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第三章
エヴァンと過ごす日々:前編1
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朝食をすませ、家の外へ出てみると、そこは見渡す限りの森だった。
後ろを振り返ってみても、遠くを見つめてみても、街の姿はどこにも確認できない。
どうやらここは、森の奥深くのようだった。
一歩森の中へと足を踏み出してみると、エヴァンが後ろから私の腕を取り引き留めた。
「あまり遠くに出歩いてはいけませんよ。私たちは追われている身ですからね」
「追われている?どうして?」
そっと振り返ってみると、エヴァンは私が眠っている間に起きた出来事を説明してくれた。
どうやら私たちは、城の大臣とやらに目をつけられてしまったらしい。
この世界の住人ではない私たちが、城の者に捕まれば……厄介な事になるのは明白だわ。
「ですのでどこかへ行きたいのであれば、私が移転魔法でお連れいたします。城の付近へ連れて行くことはできませんが、何か必要な物があるのでしたら、城から離れた街へ行きましょう。15年程度であれば、道筋もかわっていないでしょう」
「エヴァンは街の外へ出た事があるの?」
エヴァンはその質問に小さく笑うと、私の手を取り、森の中へと誘っていく。
「師匠は私と出会うまで、色々な国を回っていたんですよ。だから私も師匠に連れられて、よく街の外へ行きました。時には海の向こうにある国へもね」
へぇ……ならタクミは今……世界中を旅しているのかしら……。
そう思うと、タクミの姿が脳裏にチラついた。
いつも優しい笑みを浮かべて、私の隣を歩幅を合わせ歩いていてくれた彼の姿。
でも珍しい物を見つけると、いつも私を置いてそれに夢中になってたわねぇ。
彼との思い出に浸っていると、ふと捕られていた手がギュッと握りしめられる。
私はそっと視線をあげると、エヴァンが困った様子でほほ笑んでいた。
「それで、どこか行きたいところがあるのですか?」
「ううん、違うわ。ごめんなさい、少し魔法の練習をしたくて、外へ出てみただけなの」
「……魔法の練習ですか?」
「えぇ、もしよかったらエヴァンも付き合ってくれる?」
そう問いかけてみると、彼は小さく笑い、いいですよと優しい笑みを浮かべていた。
そうして私たち森の中へ入り、少し広い場所を見つけると、私はエヴァンと向かい合う様に佇んだ。
「それであなたは、どんな魔法を使いたいのですか?」
「う~ん、そうねぇ……。エヴァン、私の前に防御魔法の壁を作ってくれないかしら」
エヴァンは私の言葉に杖先を上げると、空中に長方形を描いていく。
描き終わると、エヴァンの魔力と共に、透明の薄い膜が現れた。
慎重に壁へ触れてみようとすると、パチンッと音をたて、手が弾かれる。
この感じ……あの水晶玉の中で触れた感覚と同じだわ。
やっぱりあれは防御魔法で間違いない。
只エヴァンが作り出した防御魔法は、タクミの両親が作り出した防御魔法に比べると、魔力量が全く違う。
……兎にも角にも、この防御魔法を破ってみましょう。
そう思い体の魔力を感じようとした刹那、ふと疑問が思い浮かんだ。
そういえば……防御魔法ってどうやって破るのかしら?
私はエヴァンへ顔を向けると、透明な膜越しに彼の姿がはっきりと映っている。
「ねぇ、エヴァン。防御魔法ってどうやって破るのかしら?」
私の言葉にエヴァンは杖を持ち上げると、何も言わぬままに炎の玉を作り出した。
そのまま壁に投げるように手首をスナップさせると、炎の玉が私へと迫ってくる。
思わず両手持ち上げガードすると、ガシャンッと音と共に、透明の壁がボロボロと崩れ落ちていった。
恐る恐る腕を下してみると、先ほど私へと迫って来ていた炎の玉はどこにも見当たらない。
「防御魔法はそれがもつ魔力量と同等、もしくはそれを上回る魔力が触れた場合に破られます。物理攻撃の場合も同じです。物理攻撃の場合は、魔力の力と与えられる力との関係で決まるんですよ」
同等の魔力量……それよりも上の力。
「魔力の量はどうやって調べているの?」
「それは……感覚ですね。わからないのであれば、自分の魔力で1の力を決めるとわかりやすいですよ。私の場合ですと、これぐらいの魔力が1、さっきの防御魔法は5ぐらいの力で作ったので、5の力をぶつけました。だから炎も消え、防御魔法も崩れた。もし炎が強かった場合、炎は消える事無く、あなたに向かって飛んでいったでしょうねぇ」
私は考え込むように頷くと、手に魔力を集め、防御魔法をはってみる。
目の前に透明な膜が出来上がると、私は小さな光の玉を浮かべて見せた。
そのまま透明の壁へと軽く投げつけてみると、玉は壁に弾かれ、チリチリになって消えていく。
壁はそのままで……光の玉だけが消えたという事は……壁よりも玉の力が弱かったということね。
私は先ほどよりも魔力を込めて、もう一度光の玉を作ると、壁に向かって投げつける。
すると防御魔法にヒビが入り、粉々になって崩れ落ちた。
そのまま光の玉は壁を破り突き進むと、近くに会った木の幹へぶつかり消え去っていく。
う~んこれだと強すぎるのかぁ。
防御魔法を打ち破ることが出来ればそれでいいのだけれど、使われた防御魔法の力がわからないと、どれだけ魔力が必要なのかを判断できないわね。
ならまずは自分が作った壁と、同じ力を覚えることが重要だわ。
そう考えると、私はまた魔力の壁を作り出し、黙々と練習を始めた。
後ろを振り返ってみても、遠くを見つめてみても、街の姿はどこにも確認できない。
どうやらここは、森の奥深くのようだった。
一歩森の中へと足を踏み出してみると、エヴァンが後ろから私の腕を取り引き留めた。
「あまり遠くに出歩いてはいけませんよ。私たちは追われている身ですからね」
「追われている?どうして?」
そっと振り返ってみると、エヴァンは私が眠っている間に起きた出来事を説明してくれた。
どうやら私たちは、城の大臣とやらに目をつけられてしまったらしい。
この世界の住人ではない私たちが、城の者に捕まれば……厄介な事になるのは明白だわ。
「ですのでどこかへ行きたいのであれば、私が移転魔法でお連れいたします。城の付近へ連れて行くことはできませんが、何か必要な物があるのでしたら、城から離れた街へ行きましょう。15年程度であれば、道筋もかわっていないでしょう」
「エヴァンは街の外へ出た事があるの?」
エヴァンはその質問に小さく笑うと、私の手を取り、森の中へと誘っていく。
「師匠は私と出会うまで、色々な国を回っていたんですよ。だから私も師匠に連れられて、よく街の外へ行きました。時には海の向こうにある国へもね」
へぇ……ならタクミは今……世界中を旅しているのかしら……。
そう思うと、タクミの姿が脳裏にチラついた。
いつも優しい笑みを浮かべて、私の隣を歩幅を合わせ歩いていてくれた彼の姿。
でも珍しい物を見つけると、いつも私を置いてそれに夢中になってたわねぇ。
彼との思い出に浸っていると、ふと捕られていた手がギュッと握りしめられる。
私はそっと視線をあげると、エヴァンが困った様子でほほ笑んでいた。
「それで、どこか行きたいところがあるのですか?」
「ううん、違うわ。ごめんなさい、少し魔法の練習をしたくて、外へ出てみただけなの」
「……魔法の練習ですか?」
「えぇ、もしよかったらエヴァンも付き合ってくれる?」
そう問いかけてみると、彼は小さく笑い、いいですよと優しい笑みを浮かべていた。
そうして私たち森の中へ入り、少し広い場所を見つけると、私はエヴァンと向かい合う様に佇んだ。
「それであなたは、どんな魔法を使いたいのですか?」
「う~ん、そうねぇ……。エヴァン、私の前に防御魔法の壁を作ってくれないかしら」
エヴァンは私の言葉に杖先を上げると、空中に長方形を描いていく。
描き終わると、エヴァンの魔力と共に、透明の薄い膜が現れた。
慎重に壁へ触れてみようとすると、パチンッと音をたて、手が弾かれる。
この感じ……あの水晶玉の中で触れた感覚と同じだわ。
やっぱりあれは防御魔法で間違いない。
只エヴァンが作り出した防御魔法は、タクミの両親が作り出した防御魔法に比べると、魔力量が全く違う。
……兎にも角にも、この防御魔法を破ってみましょう。
そう思い体の魔力を感じようとした刹那、ふと疑問が思い浮かんだ。
そういえば……防御魔法ってどうやって破るのかしら?
私はエヴァンへ顔を向けると、透明な膜越しに彼の姿がはっきりと映っている。
「ねぇ、エヴァン。防御魔法ってどうやって破るのかしら?」
私の言葉にエヴァンは杖を持ち上げると、何も言わぬままに炎の玉を作り出した。
そのまま壁に投げるように手首をスナップさせると、炎の玉が私へと迫ってくる。
思わず両手持ち上げガードすると、ガシャンッと音と共に、透明の壁がボロボロと崩れ落ちていった。
恐る恐る腕を下してみると、先ほど私へと迫って来ていた炎の玉はどこにも見当たらない。
「防御魔法はそれがもつ魔力量と同等、もしくはそれを上回る魔力が触れた場合に破られます。物理攻撃の場合も同じです。物理攻撃の場合は、魔力の力と与えられる力との関係で決まるんですよ」
同等の魔力量……それよりも上の力。
「魔力の量はどうやって調べているの?」
「それは……感覚ですね。わからないのであれば、自分の魔力で1の力を決めるとわかりやすいですよ。私の場合ですと、これぐらいの魔力が1、さっきの防御魔法は5ぐらいの力で作ったので、5の力をぶつけました。だから炎も消え、防御魔法も崩れた。もし炎が強かった場合、炎は消える事無く、あなたに向かって飛んでいったでしょうねぇ」
私は考え込むように頷くと、手に魔力を集め、防御魔法をはってみる。
目の前に透明な膜が出来上がると、私は小さな光の玉を浮かべて見せた。
そのまま透明の壁へと軽く投げつけてみると、玉は壁に弾かれ、チリチリになって消えていく。
壁はそのままで……光の玉だけが消えたという事は……壁よりも玉の力が弱かったということね。
私は先ほどよりも魔力を込めて、もう一度光の玉を作ると、壁に向かって投げつける。
すると防御魔法にヒビが入り、粉々になって崩れ落ちた。
そのまま光の玉は壁を破り突き進むと、近くに会った木の幹へぶつかり消え去っていく。
う~んこれだと強すぎるのかぁ。
防御魔法を打ち破ることが出来ればそれでいいのだけれど、使われた防御魔法の力がわからないと、どれだけ魔力が必要なのかを判断できないわね。
ならまずは自分が作った壁と、同じ力を覚えることが重要だわ。
そう考えると、私はまた魔力の壁を作り出し、黙々と練習を始めた。
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