俺の婚約者は侯爵令嬢であって悪役令嬢じゃない！～お前等いい加減にしろよ！

第七章.黄金の秘宝

7.早まった選択

俺に公爵なんて座は重すぎるので返上して正解だ。
人間身の丈に合った身分が一番だと思ったのだが、どうやら神様はとことん意地悪だった。


「そうですね。公爵の地位では低いでしょう」

「は？」


俺が安心していると、沈黙を破った王太后殿下。


「あっ…あの」

「よろしい、では貴方を我が国の王として迎えましょう」

「ええええ！！」


何でそうなるんだ？
もしかして認知症か？

王太后は老害故にそんなことを言い出したのか？


「ハハッ、ご冗談を」

「私は生まれてこの方、冗談を言った事はなくてよ？」

「いやいや！無理ですよ！俺は元伯爵子息で、今は侯爵家の入り婿です！」

「私が良いと言えば問題ありませんわ」


どんなジャイアニズムだよ！
確かに未だに発言力を持つ王太后が言えばある程度の勢力は抑え込むことが出来るだろうけど。


「他の貴族が反対…」

「なのですが、我が国と同盟を結んでいる大国の上皇陛下が貴女にお世話になったと手紙が来ましたの」

「はい？」


「何でもサロンで親切にエスコートして、尚且つ祖国のお茶を振る舞ってくださったとか」


ダラダラと汗が流れる。
一人だけ思い当たる女性がいる。


「その方は我が国とは親しい間柄でして。その方の助力があれば、残った貴族を一掃するなんて容易いですわ」

「嘘ですよね？侯爵様…俺が王だなんて」


「エリオル、でかしたぞ！」

「エリオル様！私も鼻が高いですわ」


既にベルクハイツ家に俺の味方はないと見た。


「ウィルフレッド様！」

「俺は王位に興味がない。これで自由になれたな！」


この馬鹿王子！
王座になるのが嫌だからって俺を身代わりにしたな！


「エリオル、心配するな」

「レントン様！」

やっぱりレントン様は最期まで俺の味方なんですね！


安堵するのも束の間。

「今後はお前を王として未来永劫支えて行くことを誓おう。お前は俺の恩人なのだからな」

「私もお支えします」


見事に撃沈だ。
味方だと思ったら後方から攻撃される気分だ。


「おお！聖女も協力してくれるとは心強いな」

「陛下…」


もう、泣いていいですか？

マジでなんなのこれ？


神様、俺は何か悪いことをしましたか？



「うむ、反対する者はここにはおらんな」

「エリオル。お母様は嬉しいわ。立派に成長してくれて」

「おかーさま…」


誰よりも一番喜んでいるのはお母様だった。


止めることはしてくれなさそうだ。


「あの…無茶だと思うんですが」

「問題ありません。反対勢力は私が潰してあげますので…孫の為に一肌脱ぎますわよ」

扇を片手に怪しく微笑む王太后は影の支配者ではないか？


まだまだ現役で元気じゃないかと思ってしまった。