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第一章
21苛立ち~アルミナside
しおりを挟む全ては思い通りだった。
なのにあの役立たずがいなくなってから何かがおかしかった。
「何なのこの食事は!それに私の靴が冷たいじゃない!」
「ですが…」
「言い訳をするんじゃないわよ!言われた事も満足にできないの!」
ずっと目障りだったグレーテルがいなくなって清々したと思ったけど。
あの役立たずがいなくなってから何もかも上手く行かなくなった。
以前は私が少し腹いせに物を壊してもグレーテルが悪いと言え済んだ。
私が何か失敗してもグレーテルの責任にできるし、私の下働きとしてこき使えた。
私が両親に愛され、婚約者も私に夢中で贈り物だってしてくれたのに。
グレーテルが私の代わりに陰湿なあの邸に差し出されてからおかしくなった。
これまでは私が少し強請ればドレスも靴も宝石も買って貰えた。
病弱な私が可哀想だからって。
友人からも出来損ないの妹を持つ可哀想な姉だった。
美しく聡明なのに病弱故に気に毒だと思った子息達は私に優しくしてくれた。
なのに、ハワードと婚約が決まってから何もかも上手く行かなくなった。
「見て、あの方よ」
「ええ…」
社交界に出ても楽しくない。
以前なら私の傍に来ていた友人も遠巻きに見ている。
視線が合えばその場から距離を保ちながらチラチラ見て声もかけない。
懇意にしていたはずの子息達も私が挨拶をしても気づかない振りをするばかりだった。
邸に帰っても。
以前は綺麗に整えられていた私の部屋は簡単に掃除がしてある程度。
部屋にはお茶とお菓子の準備もされておらず、部屋は暖かくない。
「私が帰るまでに部屋を暖めて置くように言ったでしょ!それに何よ!私にこんなダサいドレスを着ろって言うの?」
「ですが…」
「口答えしないで!使用人の分際で」
紅茶をかけ、カップを床に叩きつける。
「何事だ!」
「お父様ぁー…ゲホゲホ」
「どうしたのアルミナ!」
お父様とお母様が現れ私はせき込んだ。
「侍女が私の指示に従わなくて…掃除されてなくて…ケホケホ!苦しい」
「ああ、可哀想なアルミナ」
「まったく。貴様のような役立たずは解雇だ。割れたカップは弁償だ。今すぐ出て行け!」
「そんな!」
「今月の給金は出さないわ。親に慰謝料を請求するわ」
いい気味だわ。
私の言う通りにしないから悪いのよ。
でも物足りない。
もっと罵倒を浴びせてやれないのが不満だわ。
ここで頭を下げてお父様に詫びを入れた後に苛めれたら楽しいのに。
辛抱が足りないわね。
普通は泣いて謝って、給金無しで私に奉仕するべきなのに。
そんなことを繰り返すうちに侍女達は辞めて行き、使用人は減って来た。
残った使用人は私を見て視線を逸らせ。
今まで当たり前の生活が一変しだしたのは――。
花嫁修業としてポートナム家に顔わせに行った日からだった。
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