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第六章.悪役令嬢と悪女

3.お嬢様の邂逅③

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私は、優さんに愛されたいと思うようになった。

妹のような存在ではなく優さんの恋人になりたいと、強く願うようになった。



でも…


「無理だろ」


「何でですの!」


誰にも相談できないでいた私の心中を察したかのように悠斗は私に告げた。

「私が…優さんよりも年が離れているからですの?」

「違う」

「私が華族で優さんが庶民だからですか?」

「それも違う」

だったら何が行けませんの?
第一、お父様は自由恋愛主義であるから反対はしない。

私の病弱な体ゆえに、群がる寄生虫を嫌と言う程目にして来たのだから。


その点で言えば、両親や使用人達は優さんに好意的だし、婿候補にしたいともばあやが言っていた。


お母様も体が弱かったけど、優さんの献身的な介護で回復しました。
優さんは薬草の知識がとても豊富で薬剤師顔負けでした。

手術をしなくとも人間の治癒力を上げる方法を探し、精神的なケアをしてくださいました。

ですから小笠原家で優さんを嫌う人はいません。


「どうしてもアイツが欲しいなら祖父さんに頼めよ」

「嫌よ!そんな無理矢理なんて」

お祖父様に言えば無理矢理婚姻関係を結ばせようとするかもしれない。


「なんでだよ?恋人になるより手っ取り早いだろ」

「私は結婚を前提にまず文通をして交換日記をして、デートをして恋人から婚約者になりたいんです」

「何だ…その時代錯誤な計画は」


なんて失礼な!
健全なる男女のお付き合いはまず文通をして交換日記ですわ!


「あのなぁ…アラサーの男が交換日記なんて拷問だぞ」

「あら?では交換日記はお嫌だったのかしら…」


両親は文通をして交換日記をしていたけど。


「いや、アイツは今傷心中なんだよ!女が原因で恋愛不信だ」

「え…」

「だから、無理だって言ってんだよ」


優さんが恋愛不信?

どうしてなのかしら?



「まぁ、大人には色々事情があるんだよ…まぁ、女は打算的だからな。アイツはお世辞にも高収入ってわけじゃねぇからな」

「そんなの関係ありませんわ。それに経済の風向きだってコロコロ変わると同じように商売と言うのはいい時も悪い時もありましてよ?」

「お前のように経済学を学んでない女には解らねぇんだよ…家庭環境も悪いんだよ」

「だったら私と幸せな家庭を築け良いのですわ…やだ、私ったら」

まだお付き合いもしていないのに恥ずかしい!


「あのなぁー…」


まずはゆっくりと親密度を上げるべく私は恋愛ゲームや恋愛小説などを読み漁りました。


「小百合、優君と見合いをしないかい?」

「は?」

「君は優君を好いているんだろう…彼の事情は聞いている。だから無理強いはしない」

「えっ…あの」


突然両親に言われ、戸惑った。

「菊本から聞いたのよ?貴女が恋愛小説を読んで勉強していると…そんなものでは殿方の心を射止めることはできなくてよ!ここはお見合いをセッティングします!そこで優君にプロポーズなさい」

「え!いきなりですか!」

「何を言っているの、他の女性に奪われていいの?」

「嫌ですわ!」


他の女性が優さんを?

そんなの絶対に嫌!


「でも、悠斗が…」

「過去の事で傷ついたならば、なおの事です。貴女が幸せにするぐらい言って見せなさい!女は度胸ですわ」

「はい…」

「いい?彼ほどの有望株はいませんわ。その変のぺんぺん草以下の男性なんて論外です」


お母様…そんな風に思っていたのね。


けれど、両親の後押しもあって若干強引であるけど。


私は優さんとお見合いをすることになった。


でも、私が優さんとお見合いをすることはなかった。


その数日後、優さんは帰らぬ人となった。




「ふっ…優君!優君…」

遺影の前で泣き崩れる優さんの伯母様。
伯父様も伯母様に寄り添いながら泣いていた。


交通事故で亡くなったそうだ。


でも…


「どうしてよ…遺産相続は親である私達のモノでしょ!」

「養子縁組をされている伯父夫婦の方達はともかく、縁を切っている貴方達にはありません。遺言書もありますし」


「そんなの無効よ…そうよ、義兄さんが辞退すればいのよ。第一、あの子が死んだのは義姉さんの所為でしょ!」


どうして、こんな場所でこんなことを。

優さんの目の前で。

葬儀の場で信じられない。


「ふざけるな!アンタがおばさんに乱暴な真似をしたんだろうが…優は伯母さんを守ろうとしたんだ。アンタも優に庇われたんだろうが」

「生みの親を守るのは当然よ…なのに、あの恩知らず‥お金も残していかないで死ぬだけなんて迷惑だわ」


どうして、こんな酷いことが言えるの?
子供が死んで悲しむこともなく、一番優先するのはお金なの?


信じられない!

「婚約者の私だって権利があるわ」

「何を言っているの!」


喫茶店で騒いだあの女性が葬儀の場でヒステリックに叫んでいた。




「小百合…」

「あんまりだわ…こんな」


辛くて悲しくて、心が千切れそうだった。


「どうして優さんが…あの人が何をしたと言うの」

「ああ、アイツは悪くない。悪いのはアイツ等だ…」

悠斗に抱きつきながら声を殺して泣くと、空も泣きだした。


「優さんに会いたい…もう一度あの人に会いたい」

「体に障る」

まだ肌寒い季節だった。
病気が治っても無理をしてはダメだと言われ、上着をかけられた時だった。


「アンタの所為で!」

あの人が私に迫って来た。
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