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第六章.悪役令嬢と悪女
20.慈悲の心
しおりを挟む一体何が起きているだ?
黒い魔法でエリオルを飲み込もうとしているあの女は大鎌でエリオルを殺そうとしたが、エリオルは素手で掴んだ。
「あれは悪魔の鎌と言われていますのよ?素手で触れれば瘴気で手が溶けてしまうはずですのに」
レイラの言うとおりだ。
人間が素手で掴むなんて不可能だった。
精霊を憑かせている俺達ならともかくなんの装備もないエリオルがどうして?
『馬鹿ねぇ?彼はご主人様の生まれ変わりよ』
『魔力は無限ですもの…でも、魔力とは心に反応するの』
ノームとシルフィードが告げた。
俺達はイマイチ理解できないでいた。
『いい事、魔力とは心に反応するの。中でも慈悲の心が強ければ強いほど魔力は強くなるの』
『根性の大賢者様は慈悲の塊のような方なのね…悪意があれば黄金の輝きは力を無くすわ。けれど逆ならば魔力は倍増するの…大賢者様は今悲しんでいるわ』
『ああ、キノコ族への悲しみ。そしてあの悪魔への憐れみだ』
「憐れみだと?何故だ」
レントン様の言葉に誰もが納得する。
何故あんな最低な女に同情をする必要があるのだろうか。
理解に苦しむ。
『そうねぇ?あんなのに同情する必要はないわ。でも、それが私達のご主人様なの…』
『あの女は、強欲の塊だ。それ故に自分しかいない。それが哀れと思ったのであろうな』
『誰も信じられない。自分しか愛せないなんて哀れだわ。私達精霊だってずっと暗い場所で眠って孤独感を味わって来ても光があったのよ?』
『ああ、心は大賢者様と共にあったのだ。あの方は死しても我らを見守ってくださっていた』
聖書には生前から四大精霊の為に祠を作っていたと聞かされている。
『精霊も、儚い者よ…一人じゃ生きられないの。それを惰弱だと言う馬鹿もいるわ』
『だが、他者を慈しむ心こそが強さだ。我らは大賢者様に愛されることでさらに力を得た。だが、あの方は決して私欲のために我らを利用しない…優しい方だった』
聖職者であった先代の大賢者様。
恐らく彼は聖職者だからとか理由はなく、ただ命を慈しんでいたんだな。
だから精霊は彼を愛した。
そしてエリオルも同じだった。
傷つけられても絶対に他人に逆恨みをするような人間じゃなかった。
「エリオル様…」
「おい、見ろ!」
「鎌の瘴気が浄化されていく!」
「マリエさんの魔力が消えて行きます!」
素手で鎌を掴んだ場所から浄化され、よく見ると鎌に皹ができていた。
まるで邪悪な気が消されていくようだった。
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