[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

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第五章

新章6:名の売れた魔法使い

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彼女の瞳には怒りの炎が浮かび、私は小さく肩を跳ねさせた。
ひぇっ、あぁ……早くこの誤解を解かないと……。

「あの、違うのよ！私と彼は……」

「うるさい、フードの女！！！あなた調子にのるんじゃないわよ……。カミールは今まで何人も女を取っ替え引っ替え相手してきたの。だから一人の女に執着する事なんてないんだからね。……あなたもすぐに飽きられておわりよ。ふんっ」

言葉を遮られ、あまりの剣幕に一歩後退すると、カミールにぶつかった。
彼は受け止めるように私の腰へ手を回すと、その姿に彼女のこめかみがピクピクと痙攣していく。
その様子に慌てて彼から体を離すが……彼女は憎しみを込めた瞳を浮かべたかと思うと、背を向ける。
思わず引き留めようと手を伸ばしてみると……彼女は思いっきりに私の手を叩き落とされた。
鈍い痛みに顔を歪めていると、彼女は野次馬をかき分けながらに、大通りへと消えて去っていった。
あぁ……誤解をとけないまま行ってしまったわ……。
彼女が去っていったことで、集まっていた人々がつまらなそうにチリチリになっていく。
そうしていつもの商店街の雰囲気へ戻ると、私は大きなため息をついた。

「はぁ……っっ、ちょっと、どうして私を巻き込むのよ！」

「あー、鬱陶しい女の相手にうんざりしていたんだ。だからあんたを利用させてもらった。……飯うまかっただろう？」

「はぁあ！？、あれはこういう事だったの！？そんな事なら……っっ。それよりも、あなたのせいで、私が恨みを買ってしまったじゃない！」

「そうだな、でもあんたには魔法があるじゃないか。男にすり寄る以外に何のとりえもない女に、あんたは負けないだろう？」

カミールはニヤリと口角を上げると、また楽しそうに笑う。
そんな彼の様子に、また深いため息をつくと、私は頭を抱えていた。
うぅ……こんなことに利用されるのなら、食べなければよかったわ……。
私は頭痛に耐えながらに顔を上げると、彼女が走り去っていった方角をじっと見つめていた。

う～ん、それにしてもどうしてこの男がもてるのかしら……？
容姿は整っているが……それだけ。
人として大事なものが欠落しているわ。
あぁ……でも実際、落とそうとする女性の前だと、態度が違うのかしら？
とっても優しかったり……？
さすがにイケメンでもこの無愛想のままだとね……。
そんな事を考えながらに、チラリッとカミールへ視線を向けてみると、先ほどとは打って変わってなぜか不機嫌なオーラが漂っていた。
様子を覗うように横目で見つめていると、苛立つ彼と視線が絡む。

「突然黙り込んで何だ？何か言いたい事でもあるのか？」

「いえ……別に。それよりも刺されないように気を付けたほうがいいんじゃないかしら？女性の嫉妬や恨みは……怖いわよ」

そうアドバイスをしてみると、彼はなぜか大きく目を見開き、驚いた様子を見せる。

「ははっ、たとえ恨まれても、俺が女相手に負けるはずがないだろう。それよりも……お前やっぱり変なやつだ。普通の女なら、俺みたいな男の事を、グチグチと非難するんじゃないのか？」

「そうねぇ……あなたの恋愛観に同意はしないけれど……。でも恋愛なんて人それぞれじゃない？それに対して何か言ったりしないわ。傷つけあわないのが一番いいのだろうけれど、人と人が関わる以上それは無理よ……」

そこで言葉を止めると、私は今までの自分を振り返ってみる。
タクミが好きだと、忘れられないと言いながらも……他の男たちに抱かれる姿。
口では嫌だと言いながらも……体は抵抗できないほどに感じていた。
この男よりはましだと思いたいが……私も人の事にとやかく言う資格なんてない。
エヴァンはそんな私を軽蔑していたものね……。
彼の姿が頭をよぎると、なぜかギュッと胸が締め付けられた。

「あんた今……エヴァンって男の事を考えているのか？」

その声に顔を上げると、エヴァンと同じエメラルドの瞳と視線が絡む。
その瞳にエヴァンの姿が重なった。

「あっ、えっ、どうして……その名前を知っているの？」

「あんたが黒い蝶を出すときに、言っていたからな」

あー、あの時……。
そういえば……伝書蝶を、あれ以来送っていないわね。
かれこれあれからひと月以上たつ。
お金も集まった事だし、一度連絡しておかないと……きっと心配しているわ。
そう思うと、どうして連絡してこないのですか！と怒る彼の姿が容易に想像できる。
その姿に心の中がポッと温かくなると、頬が自然と緩んでいった。

「あんたが帰る理由は、その男の為か……？」

「えぇ、そうよ……。私がこの世界に居られるのは、すべて彼のおかげだから……」

そう呟くと、私は真っすぐに前を見据えた。
必ず私はあの場所へ戻る、そして彼とちゃんと話をするのよ。
とりあえず今日は家に帰ったら、さっそく伝書蝶を送ってみましょう。
私は小さく拳を握りしめると、急ぐように大通りへと足を進めていった。

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