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高等部
直接対決
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嫌がらせはなくなることなく、どう対処していこうかと悩みながら、私は普段通り学園に通っていた。
今日も靴箱は開けず、カバンから上履きを取り出すと、そそくさと教室へと向かう。
机の落書きはないが、机の中に手を入れるときは、必ず中を覗き込む。
あれ、結構痛いんだよね。
治りかけていた傷が疼くと、何もないことを確認して教科書を仕舞いこんだ。
授業が終わりお昼休みになると、突然私の周りにわらわらと女子生徒たちが集まってきた。
何だろうと思いながら顔を上げると、目の前にいた彼女とパチリと目があう。
「ねぇ、ちょっと一緒に来てくれない?」
この女たちが虐めの主犯なのか定かではないが、呼び出しなら好都合 。
コクリと頷くと、強引に腕を引っ張られる。
そのまま連れ出されると、ザワザワとクラスがざわめいた。
耳もとでは、女子生徒達のクスクスと失笑が届く。
そんな私の姿に、教室内の生徒達は知らぬ存ぜぬと、目を合わせることはない。
彼女たちに挟まれるように廊下を歩いて行く。
私は抵抗することなく、静かについていった。
非常階段へ続く扉を抜け、一階まで下りていくと、すれ違う生徒達は目を伏せるように通り過ぎていく。
そうして人気のない校舎裏に到着すると立ち止まった。
私も慌てて立ち止まると、ゆっくり顔を上げる。
すると先頭を歩いていた生徒が徐に振り返り、私の体を突き飛ばすと、強く壁に打ち付けられた。
咄嗟の事に受け身を取れず、私は痛みに肩を押さえていると、女子生徒達は私を囲むように立ちはだかった。
「あんたね、調子にのりすぎなのよ。さっさと学校をやめなさいよ。目障りだわ」
突き飛ばした女は、私を見下すように視線を向ける。
彼女は同じクラスの北条 花蓮。
「あんなにも忠告したのに、聞かないあなたが悪いのよ?この学園に、あなたの居場所なんてないの。出て行きなさいよ」
北条はそう言い放つと、私の体を強く壁に押し付ける。
痛みに顔を歪める中、そうよ、そうよ、と周りの女子達は賛同するように声をあげていた。
「ふん、まったく図太い神経をしているわね。私はね、あの名家で知られている条華家の者なの。あなたは知らないかもしれないけど、ふふふ。だから、ここであなたみたいな貧乏人に怪我をさせても、お父様の力で簡単にもみ消すことができるの」
私は条華家との言葉に大きく目を見開くと、勝ち誇ったような笑みを浮かべる北条と視線が絡む。
まさか条華家の名前が出てくるなんて……。
でも北条なんいぇ聞いた覚えがない。
彼女の顔をじっと眺めてみるが、やはり記憶にはない。
条華家は大きいし全てを把握していない。
もしかしたら分家の分家……末端かな?
首をかしげ見つめる姿が気に食わなかったのか、彼女は冷たい笑みを消し、醜く顔を歪めると、私の髪を鷲掴みし、コンクリートの壁にたたきつける。
痛いっ……ッッ。
咄嗟に彼女の腕を掴むが、その手は周りの女子達に捕らえられた。
身動きが取れなくなった私は、壁に何度も打ち付けられ、痛みに呻き声をあげる。
「ねぇ、花蓮様。この子の下着姿の写真を撮ってばらまくのはどう。きっとそれを見た二条君も華僑君も彼女から離れていくし、彼女も学園にもいられなくなるんじゃない?」
「あら、いいアイデアね、さっさと脱がせちゃって」
女子生徒の手が私のブレザーにかかると、ボタンが外されブレザーを脱がされる。
必死に抵抗してみるも、何人もの女相手では、なかなか自由に体を動かすことができない。
脱がされるのはまずい、怪我をさせるのは可愛そうだけれど、技をかけて……。
「ちょっと、いい加減に」
ブラウスのボタンにかけられたところで、私は思いっきり腕を振りぬくと、拘束していた生徒が慌てて手を離す。
拘束をといた私を押さえつけに来る腕を軽くいなした。
自由になった手で、反対側で腕を掴んでいた女子生徒の腕をねじりあげようとした刹那、スマホの着信音が響いた。
北条はおもむろにスマホを取り出すと、もしもしと甘い声で電話に応える。
彼女を横目に女子生徒の腕を捻りあげ地面に押さえ込むと、北条はスマホ片手に、口をわなわなと震えさせながら、顔が蒼白になっていく。
すると私の周りに集まっていた生徒たちの着信音が、次々に鳴り始めた。
皆一様にスマホの液晶画面を確認し、すぐに電話に応えると、彼女たちも北条と同じように、徐々に顔を青ざめていく。
私はその奇妙な光景を、乱れた服のまま呆然と眺めていると、どこからか足音が聞こえた。
ゆっくりとそちらへ顔を向けると、そこには黒い笑みを浮かべた兄の姿。
「彩華、もう大丈夫だよ。こっちへ来なさい」
「お兄様……どうしてここに?」
兄はニッコリと笑みを深めると、青ざめる女たちに冷たい視線を向ける。
「よかった。連絡がいったようだね」
集まっていた女子生徒たちはスマホを片手に絶望し、泣きはじめる。
そんな彼女たちの様子に、兄は満足げに笑った。
一体何があったのかしら?
いえ……何をしたの?
力なく項垂れた彼女達を見つめていると、兄が私の前へとしゃがみ込んだ。
「あぁ……また顔に怪我をして……。腕もこんなに赤くなっているじゃないか。痛かっただろうに……。助けに来るのが遅くなってごめんね」
兄は悲しそうな顔を浮かべると、状況についていけていない私を余所に、優しく胸の中へと閉じ込めた。
今日も靴箱は開けず、カバンから上履きを取り出すと、そそくさと教室へと向かう。
机の落書きはないが、机の中に手を入れるときは、必ず中を覗き込む。
あれ、結構痛いんだよね。
治りかけていた傷が疼くと、何もないことを確認して教科書を仕舞いこんだ。
授業が終わりお昼休みになると、突然私の周りにわらわらと女子生徒たちが集まってきた。
何だろうと思いながら顔を上げると、目の前にいた彼女とパチリと目があう。
「ねぇ、ちょっと一緒に来てくれない?」
この女たちが虐めの主犯なのか定かではないが、呼び出しなら好都合 。
コクリと頷くと、強引に腕を引っ張られる。
そのまま連れ出されると、ザワザワとクラスがざわめいた。
耳もとでは、女子生徒達のクスクスと失笑が届く。
そんな私の姿に、教室内の生徒達は知らぬ存ぜぬと、目を合わせることはない。
彼女たちに挟まれるように廊下を歩いて行く。
私は抵抗することなく、静かについていった。
非常階段へ続く扉を抜け、一階まで下りていくと、すれ違う生徒達は目を伏せるように通り過ぎていく。
そうして人気のない校舎裏に到着すると立ち止まった。
私も慌てて立ち止まると、ゆっくり顔を上げる。
すると先頭を歩いていた生徒が徐に振り返り、私の体を突き飛ばすと、強く壁に打ち付けられた。
咄嗟の事に受け身を取れず、私は痛みに肩を押さえていると、女子生徒達は私を囲むように立ちはだかった。
「あんたね、調子にのりすぎなのよ。さっさと学校をやめなさいよ。目障りだわ」
突き飛ばした女は、私を見下すように視線を向ける。
彼女は同じクラスの北条 花蓮。
「あんなにも忠告したのに、聞かないあなたが悪いのよ?この学園に、あなたの居場所なんてないの。出て行きなさいよ」
北条はそう言い放つと、私の体を強く壁に押し付ける。
痛みに顔を歪める中、そうよ、そうよ、と周りの女子達は賛同するように声をあげていた。
「ふん、まったく図太い神経をしているわね。私はね、あの名家で知られている条華家の者なの。あなたは知らないかもしれないけど、ふふふ。だから、ここであなたみたいな貧乏人に怪我をさせても、お父様の力で簡単にもみ消すことができるの」
私は条華家との言葉に大きく目を見開くと、勝ち誇ったような笑みを浮かべる北条と視線が絡む。
まさか条華家の名前が出てくるなんて……。
でも北条なんいぇ聞いた覚えがない。
彼女の顔をじっと眺めてみるが、やはり記憶にはない。
条華家は大きいし全てを把握していない。
もしかしたら分家の分家……末端かな?
首をかしげ見つめる姿が気に食わなかったのか、彼女は冷たい笑みを消し、醜く顔を歪めると、私の髪を鷲掴みし、コンクリートの壁にたたきつける。
痛いっ……ッッ。
咄嗟に彼女の腕を掴むが、その手は周りの女子達に捕らえられた。
身動きが取れなくなった私は、壁に何度も打ち付けられ、痛みに呻き声をあげる。
「ねぇ、花蓮様。この子の下着姿の写真を撮ってばらまくのはどう。きっとそれを見た二条君も華僑君も彼女から離れていくし、彼女も学園にもいられなくなるんじゃない?」
「あら、いいアイデアね、さっさと脱がせちゃって」
女子生徒の手が私のブレザーにかかると、ボタンが外されブレザーを脱がされる。
必死に抵抗してみるも、何人もの女相手では、なかなか自由に体を動かすことができない。
脱がされるのはまずい、怪我をさせるのは可愛そうだけれど、技をかけて……。
「ちょっと、いい加減に」
ブラウスのボタンにかけられたところで、私は思いっきり腕を振りぬくと、拘束していた生徒が慌てて手を離す。
拘束をといた私を押さえつけに来る腕を軽くいなした。
自由になった手で、反対側で腕を掴んでいた女子生徒の腕をねじりあげようとした刹那、スマホの着信音が響いた。
北条はおもむろにスマホを取り出すと、もしもしと甘い声で電話に応える。
彼女を横目に女子生徒の腕を捻りあげ地面に押さえ込むと、北条はスマホ片手に、口をわなわなと震えさせながら、顔が蒼白になっていく。
すると私の周りに集まっていた生徒たちの着信音が、次々に鳴り始めた。
皆一様にスマホの液晶画面を確認し、すぐに電話に応えると、彼女たちも北条と同じように、徐々に顔を青ざめていく。
私はその奇妙な光景を、乱れた服のまま呆然と眺めていると、どこからか足音が聞こえた。
ゆっくりとそちらへ顔を向けると、そこには黒い笑みを浮かべた兄の姿。
「彩華、もう大丈夫だよ。こっちへ来なさい」
「お兄様……どうしてここに?」
兄はニッコリと笑みを深めると、青ざめる女たちに冷たい視線を向ける。
「よかった。連絡がいったようだね」
集まっていた女子生徒たちはスマホを片手に絶望し、泣きはじめる。
そんな彼女たちの様子に、兄は満足げに笑った。
一体何があったのかしら?
いえ……何をしたの?
力なく項垂れた彼女達を見つめていると、兄が私の前へとしゃがみ込んだ。
「あぁ……また顔に怪我をして……。腕もこんなに赤くなっているじゃないか。痛かっただろうに……。助けに来るのが遅くなってごめんね」
兄は悲しそうな顔を浮かべると、状況についていけていない私を余所に、優しく胸の中へと閉じ込めた。
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