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第五章
※新章4:船旅編
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そうして穏やかな日々が続いていく中、今日も私はシナンを連れて図書館へやってきていた。
いつもは夕方には図書館を出るのだが……今日は面白い物語に夢中になってしまい、いつもより大分遅くに図書館を出ると、外は太陽は沈み、まん丸な月が海を照らしていた。
静かな船内には、微かに穏やかな音楽が耳に届く。
きっとどこかの部屋で、案内に記載があったパーティーでも開かれているのだろう。
その男に耳を傾けながらに、シナンと甲板を歩いていると、ふと何か女性の甲高い声が海風に交じり耳に届く。
何だろうと思い近づいてみると、その声がはっきりと聞こえてくる。
そっと声がする方を覗き込んでみると、そこには女が荒い息を繰り返しながらに、男へしがみついていた。
「はぁ、はぁ、……あぁん、ひぃ、気持ちいぃ、あぁん、ふぅ……あぁぁん」
「ここだろう、ここがいんだろう?」
激しく腰を動かす男の姿に思考回路が停止すると、私はその場で動きを止めた。
なっ、ナニコレ……。
イッタイナニヲシテイルノ?
そんな二人の姿に慌てて顔を背けると、シナンがキョトンとした様子で私を見下ろしていた。
「シナン、見ちゃだめよ」
思ってもみなかったその光景に、私は慌ててシナンの目を両手で覆うと、その場からシナンを押し返していく。
早くこの場から離れないと……。
私はそのまま逆サイドのデッキへやってくると、なんとそこでも青姦が行われていた。
「はぁ、はぁ、あぁぁん、そこっ、そこが気持ちぃぃのぉ~」
ちょっ、何なのよこれ……。
どうなってるの!?
女性の喘ぎ声に思考が停止する中、月明かりに照らされ、人影が薄っすらと浮かび上がっていく。
ドレスは乱れ、真っ白な肌が月明かりに照らされていくと、ゾワゾワと悪寒が走った。
真っ赤な唇が男の首筋へと下りていくと、男はかぶりつくように女の肌へと顔を寄せる。
眩いほどの光に照らされたその姿は……初日、隣の席で朝食を食べていたあの妙齢女性だ。
しかしその女がまたがっている男は……あの時一緒に居た渋い男とは別人だった。
「はぁ……はぁ……くっ……」
「あぁん、もっと、ねぇ、あぁん……もっとぉ~、はやくぅ~ちょうだぃ」
ねだるような甘い声にようやく我に返ると、私は慌ててシナンの手を引っ張っていく。
そして近くにあったドアを開け放つと、急いで船内へと戻っていった。
バタンと大きな音を立てながらに扉が閉まると、ようやく声が聞こえなくなる。
そのことにほっと胸をなでおろす中、冷静さを取り戻すと、脳裏には先ほど甲高い声が耳に残り、反芻していた。
あぁ、もう!!
ちょっと、ちょっと、ちょっと……一体どうなってるのよ!
あんなに堂々と浮気!?
いやいやそれよりも、ここはデッキよ!?
誰が通るかわかない場所で……あんな事を……。
ていうか……ここは船上でしょう!?
何を考えてるのよ……っっ。
先ほど見た光景が脳裏をよぎる中、理解しがたい現実に狼狽していると、ふとシナンが私の頭を優しく撫でた。
その大きな手にハッと顔を上げると、シナンは心配そうな様子で私を見下ろしている。
「お姉さん……大丈夫ですか?」
「あっ……いえ……ごめんなさい、大丈夫よ。シナンこそ……大丈夫……?」
シナンの様子を覗うように顔を上げると、彼は全く気にした様子はなく、いつもの可愛らしい笑みを浮かべてみせた。
「はい、僕は平気ですよ。あの……昔屋敷で飼われていた頃、毎日あんな光景を見ていたんです。だからそれほど驚きもありません。その時に、船の話を耳にしたことがあったんです。貴族たちがよく利用する船の話を……」
衝撃的な事実に目を見開く中、ギュッとシナンを抱きしめると、私の体が小さく震えていく。
幼いシナンに……あの女は何をみせているのよ!
最低じゃない!!!
彼の境遇に怒りが沸き起こる中、拳に力が入っていった。
「シナンごめんなさい、嫌なことを思い出させてしまったわね……」
そうシナンの背を優しく撫でてみると、彼は甘えるように私の首筋へと顔をよせた。
「ううん……。僕はお姉さんと出会うことが出来て幸せなんです。それよりもここは、ああいう目的で乗船する人が多いんです。いくらこの船に娯楽があっても、あんな物何でも手に入る貴族達にはすぐに飽きられてしまう。だから女性も男性も、あぁやって旅を楽しむんです。なんと言えばいいのか……背徳感みたいなものがあるから燃えるんだと話していたような気がします。えーと、そんな事よりも一人でいる女性はそういう目的で来ていると思われやすいんです。だから……お姉さんは絶対に一人になってはダメですよ。お姉さんはどんな女性よりも美しいから……バカな男たちがすぐに近づいてきてしまう。でも僕が傍にいれば大丈夫です。だから安心してください」
危険……最初の時シナンが言ってた危ないってこういう事!?
ちょっと……想定してない危険さね……ありえないわ。
この世界の性事情ってどうなっているのよ……。
信じられない現実に頭を抱える中、私は大きなため息をつくと、シナンが心配そうな表情を浮かべて見せる。
「お姉さん、大丈夫じゃないなら、僕がお姉さんを抱き上げて運んでいくよ」
「あっ、ありがとう、シナン。でももう大丈夫よ。あまりに想定外すぎて呆れていただけ……。さぁ早く部屋に戻りましょう」
私はもう大丈夫との意味を込め、ニッコリと微笑んで見せると、シナンと並んで部屋へと戻っていった。
いつもは夕方には図書館を出るのだが……今日は面白い物語に夢中になってしまい、いつもより大分遅くに図書館を出ると、外は太陽は沈み、まん丸な月が海を照らしていた。
静かな船内には、微かに穏やかな音楽が耳に届く。
きっとどこかの部屋で、案内に記載があったパーティーでも開かれているのだろう。
その男に耳を傾けながらに、シナンと甲板を歩いていると、ふと何か女性の甲高い声が海風に交じり耳に届く。
何だろうと思い近づいてみると、その声がはっきりと聞こえてくる。
そっと声がする方を覗き込んでみると、そこには女が荒い息を繰り返しながらに、男へしがみついていた。
「はぁ、はぁ、……あぁん、ひぃ、気持ちいぃ、あぁん、ふぅ……あぁぁん」
「ここだろう、ここがいんだろう?」
激しく腰を動かす男の姿に思考回路が停止すると、私はその場で動きを止めた。
なっ、ナニコレ……。
イッタイナニヲシテイルノ?
そんな二人の姿に慌てて顔を背けると、シナンがキョトンとした様子で私を見下ろしていた。
「シナン、見ちゃだめよ」
思ってもみなかったその光景に、私は慌ててシナンの目を両手で覆うと、その場からシナンを押し返していく。
早くこの場から離れないと……。
私はそのまま逆サイドのデッキへやってくると、なんとそこでも青姦が行われていた。
「はぁ、はぁ、あぁぁん、そこっ、そこが気持ちぃぃのぉ~」
ちょっ、何なのよこれ……。
どうなってるの!?
女性の喘ぎ声に思考が停止する中、月明かりに照らされ、人影が薄っすらと浮かび上がっていく。
ドレスは乱れ、真っ白な肌が月明かりに照らされていくと、ゾワゾワと悪寒が走った。
真っ赤な唇が男の首筋へと下りていくと、男はかぶりつくように女の肌へと顔を寄せる。
眩いほどの光に照らされたその姿は……初日、隣の席で朝食を食べていたあの妙齢女性だ。
しかしその女がまたがっている男は……あの時一緒に居た渋い男とは別人だった。
「はぁ……はぁ……くっ……」
「あぁん、もっと、ねぇ、あぁん……もっとぉ~、はやくぅ~ちょうだぃ」
ねだるような甘い声にようやく我に返ると、私は慌ててシナンの手を引っ張っていく。
そして近くにあったドアを開け放つと、急いで船内へと戻っていった。
バタンと大きな音を立てながらに扉が閉まると、ようやく声が聞こえなくなる。
そのことにほっと胸をなでおろす中、冷静さを取り戻すと、脳裏には先ほど甲高い声が耳に残り、反芻していた。
あぁ、もう!!
ちょっと、ちょっと、ちょっと……一体どうなってるのよ!
あんなに堂々と浮気!?
いやいやそれよりも、ここはデッキよ!?
誰が通るかわかない場所で……あんな事を……。
ていうか……ここは船上でしょう!?
何を考えてるのよ……っっ。
先ほど見た光景が脳裏をよぎる中、理解しがたい現実に狼狽していると、ふとシナンが私の頭を優しく撫でた。
その大きな手にハッと顔を上げると、シナンは心配そうな様子で私を見下ろしている。
「お姉さん……大丈夫ですか?」
「あっ……いえ……ごめんなさい、大丈夫よ。シナンこそ……大丈夫……?」
シナンの様子を覗うように顔を上げると、彼は全く気にした様子はなく、いつもの可愛らしい笑みを浮かべてみせた。
「はい、僕は平気ですよ。あの……昔屋敷で飼われていた頃、毎日あんな光景を見ていたんです。だからそれほど驚きもありません。その時に、船の話を耳にしたことがあったんです。貴族たちがよく利用する船の話を……」
衝撃的な事実に目を見開く中、ギュッとシナンを抱きしめると、私の体が小さく震えていく。
幼いシナンに……あの女は何をみせているのよ!
最低じゃない!!!
彼の境遇に怒りが沸き起こる中、拳に力が入っていった。
「シナンごめんなさい、嫌なことを思い出させてしまったわね……」
そうシナンの背を優しく撫でてみると、彼は甘えるように私の首筋へと顔をよせた。
「ううん……。僕はお姉さんと出会うことが出来て幸せなんです。それよりもここは、ああいう目的で乗船する人が多いんです。いくらこの船に娯楽があっても、あんな物何でも手に入る貴族達にはすぐに飽きられてしまう。だから女性も男性も、あぁやって旅を楽しむんです。なんと言えばいいのか……背徳感みたいなものがあるから燃えるんだと話していたような気がします。えーと、そんな事よりも一人でいる女性はそういう目的で来ていると思われやすいんです。だから……お姉さんは絶対に一人になってはダメですよ。お姉さんはどんな女性よりも美しいから……バカな男たちがすぐに近づいてきてしまう。でも僕が傍にいれば大丈夫です。だから安心してください」
危険……最初の時シナンが言ってた危ないってこういう事!?
ちょっと……想定してない危険さね……ありえないわ。
この世界の性事情ってどうなっているのよ……。
信じられない現実に頭を抱える中、私は大きなため息をつくと、シナンが心配そうな表情を浮かべて見せる。
「お姉さん、大丈夫じゃないなら、僕がお姉さんを抱き上げて運んでいくよ」
「あっ、ありがとう、シナン。でももう大丈夫よ。あまりに想定外すぎて呆れていただけ……。さぁ早く部屋に戻りましょう」
私はもう大丈夫との意味を込め、ニッコリと微笑んで見せると、シナンと並んで部屋へと戻っていった。
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