしていいか、何を言っていいか分からない。
自分でも分かるくらい動悸が激しくて時間の感覚も分からなくなり、周りの音も聞こえない。
僕は人に好きになられるような人間だってこと?
西条さんは本当に僕のこと好きってこと?
色々な思考が脳みそをぐるぐるして結果、何も答えは生まれない。
「ごめんなさい」
しばらくしてやっと口に出した言葉はごめんなさい、だった。
「ごめんなさい、僕は君のことずっと疑ってた。君が僕のこと好きになるなんてありえないから。でも今の聞いて、もしかして本当に好きでいてくれてるのかもって思った。今まで君の気持ちを聞こえないふりして踏みにじってた……」
「謝らないで。分かってくれればいいの」
「好きになってくれてありがとう」
僕は照れ隠しのつもりでメガネをクイッと上げた。
「もう!照れるっ!……ってことは付き合ってくれるの?」
「あ、それはまた別なので無理です」
「え?」
僕は右の手のひらをスっと上げ無表情で断った。
僕は切り替えが早い。
西条さんも僕の切り替えの早さに開いた口が塞がらないといった感じだ。
「え、逆にさ、ここまで分かってくれてなんで付き合うとなるとそんな塩対応に切り替えてくるわけ?……あ、そうか、やっぱり私可愛すぎるんだね……隣にいたら可愛好ぎて注目浴びちゃうもんね……私のばか!もうっ」
「いやいやいや、君のその自分可愛い推しがすごい」
「だって可愛いのがいけないんでしょ?」
「普通そこまで自分可愛いって言わないよ?西条さん、逆に尊敬するんだけど」
「わあ、ありがとう」
「いや、褒めてないです。……まあその付き合えないのは、僕が陰キャ、君が陽キャだから。釣り合わないよ僕達は。僕の陰キャパワーで君のキラキラに少しでも陰を落としたくないんだ」
「本当に意味分からない」
「僕はそもそも女の子と付き合うなんて無縁だしどうしたらいいか分からないしましてや太陽のようなこんな可愛い女の子と……!君にはなんのメリットもないじゃないか!とにかく付き合うのは無理ですごめんなさい」
「今日も振られたわ……。途中まで理解してくれたと思ってたのに。ずるい、期待させて」
「いや、本当にごめん」
「まあいいわ。今日は私が優樹君のこと本気で好きって伝わったみたいだし、これからじっくりと時間をかけて私の付き合いたくなるよう仕向けてみせる」
「いや」
「また明日ねー!バイバイ!」
今日も西条さんは僕の話を聞かず、僕に大きく手を振りながら小走りで体育館裏から消えていった。
「スーパーポジティブかよ、さすが太陽だな。太陽のサークルを創り出すだけあるわ。創成者かよ。まじ」
僕はぶつぶつと誰にも聞こえていないのに西条さんへのツッコミを連発しながらとぼとぼと歩き、この場をあとにした。
昨日のはカウントしていいのか分からないけど。
本当に本当に平凡な人生、特にこれといって人よりできることもないし趣味といえば漫画を読むことくらい。
あと強いていえばそこらへんの男子高校生よりは料理の腕に自信がある。
僕には姉がいるのだが、姉は家事がすごく苦手だ。
両親は外国で2人で暮らしており、ここ日本の実家には僕と姉の2人暮らしだ。
ということは必然的に僕が家事をすることになる。
小学生の頃から家事が苦手な姉な代わり僕が家事全般をこなしてきた。
姉は社会人で中学校で教師をしていて、仕事から帰ってくると疲れきっている。
僕はそんな姉を美味しい料理で元気づけたいと高校生になってからというもの勉強を重ね、料理の腕を上げている。
とはいえ料理が特技で趣味、なんて学校生活で人に自慢できる場面もないし言うつもりもない。
僕は女の子に好かれるような所はひとつもない当たり障りのないただの陰キャ。
教室で陽キャたちにいじられる対象にならないよう控えめな行動、ひっそりと教室の隅で息してることも悟られないよう静かに漫画を読むのが僕の学校生活だった。
今日も陽キャたちが輪になって楽しそうに話をしている。
陽キャたちの笑い声は枯れかけた花も一瞬で復活させ、見事に綺麗な花をもう一度咲かせる。(※僕調べ)
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太陽のサークルの中心、人一倍光を放つ女の子。
西条ゆめ。
誰にでも笑顔で優しくて、クラスメイトはみんな友達だよといわんばかりに陰キャにも分け隔てなく普通に話しかけてくれる。
そんな太陽の女の子が昨日僕に告白してくれたなんて信じられない。
もはや昨日は夢だったのか。
西条ゆめだけに夢ってか。
「おい、優樹、おいってば!」
「ん」
「やっと返事した。ずっと話しかけてたんだぞ俺。俺がずっと独り言言っててやべぇやつみたいな感じになってたぞ」
「大丈夫だ。お前は元からやべぇやつだ」
「うるせぇ。この陰キャ」
「そうだよなぁ、僕達は陰キャなんだよなぁ」
「え?どういうこと?」
僕に気づかれず無視されても話しかけ続けてきたこの諦めない男、俺の親友の山本沰。こいつも生粋の陰キャだ。
「何かあったのか?優樹、朝からずっとボーッと太陽のサークル見てるじゃねぇか」
「あぁ。陰キャの僕が急に太陽にさらされたら強い太陽光で死んじゃうよなぁ」
「え?よく分かんねぇけど、そうだろうな」
「沰、お前恋愛したことある?」
「えっ!?何!?ももももちろん!したことなんなななななないけど!?」
「どうしてそんな動揺してるんだよ」
思わせぶりに動揺しやがって。
こういう時の動揺は、本当はある、の方の意味をもつものなんだ。
だが沰、僕は知っている。
お前も僕の仲間だということを。
「ないよなぁ。沰のことならなんでも知ってるぞ僕は」
「え、きもい」
「えっ、きもい?」
「あ、うん、正直きもい。なんでもお前に知られててたまるか。そして俺だって恋愛はいつでもできるように心の準備はしているつもりだぞ」
へへん、と自慢げに沰は腕組みをした。
「心の準備ってなんだよ」
「イメトレ、だな。女の子に告白されたらどう答えるかとか」
「え、何それ、めっちゃ知りたい」
今の僕の悩みにどストライクな内容だ。
ぜひいい答えを教えてくれ。
僕は興味津々に沰に少し顔を近づけ真剣に話を聞く体制に入った。
「おう!知りたいか!まずな、可愛い後輩の女の子に屋上に呼び出されるんだよ、ある日突然。俺はどうした?って優しくその子に言うんだ」
「後輩の女の子かぁ」
「そうするとその子が自分の胸に手をあてて深呼吸する。そしてこう言うんだ。山本先輩!私、先輩のこと前からカッコいいと思ってて!紳士で優しくてずっと好きでした!」
「一個も合ってない」
「そして俺は言うんだ。お前、俺の何を知っている、ってな。そしてそれから俺のことどれだけ知ってるかクイズを開催する。俺の好きな食べ物、俺の好きな色……色々聞いて全問正解した暁には俺の彼女になれるのさ!」
「お前どの立場でもの言ってんだ。今のでお前に一生彼女ができないことが分かったぞ。おめでとうな」
一生親友だ。沰よ。
期待していたものは何も収穫できず、何の参考にもならない恋愛経験ゼロ陰キャ仲間のくそ面白くない妄想話を聞いただけじゃないか。
あれ、でも待てよ?
確かに、好きなら僕のこと少しは知ってくれてるはず。
あの告白が罰ゲームとかなら僕のことなんか好きじゃないってことだし、興味ないさ僕のことなんて。
やばめの親友ながら最高のヒントを貰ってしまった。
「ありがとう、沰よ。お前は一生心の友さ」
僕は沰の両肩をガシッと掴んだ。
「あー、よく分かんねぇけど」
そうすると沰も同じように僕の両肩を掴んできた。
完成。
僕と沰の陰キャの小サークル。
小さい輪だが、この団結力は凄まじい。
僕は何だかとても勇気が湧いてきた。
持つべきものはやっぱり陰キャ友達!
「僕、頑張るよ!この世の中の闇を切り裂いてやるさ」
「あー、本当によく分かんねぇけど頑張れ!」
勝負は今日の放課後。
僕は陽キャたちの陰謀にはハマらない。
さあ来い!陽キャたちよ!
*
「優樹君、あなたのことが好きです。今日こそは良い返事ください!」
「グハッ!!」
「えっ!?ちょっ、どうしたの!?」
初めて女の子に優樹君と呼ばれ僕はキャパオーバーし、胸を抑えながらその場に膝まづいた。
「む、胸が、苦しい……!」
「優樹君!?体調良くないの?」
「くっ……貴様っ、何をした……何だこの胸を締め付けられる感じは……!」
「それは、恋よ!きっと!優樹君もしかして私の事好きになってくれた?」
「あ、それは違います。罠にはハマりませんので」
「え、何?切り替え早くない?」
僕はスクッと立ち上がり、さっきまでのことは無かったかのように振舞った。
ここはお馴染みになりつつある体育館裏。
そしてお馴染みになりつつあるけどなりたくない複雑な感情の僕と西条さん。
昨日のことは夢かと思ったけど、今日もここに来て告白されている時点で昨日も今日も夢じゃない。
「私の事、嫌い……?」
西条さんは不安げな表情を浮かべ、僕の目を真っ直ぐ見た。
「めめめめめっそうもない!!君のこと嫌いな人なんてあのクラス……いや、全人類にいないよ!」
「じゃあどうして付き合うのはダメなの?私が可愛すぎて俺には釣り合わないとか思ってる?」
「え、自分でそういうこと言う?」
「え、言う。だって可愛いのは事実だから仕方ないよね」
「あ、うん、事実だけれども」
「付き合えない理由聞かせてくれないと納得できないよ私」
なんて積極的な姿勢!
僕ごときにそんな本気にならなくても……。
学校イチのモテモテイケメンにそういう情熱は使うものだぞ。
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「昨日よりバージョンアップしてる……」
さて、いよいよ、さっき大親友との会話で思いついたあの作戦を実行するしかないようだな。
これで怯んで諦めて逃げ出すんだな西条ゆめ!
お前のダークな作戦にはハマらないぞ!
「では、参りましょう!守山優樹プレゼンツ!守山優樹クイズ~!」
「えっ?何?どういうこと?」
「僕のこと好きなら答えられて当然な問題を今から出題しますのでお答えください!見事全問正解しましたら、真剣にお付き合い考えさせていただきます」
我ながら、本当に何様だよ僕は、と心の中で笑っているがこの作戦なら諦めてくれるかもしれない。
もしこの告白が不純なものであれば暴けるかもしれない。
これは僕と陽キャの戦いだ。
「……いいわよ。受けて立とうじゃない。私の本気、見せてあげる」
クワッと目を見開いて何故か中腰になり、恐らく戦闘態勢に入った西条さん。
僕も合わせて戦闘態勢に入った。
これからバトルでも始まるのかという雰囲気。
しかしながらこのお話はバトル物ではない。
残念でした。
「いくぞ。第一問」
「かかってきなさい」
「守山優樹の通学手段は?」
「自転車ね。家から15分。信号のタイミングが悪いと20分ね」
「早。答えんの早。そして細かい」
「え、合ってるでしょ?合ってるよね?」
「あ、はい、合ってます。即答で驚きましたが合ってます」
あまりの即答、正確な回答に僕はたじろぎ、少し後ずさりしてしまった。
一方の西条さんは戦闘態勢のまますごいドヤ顔でこちらを見ている。
ここで怯んではいけない、僕。
「さあ、次の問題ちょうだい」
僕を馬鹿にするような口調で煽ってくる。
右の口角を上げ、不気味な笑みを浮かべてくる。
あ、その顔、写メっていいですか?
もし何かあった時のために弱みを握っておきたい!
しかし今はそんな気持ちを堪え、僕はクイズを続けた。
「第二問。僕の得意なことは?」
口外してないし僕のことなど興味のないクラスメイト共に分かってたまるか。
「料理」
「早」
はたまた正解。
連続即答で正解。
嘘だろ?
クイズの答え事前に配ってた、とかそういうヤラセとかじゃないです。
「え、何?君なんなの?僕のこと知り尽くしてる?え、ストーカー?もしかして僕の弱みを握ろうと日々ストーカーしてた?」
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笑ってるんだろ?
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「僕のことそうやっておちょくってんだろ?」
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「何回も……見てた……」
「そう。私、手料理が大好きで、彼氏や旦那にするなら絶対、料理できる人がいいって思うの。私に美味しい料理作ってくれて2人で美味しいねって食べるのが夢なの」
「僕が料理できる人だと思ったから好きになったってこと?」
「簡単に説明するとそうね。でもいつも見るようになってから色々気づいて、あなたは自分が思ってる以上に楽しい人よ。私は気づいたら優樹君、あなたが好きになってた。疑ってくるけどこれが私の本当の気持ち」
顔から火が出るように熱い。
僕は西条さんとまともに目も合わせられないまま、下を向き、何も言えないでいた。
どうしていいか、何を言っていいか分からない。
自分でも分かるくらい動悸が激しくて時間の感覚も分からなくなり、周りの音も聞こえない。
僕は人に好きになられるような人間だってこと?
西条さんは本当に僕のこと好きってこと?
色々な思考が脳みそをぐるぐるして結果、何も答えは生まれない。
「ごめんなさい」
しばらくしてやっと口に出した言葉はごめんなさい、だった。
「ごめんなさい、僕は君のことずっと疑ってた。君が僕のこと好きになるなんてありえないから。でも今の聞いて、もしかして本当に好きでいてくれてるのかもって思った。今まで君の気持ちを聞こえないふりして踏みにじってた……」
「謝らないで。分かってくれればいいの」
「好きになってくれてありがとう」
僕は照れ隠しのつもりでメガネをクイッと上げた。
「もう!照れるっ!……ってことは付き合ってくれるの?」
「あ、それはまた別なので無理です」
「え?」
僕は右の手のひらをスっと上げ無表情で断った。
僕は切り替えが早い。
西条さんも僕の切り替えの早さに開いた口が塞がらないといった感じだ。
「え、逆にさ、ここまで分かってくれてなんで付き合うとなるとそんな塩対応に切り替えてくるわけ?……あ、そうか、やっぱり私可愛すぎるんだね……隣にいたら可愛好ぎて注目浴びちゃうもんね……私のばか!もうっ」
「いやいやいや、君のその自分可愛い推しがすごい」
「だって可愛いのがいけないんでしょ?」
「普通そこまで自分可愛いって言わないよ?西条さん、逆に尊敬するんだけど」
「わあ、ありがとう」
「いや、褒めてないです。……まあその付き合えないのは、僕が陰キャ、君が陽キャだから。釣り合わないよ僕達は。僕の陰キャパワーで君のキラキラに少しでも陰を落としたくないんだ」
「本当に意味分からない」
「僕はそもそも女の子と付き合うなんて無縁だしどうしたらいいか分からないしましてや太陽のようなこんな可愛い女の子と……!君にはなんのメリットもないじゃないか!とにかく付き合うのは無理ですごめんなさい」
「今日も振られたわ……。途中まで理解してくれたと思ってたのに。ずるい、期待させて」
「いや、本当にごめん」
「まあいいわ。今日は私が優樹君のこと本気で好きって伝わったみたいだし、これからじっくりと時間をかけて私の付き合いたくなるよう仕向けてみせる」
「いや」
「また明日ねー!バイバイ!」
今日も西条さんは僕の話を聞かず、僕に大きく手を振りながら小走りで体育館裏から消えていった。
「スーパーポジティブかよ、さすが太陽だな。太陽のサークルを創り出すだけあるわ。創成者かよ。まじ」
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