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第二章
12憎悪~アルミナside
しおりを挟む私の方が美しいのに。
どうしてグレーテルが幸せになるの?
私の望みが叶わなかった事は一度もない。
なのに、グレーテルがこの家を出てから私の願いは叶わなくなった。
王子様にも占められて、誰もが羨ましがる生活。
社交の華となるはずだったのに。
「ハミルトン伯爵に見初められたグレーテル令嬢は、シャトワール侯爵夫人からも信頼され、ロイヤルファミリーの仲間入りを果たすですって」
「きっかけはハミルトン伯爵閣下の姪御様の家庭教師がきっかけて…早くに両親を亡くされた、心を閉ざしたアゼリア様の御心を癒すだけでなくお二人の絆を取り戻した人徳者だと!馬鹿を言え」
「そうよ、こんなの偽りよ。何一つ満足にできない出来損ないの癖に!」
新聞を握りしめビリビリに破るお母様。
大体、写真だって顔以外は修正しているじゃない。
グレーテルはこんなに痩せていなかったし、肌だってこんなに綺麗じゃなかった。
「第一、教養もないのに嘘っぱちよ」
「だが、彼女は母から語学を習っていたが…」
「あんなの本を読むだけのでしょ?所詮は下級貴族のごっこ遊びでよ?」
「ごっこ…」
女性が勉強なんて意味がない。
むしろ小賢しいと言われるだけだわ。
必要なのは愛嬌と男性をどれだけ喜ばせるかだわ。
まぁ、女としても終わっているあのドケチ夫人は勉強する事で目を背けていたんじゃないかしら?
美しさもない。
財もない女が虚しさをぶつける為に学問を究めようとする。
政治を動かすのは殿方なのよ。
私達はタダ愛される努力をすればよいのよ。
平民の中では職業婦人とか言う言葉がは流行っているけど、外に出て働くのは貧乏人のする事よ。
「所詮は何も解ってないのよ」
「アルミナ…母上の事を」
「何だ!アルミナを悪く言う下品な女を庇うのか?お前は何様だ…婿の分際で偉そうに」
「一人前の口を叩く前にお金を稼ぎなさい。次のパーティーまでにドレスを新調するぐらいの甲斐性を見せなさい。できなければ出て行きなさい」
「お母様それは可哀想よ。私の愛を失えばハワードは生きていけないわ」
それにまだ婚約の段階よ。
結婚式も盛大にするのに、ハワードは私のいう事は絶対に聞いてくれるから手放すのはもったいない。
それにまだ高位貴族との渡りがついていない。
今の段階でハワードを切り捨てるのは早いのだから。
それに遺産だってそこそこあるはずだし。
だから繋ぎ止めてあげるの。
私の王子様が現れるまでの間だけ。
でも、その前にグレーテルよ。
私がこんな思いをしているのに幸せになるなんて許されないのよ。
誰のおかげで幸せになれたと思っているの。
一人だけ良い思いをするなんて許さないんだから!
応援ありがとうございます!
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