[R18] 異世界は突然に……

あみにあ

文字の大きさ
351 / 358
第五章

最終話:エレナのために

しおりを挟む
突き放すようなエヴァンの様に戸惑いを隠せない。
待たせ過ぎてしまったかしら……。
ズキッと痛む胸を押さえていると、こちらをじっと見つめるカミールとシナンの姿が映った。
そうだわ、彼らの事を説明しないと。
この間の誤解されたままだわ。
私にとってはこの間な感覚だけれども、エヴァンからすると3か月以上経過しているのよね……。
ともかく誤解を解かないと。
背を向ける彼へ手を伸ばした刹那、強い風が吹き荒れると壮大な魔力が現れる。

「なっ、なに!?」

森の木々が激しく揺れ、緊張が走る。
魔力を感じる方へ振り返ると、エヴァンが私の腕を引き寄せた。
そのまま胸に閉じ込めると、守る様に杖を前に掲げる。
戸惑いながらも伝わる熱にそっと顔を上げると、エメラルドの瞳に胸が小さく高鳴った。

「あらあら、すごいじゃない~」

落ち葉が激しく舞う中、声を頼りに顔を上げると、真っ赤な髪に琥珀色の瞳が映った。
風で体を浮かせているのだろう、空からゆっくりと舞い降りてくる。

「魔女!?どっ、どうしてここに!?」

「どうしてかしらね~。それよりも壁が壊れているじゃない。これはあなたが壊したの?すごいわねぇ~。ふふふ」

魔女は真っ赤な髪をかき上げると、ゆっくりと私の前へ降り立った。
エヴァンは抱きしめる腕を強めると、鋭く魔女を睨みつける。

「迷宮の魔女がなんの御用ですか?」

「ふふふ、怖いわね~別に取って食ったりしないわよ。それよりも私が知りたいわ~。世界の声にここへ行けと言われてきただけよ。本当にどうして私がここへ呼ばれたのかしら?壁は破壊できているみたいだし、何か心当たりはない?」

魔女はニッコリと妖麗な笑みを浮かべると、エヴァンを押しのけ魔力の帯びた指先が私の頬へ触れる。

呼ばれた理由に心当たりはないわ。
だけどこれは好都合、会いに行く手間が省けた。
私はエヴァンへ頷くと、そっと離れ前へ進み出る。

「久しぶりね。どうしてあなたがここへ呼ばれたのか心当たりはないわ。だけど個人的にあなたへ聞きたいことがあるの。……エレナをこの世界へ戻すすべがあるのかしら?」

魔女は怪訝に眉を寄せると、そっと頬から手を離す。

「エレナ?どちらさんかしら?」

「時空の審判者、この壁を創造した300年前の大魔導士よ」

魔女は数秒考え込むと、思い出した様子で軽く手を叩いた。

「あー彼女ね。今更どうして?壁の破壊は終わったでしょ?」

私は首を横へ振ると、琥珀色の瞳を真っすぐに見つめる。

「彼女の家族をここへ召喚するわ。だから一緒に暮らせるようにしてあげたいの。彼女には世界をただそうとした時、そして今回も色々協力してもらったわ。それに何百年もあんな場所で……もう十分じゃないの?」

魔女は深く息を吐きだすと、腕を組み呆れた表情を浮かべた。

「ふぅ~召喚ね、また壮大なことをやろうとしているじゃない。異世界から来た人間はみんなそうなのかしら。そうねー出来なくはないけれど……一つだけ条件があるわ」

「条件?」

「あなたの魔力を頂くわ。この世界で得た魔力全てをね。あなたはもともと魔力を持っていなかったでしょ。だから魔力を奪えばあなたは元居た世界と同じ、魔力が全くない人間に戻るわ。魔力があるこの世界で生きづらいと思うけれど、それでもいいの?」

魔力がなくなる?
両手を広げ見つめると、自分の中に流れる魔力を感じた。
タクミにもらった魔力……。
魔法がない世界で過ごしていた私にとって、魔力は新鮮で楽しかった。
だけどタクミを救い出した今、もう魔力は必要なのかもしれない。

残念な気持ちもあるけれど、エレナのためなら惜しくない。
タクミを救い出すときも、世界を変えたときも、私がこの世界でもう一度やり直すことができたのも、全て彼女がいたから。

「いいわ。だけどその前に召喚だけさせてほしいの。すぐに終わらせるから……エヴァン、アーサー様をここへ呼んでこられるかしら?召喚には王族の許可が必要でしょ」

エヴァンへ問いかけると、魔女が可笑しそうに笑った。

「ふふふっ、わざわざアーサーを呼ぶ必要はないんじゃない。だって王族ならあなたの後ろにいるじゃない」

私は驚き振り返ると、視線の先にカミールの姿。

「えぇ!?まさか……カミールが王族……?」

カミールはチッと舌打ちをすると、不機嫌そうに顔を歪める。

「ふふふ、知らなかったのね。彼の許可をもらえれば召喚できるわ」

「本当なの……?」

恐る恐る問いかけてみると、彼はくしゃっと髪を乱した。

「……まぁな」

彼が王族だったなんて……。
だけど城での慣れた態度、パトリシアの意味深な態度や言葉はそういうことだったのね……。
剣の実力は素晴らしいけれど……あちこちへ飛び回り自由奔放で女癖の悪い王子様で大丈夫なのかしら……。

「カミールが王子だなんて……世も末だわ」

ボソッと本音を呟くと、カミールはげんこつを作り私の頭を軽く小突く。

「どうして知っているんだ?」

「ふふふ~魔女はなんでも知っているのよ~」

不機嫌そうなカミールの様子を窺いながら、私はそっと彼の視界へ入る。

「カミール、召喚する許可がほしいのだけれども」

カミールはこちらへ視線を合わせると、何かを思いついたのか……ニヤリと嫌な笑いを浮かべた。
しおりを挟む
感想 33

あなたにおすすめの小説

触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜

桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。 上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。 「私も……私も交配したい」 太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

完全なる飼育

浅野浩二
恋愛
完全なる飼育です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

【完結】退職を伝えたら、無愛想な上司に囲われました〜逃げられると思ったのが間違いでした〜

来栖れいな
恋愛
逃げたかったのは、 疲れきった日々と、叶うはずのない憧れ――のはずだった。 無愛想で冷静な上司・東條崇雅。 その背中に、ただ静かに憧れを抱きながら、 仕事の重圧と、自分の想いの行き場に限界を感じて、私は退職を申し出た。 けれど―― そこから、彼の態度は変わり始めた。 苦手な仕事から外され、 負担を減らされ、 静かに、けれど確実に囲い込まれていく私。 「辞めるのは認めない」 そんな言葉すらないのに、 無言の圧力と、不器用な優しさが、私を縛りつけていく。 これは愛? それともただの執着? じれじれと、甘く、不器用に。 二人の距離は、静かに、でも確かに近づいていく――。 無愛想な上司に、心ごと囲い込まれる、じれじれ溺愛・執着オフィスラブ。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

乳首当てゲーム

はこスミレ
恋愛
会社の同僚に、思わず口に出た「乳首当てゲームしたい」という独り言を聞かれた話。

処理中です...