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第四章

24 指先に愛を込めて(☆)

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 目を覚ましたマージェリィの隣で、レヴィメウスが肘枕をして主人を眺め始める。朝日の反射光を浴びて、その整った輪郭が強調されている。
 一ヶ月ぶりに元の姿に戻ったレヴィメウスは全裸だった。子供用の寝巻きを着せていたのだから当然だろう。見せつけるように布団の上に寝そべる彫刻のような肉体美につい目を奪われてしまう。下半身は兆してはいなかったが相変わらず太くて長い。
 朝っぱらから刺激的な光景を目の当たりにしてどきっとしたマージェリィは掛け布団を目の下まで持ち上げ顔を半分隠すと、布団の中に声を籠らせた。

「レヴィメウス、いつ戻ったの? 服は? もしかして破けちゃった?」
「夜が明けたらこの姿に戻っておったのだ。今日辺り戻れる予感があったゆえ、服は眠りに就く前に脱いでおいた」
「そうなんだ。いつの間に……」

 昨晩はそれまで通り少年のレヴィメウスと並んでベッドに横たわった。幼い淫魔のあどけない寝顔を眺めて癒されるのが日課となっていたが、子供の高い体温が心地よくて、最近では先に寝入ってしまいがちだった。

 枕元にはきちんと折り畳まれた子供用の寝巻き一式が置かれていた。変装魔法で出現させた衣服はもう一度魔法を掛けなければ消えることはない。

 そこから視線をのろのろと移動させて、再びレヴィメウスを見る。その顔はマージェリィが目覚めたときからずっと仄かな笑みを湛えていた。
 それもそのはず――なぜなら大人の体に戻れた今、ふたりが繋がるにあたっての一切の障壁がなくなったからだ。

(ホントに今日これから、レヴィメウスとセックスできちゃうんだ……)

 頭が覚醒するにつれ、いよいよ積日の願いが叶うんだと実感すればますます鼓動が騒がしくなる。
 何を言ったらいいか、何から始めたらいいか分からずどぎまぎしていると、レヴィメウスがにこりと笑った。

「主よ」
「ひゃいっ」
「すぐに始められそうか?」
「え! あ、う、うん、……」

 思いの外動揺しているらしく声がひっくり返ってしまった。
 落ち着かなきゃと大きく息を吸い込んだ瞬間。

 ぐう、と腹が鳴った。

 あまりの恥ずかしさに、布団の中に潜って縮こまる。

「わううう……先にご飯、食べちゃダメかな……」 
「もちろんだ、主よ。すぐに用意しよう」

 レヴィメウスの起き上がる動きが布団越しに伝わってくる。マージェリィが布団の端から目だけを出すと、そこには申し訳なさげな微笑みが待ち構えていた。

「朝に空腹なのは当然よな。思い至らず申し訳ない。主を抱けるとあって、どうにも急いておるらしい」
「レヴィメウスもそわそわしてるの?」
「ああ、もちろんだ」

 再び寝そべったレヴィメウスに布団の中で手首をさらわれて、隆起した胸板に導かれる。
 艶やかな肌に手のひらを押し当てると、どっどっどっどっ……とマージェリィ以上に速い鼓動が伝わってきた。

「わ、レヴィメウス、とってもどきどきしてるね」
「ああ。事に及ぶ際、ここまで胸が高鳴った経験はついぞない。我は我が思う以上に主に焦がれておるのだな……。今まで召喚主に対してここまで強い想いを抱いたためしはあらぬゆえ、自らのこの余裕のなさは新鮮で興味深く感ずる」
「ふふ。初めての経験?」
「ああ。一万年生きてきて、斯様な状態に陥るのは初めてだ」
「そっか。……なんか、嬉しいな。そこまで楽しみにしてもらえて」

 苦労して作った秘薬の効果をまだ味わえたわけでもないのに、すでに願いが叶ったかのような満足感が湧いてくる。
 無言で微笑みあううちに、幸せそうな笑みを浮かべる顔がゆっくりと近付いてくる。
 マージェリィがそっと目蓋を降ろすと、一度だけちゅっと音を鳴らして唇を重ねられたのだった。



 ワンピース型の寝巻きから着替えもせずに、レヴィメウスの作ってくれた朝食を食べ始める。その間、耳の中ではずっと心臓の音が鼓膜を叩き続けていた。普段は聞くことのない音がさらに緊張感を誘う。
 震える手がうまく動かせずフォークを取り落としてしまった。すぐさまテーブルの向かいから手が延びてきて拾い上げてくれる。

「あ、ご、ごめん」
「いや」

 すぐに立ち上がったレヴィメウスが台所へと行き、替えのフォークを手渡してくれる。

「あ、ありがとう……」
「ふ。実に愛いものよな、緊張に震える主は」
「わううう……」

 笑顔のあまりの眩しさに直視できない。
 視線を皿の上に落としたまま朝食を食べ進める。頭の中はこれからされることへの期待と不安でいっぱいで、何を口にしても味が分からなくなってしまっていた。

 どうにか食べ終えて、食器の片付けを手伝おうとしたら制されてしまった。

「皿まで取り落として怪我をしては事だからな」
「大丈夫だって。多分……」

 結局マージェリィはフォークひとつすら持たせてもらえず、ただ重ねた食器を運ぶレヴィメウスの後ろからついて行くことだけが許された。
 食器を洗うのも拭くのもしまうのも、すべてレヴィメウスがやってくれたのだった。



「……さて」

 食器棚の扉を閉じたレヴィメウスが、少し掠れた声で呟きながら振り返る。
 その黄金色の瞳は情欲に漲っていた。鋭い眼差しに胸を射抜かれ息が詰まる。
 
「あ……」

 大きな手が差し伸べられた次の瞬間、マージェリィは手首をさらわれ逞しい腕の中に収まっていた。ぎゅっと抱き締められ硬い胸板に頬を押し付けられる形となれば、速い鼓動が伝わってくる。
 抱きすくめられた状態で身をこわばらせていると、髪に頬ずりしてきたレヴィメウスが耳に唇を押し当ててきた。

「主よ。今度こそ……淫魔の名に懸けて、主を忘我の境へと誘うことを約束しよう」
「んっ……!」

 耳の中に流し込まれた低音がぞくりと背筋を駆け抜け全身が粟立つ。
 完全に凍りついた主人を見てレヴィメウスは幸せそうに目を細めると、膝裏を掬い上げてマージェリィをお姫様抱っこして歩き始めたのだった。



 レヴィメウスに連れられて、再び寝室へと戻ってきた。
 マージェリィがベッドに腰かけて固まっている間、レヴィメウスは壁際の棚の方へと歩いていき、そこに並べてある様々な瓶の中から一番新しい透明な瓶を取り上げていた。それは一ヶ月前、行為に及ぼうとした際に寝室に持ち込んだ潤滑剤だった。
 瓶を手に持ち振り返ったレヴィメウスに向かって、おずおずと話しかける。

「あ、あのさ」
「どうした? 主よ」
「すっごくすっごく待たせちゃったし、すぐに突っ込んでくれちゃってもホントにいいんだよ? 潤滑剤それを使えばすんなり入るはずだし」

 ベッドの前に立つレヴィメウスはズボンの前が膨らんでいた。革の生地越しにもどれだけ興奮しているかが見て取れる。
 レヴィメウスは目を伏せ瓶を枕元に置くと、マージェリィの隣に腰を下ろした。
 至近距離で目を覗き込んでくる。その瞳はひどく真剣な輝きを帯びていた。

「主よ」
「は、はい」
「今からする行為は、ただ単に体を繋ぎ合わせるだけではない」
「え? 違うの?」
「我らはこれより深く愛し合うのだぞ? 如何にわれあるじを愛しているか、愛撫ひとつひとつに込めて主に伝えるのだから、それを省略するなど考えられぬ」
「そ、そっか」

 愛情のこもった愛撫をこれから施されると宣言され、マージェリィは早鐘を打つ鼓動に呼吸を阻まれ必死に息を吸っては吐いてを繰り返したのだった。



 まずはレヴィメウスがマージェリィの目の前で衣服を脱ぎ捨てていき、完全に起ち上がった欲望の化身をあらわにする。
 ついそこを凝視してしまっているうちに、ワンピース型の寝巻きを脱がされて、下着も丁寧に取り去られていく。
 シーツの上に押し倒されるのかと思いきや、なぜかレヴィメウスの大きく開いた脚の間に座らされた。張り詰めた芯が尻に寄りかかってきて、その硬さにどきどきさせられる。
 どうするつもりなのかと息を詰めて様子を窺っていると、マージェリィの視界の中でレヴィメウスが手のひらに潤滑剤を垂らし、それを指で掬った。

「あっ……!」

 ぬめりを纏った指がマージェリィの両方の胸の先をやんわりとなぞり始める。液体の冷たさにたちまちそこが立ち上がってしまい、指で転がされる感触を敏感に拾い上げてしまう。

「あっあっ……、そこ、に塗るのは想定してなかった、っていうか……! あっはあっ」
「どうだ? 舌でねぶられているようで心地かろう」
「ん、うんっ、気持ちいっ……!」

 指の動きはどんどん激しくなってきて、かりかりと細かく引っ掻き回されればひどく甘い刺激が腹の底に突き刺さる。たまらず膝を擦り合わせた途端、頭の上からくすりと笑う声が聞こえてきた。

「あっあっあっあっ、レヴィメウスうっ……! そこ、きもちいよう……!」
 
 乾いた指で転がされる刺激とも舌で舐め回される刺激とも違った滑らかな感触はあまりにも甘美で、言葉にして訴えずにはいられない。胸の先端から絶え間なく送り込まれる快感が、たまらなく下腹を疼かせる。
 激しく弾き倒されて痛みまで感じ出した瞬間に少しだけ力を弱めてくれて、飴玉を舐めるかのように優しく丁寧に指先で転がされる。溶けてしまいそうな感覚にうっとりと浸るうちに、またほんのわずかずつ弾く力が強くなっていく。
 緩急をつけて愛撫され続けるうちに、体に異変が起きた。挿入されてもいない秘部の中が独りでにびくっと脈打ち始めたのだった。

「あっ……!? レヴィメウスっ……! ちょっ、と止めてえっなんか体、変なの……!」
「ああ、そのまま達してしまうがよい」
「えっあっあっホントに止めてえっ、おかしくなっちゃうう……――きゃうっ!」

 レヴィメウスに両胸の突端をぎゅっと摘まみ上げられた瞬間、マージェリィは絶頂を迎えたのだった。
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