8 / 22
縺れていく思い
しおりを挟む
彼は優雅な動きでソファーから立ち上がると、笑顔のままに、手を伸ばし私の頬に触れる。
なぜ、なぜなの?
そんな愛しそうな瞳で私を見つめるの?
過去に出会ったとしても……私たちはまだ子供だったはず……。
私が彼のことをしらないように、彼も私のことをしらないはずなのにどうして……。
グルグルとそんな思いが巡る中、私はそのまま彼に伝えた。
「どうして私なのですか……?」
「だって君が僕を見つけたからさ」
意味がわからない……。
でも私には魔導士になるという夢がある。
その夢のために今まで頑張ってきたのに……。
こんな形で王妃になってしまえば……その夢は叶わなくなってしまう。
だって王妃が魔導師になるだなんて、許されるはずがないのだから……。
どうすれば……どうすれば王妃にならなくてすむの?
部屋に静寂が訪れ、私は小さく唇を噛みしめる。
苛立ちがこみ上げる中、そっと拳を握ると、王子へと視線を向けた。
トントントン
「失礼いたします」
その声に扉が開いていくと、王宮のメイドがやってくる。
メイドはワゴンにティーカップをのせ、私たちが座るであろうテーブルへと向かうと、お茶のセッティングを進めていく。
向かい合い立ち尽くす私たちの姿に、こちらは最近巷で話題の砂糖菓子でございますわ、と星のような形をしたお菓子を並べていった。
その様子に私は大きく息を吸い込むと、ゆっくりとソファーへ移動し、椅子にこしをかけ、ティーカップを手に取る。
困惑する心を冷静に戻すため紅茶を一口飲むと、砂糖菓子を上品に口へと運ぶ。
口の中に砂糖の甘さが広がり、頬が自然と緩む中、少しこの緊迫感がほぐれた気がした。
アラン王子はこちらをじっと見ながら微笑みを浮かべ、ふふふと笑ったかと思うと、小さく口を開いた。
「その砂糖菓子がすきなのかな?」
うぅ……。
彼の姿に頭を垂れると、私は小さく頷いて見せた。
そうして何の進展もないままに、王子との面会が終わり、私は家路へと向かっていた。
なにやら視線を感じ周りを見渡してみると、そこにはアラン王子のお母さまが私に視線を向けている。
私は軽く会釈してみると、目があった王妃は少しよろしいかしら?と、流れるような動作で私のほうへと近づいてきた。
「あまり抵抗なさらず受けとめてしまったほうが楽ですのよ」
王妃の言葉を理解できず、私は呆然としたままに口を閉ざす。
「わたくしもね、王妃になるのが嫌で反発していた時期があったの……。でも、どうやっても私たちは結局つかまってしまう運命なのよ……彼らにね……」
どこかあきらめたような、悟ったような表情を見せる王妃は空を見据えながら淡々と語っていく。
「でもね受け入れてしまえば、彼らの愛情はとっても深いから……とても居心地がよくて、楽になることができるの」
まるで自分に言い聞かせるように語る王妃に、私は何も言う事が出来なかった。
それはつまり、私も抵抗せず王妃になることを受け入れろということだろうか……。
そう思い悩む中、王妃はポツリとまだわからないかもしれないわね……と蚊の鳴く声で囁く。
「いつかあなたにもわかるときが来るわ、その時素直に受け止めることが救われる一歩になるのよ」
まったく意味がわからない……。
「それではまたごきげんよう」
軽く手を振る王妃は、優雅に私へ背を向けると、」バラの庭へと消えていった。
いったいなんなの……?
私はわけが分からず、心にモヤッとした気持ちを抱えたままに、私は王宮を後にした。
そうして屋敷へ着くと、私は父や母に挨拶もせず自室へと飛び込んだ。
もうわけがわからない、一体どうしてこんなこんなことになったの?
アラン王子と話してみた感じ……婚約者候補から外してもらうには、一筋縄ではいかないようだ。
私は部屋に引きこもりると、布団を頭までかぶりまた頭を悩ませるのだった。
そんなある日、グレイが屋敷へとやってきた。
部屋に引きこもっている私を見かねてなのか……不躾に自室へとやってくると、私が眠るベッド脇へと腰かける。
そうしてグレイは何も言わず、只々私の頭を優しくなでた。
そんな彼の優しい手に、自然と涙があふれてくる。
泣きながら私は今の現状をポツリ、ポツリと話すと、彼は優しく髪をなでながらただただ私の話に耳を傾けてくれた。
「ねぇ……グレイ、私はどうすればいいのかな」
目にいっぱいの涙を浮かべ、私は布団から顔を出しそっとグレイスを見上げる。
「私は……グレイの隣に並んで、魔術師になりたいだけなのに……」
そんな私にグレイスは、私の頭を強く引き寄せると、胸の中へと閉じ込める。
「なら俺と……っっ」
彼が何かを言おうとした瞬間に、突然部屋のドアが開いた。
驚いてドアの方向へ視線を向けると、そこにはアラン王子が笑顔のまま佇んでいた。
腕を組み、じっと私たちの姿を見据えると、部屋の中へと入ってくる。
どうして彼が……?
彼はゆっくりと笑顔を崩さず私のそばへ寄ると、グレイスの腕の中にいた私を引きはがし、自分の胸へと閉じ込める。
「王子殿下お久しぶりです」
「久しぶりだね……グレイ」
私はアラン王子の胸から逃げる為……彼の胸を力いっぱい押すがピクリとも動かない。
息が苦しくなり、顔を上げようと必死にもがいていると、少し腕の力が緩んでいく。
その隙に私は勢いよく顔を上げると、新鮮な空気を思いっ切りに吸い込んだ。
そのまま逃げようと彼を押しのけてみるが……私の肩に置いた手の力は緩まなかった。
うぅ……逃げ出せない……。
そっとグレイに視線を向けてみると、アラン王子と何も言わず睨み合っている。
不穏な空気が漂う中、アラン王子は微笑みを浮かべたかと思うと、こちらへと顔を向けた。
「少し待っていてくれるかな?」
そう耳元で囁かれた低く透き通る声に、なぜか背筋がムズムズする。
私は耳を押さえながらにコクコクと頷く中、彼らは私を置いて、部屋を出て行った。
彼らが一体何を話したのかはわからないが……あの日から私の屋敷にグレイが来ることはなくなった……。
なぜ、なぜなの?
そんな愛しそうな瞳で私を見つめるの?
過去に出会ったとしても……私たちはまだ子供だったはず……。
私が彼のことをしらないように、彼も私のことをしらないはずなのにどうして……。
グルグルとそんな思いが巡る中、私はそのまま彼に伝えた。
「どうして私なのですか……?」
「だって君が僕を見つけたからさ」
意味がわからない……。
でも私には魔導士になるという夢がある。
その夢のために今まで頑張ってきたのに……。
こんな形で王妃になってしまえば……その夢は叶わなくなってしまう。
だって王妃が魔導師になるだなんて、許されるはずがないのだから……。
どうすれば……どうすれば王妃にならなくてすむの?
部屋に静寂が訪れ、私は小さく唇を噛みしめる。
苛立ちがこみ上げる中、そっと拳を握ると、王子へと視線を向けた。
トントントン
「失礼いたします」
その声に扉が開いていくと、王宮のメイドがやってくる。
メイドはワゴンにティーカップをのせ、私たちが座るであろうテーブルへと向かうと、お茶のセッティングを進めていく。
向かい合い立ち尽くす私たちの姿に、こちらは最近巷で話題の砂糖菓子でございますわ、と星のような形をしたお菓子を並べていった。
その様子に私は大きく息を吸い込むと、ゆっくりとソファーへ移動し、椅子にこしをかけ、ティーカップを手に取る。
困惑する心を冷静に戻すため紅茶を一口飲むと、砂糖菓子を上品に口へと運ぶ。
口の中に砂糖の甘さが広がり、頬が自然と緩む中、少しこの緊迫感がほぐれた気がした。
アラン王子はこちらをじっと見ながら微笑みを浮かべ、ふふふと笑ったかと思うと、小さく口を開いた。
「その砂糖菓子がすきなのかな?」
うぅ……。
彼の姿に頭を垂れると、私は小さく頷いて見せた。
そうして何の進展もないままに、王子との面会が終わり、私は家路へと向かっていた。
なにやら視線を感じ周りを見渡してみると、そこにはアラン王子のお母さまが私に視線を向けている。
私は軽く会釈してみると、目があった王妃は少しよろしいかしら?と、流れるような動作で私のほうへと近づいてきた。
「あまり抵抗なさらず受けとめてしまったほうが楽ですのよ」
王妃の言葉を理解できず、私は呆然としたままに口を閉ざす。
「わたくしもね、王妃になるのが嫌で反発していた時期があったの……。でも、どうやっても私たちは結局つかまってしまう運命なのよ……彼らにね……」
どこかあきらめたような、悟ったような表情を見せる王妃は空を見据えながら淡々と語っていく。
「でもね受け入れてしまえば、彼らの愛情はとっても深いから……とても居心地がよくて、楽になることができるの」
まるで自分に言い聞かせるように語る王妃に、私は何も言う事が出来なかった。
それはつまり、私も抵抗せず王妃になることを受け入れろということだろうか……。
そう思い悩む中、王妃はポツリとまだわからないかもしれないわね……と蚊の鳴く声で囁く。
「いつかあなたにもわかるときが来るわ、その時素直に受け止めることが救われる一歩になるのよ」
まったく意味がわからない……。
「それではまたごきげんよう」
軽く手を振る王妃は、優雅に私へ背を向けると、」バラの庭へと消えていった。
いったいなんなの……?
私はわけが分からず、心にモヤッとした気持ちを抱えたままに、私は王宮を後にした。
そうして屋敷へ着くと、私は父や母に挨拶もせず自室へと飛び込んだ。
もうわけがわからない、一体どうしてこんなこんなことになったの?
アラン王子と話してみた感じ……婚約者候補から外してもらうには、一筋縄ではいかないようだ。
私は部屋に引きこもりると、布団を頭までかぶりまた頭を悩ませるのだった。
そんなある日、グレイが屋敷へとやってきた。
部屋に引きこもっている私を見かねてなのか……不躾に自室へとやってくると、私が眠るベッド脇へと腰かける。
そうしてグレイは何も言わず、只々私の頭を優しくなでた。
そんな彼の優しい手に、自然と涙があふれてくる。
泣きながら私は今の現状をポツリ、ポツリと話すと、彼は優しく髪をなでながらただただ私の話に耳を傾けてくれた。
「ねぇ……グレイ、私はどうすればいいのかな」
目にいっぱいの涙を浮かべ、私は布団から顔を出しそっとグレイスを見上げる。
「私は……グレイの隣に並んで、魔術師になりたいだけなのに……」
そんな私にグレイスは、私の頭を強く引き寄せると、胸の中へと閉じ込める。
「なら俺と……っっ」
彼が何かを言おうとした瞬間に、突然部屋のドアが開いた。
驚いてドアの方向へ視線を向けると、そこにはアラン王子が笑顔のまま佇んでいた。
腕を組み、じっと私たちの姿を見据えると、部屋の中へと入ってくる。
どうして彼が……?
彼はゆっくりと笑顔を崩さず私のそばへ寄ると、グレイスの腕の中にいた私を引きはがし、自分の胸へと閉じ込める。
「王子殿下お久しぶりです」
「久しぶりだね……グレイ」
私はアラン王子の胸から逃げる為……彼の胸を力いっぱい押すがピクリとも動かない。
息が苦しくなり、顔を上げようと必死にもがいていると、少し腕の力が緩んでいく。
その隙に私は勢いよく顔を上げると、新鮮な空気を思いっ切りに吸い込んだ。
そのまま逃げようと彼を押しのけてみるが……私の肩に置いた手の力は緩まなかった。
うぅ……逃げ出せない……。
そっとグレイに視線を向けてみると、アラン王子と何も言わず睨み合っている。
不穏な空気が漂う中、アラン王子は微笑みを浮かべたかと思うと、こちらへと顔を向けた。
「少し待っていてくれるかな?」
そう耳元で囁かれた低く透き通る声に、なぜか背筋がムズムズする。
私は耳を押さえながらにコクコクと頷く中、彼らは私を置いて、部屋を出て行った。
彼らが一体何を話したのかはわからないが……あの日から私の屋敷にグレイが来ることはなくなった……。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
976
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる