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第二章

14大袈裟な宣伝

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私のお披露目は成功し、婚約式も滞りなく進んだ。


そして紹介されたのは。


「義姉上、お初にお目にかかります。ジークヴァルトと申します」

「グレーテルでございます」


アゼリアの婚約者で王弟殿下のご子息らしい。
これまで社交界に出ていなかったので、顔なんて知るはずもない。


「この度はおめでとうございます」


「ありがとうございます」

「どうか普通にお楽になさってください。お会いできるのを楽しみにしておりました」

何故私に会うのを楽しみにしていたのだろうか?
もしや変な噂が流れているとか。


「お披露目式での事を聞いてとても愉快な方と…失礼しました」


「ジーク!」

「アゼリア、本当に楽しい人だね」


随分と気やすいようだ。
二人は顔合わせは数回だけど砕けた口調で安堵する。


「社交には不慣れと聞いていたのですが、令嬢を撃退されるとは」

「お恥ずかしい所を」

「服飾店のモデルもされていると伺いまして。素晴らしい才能をお持ちですね」

「はは…」


すいません。
新作のドレスのデザインは私が急いで着られるようにと上を下を分けているんです。


他にもコルセットをつけないで着れる機能性重視をしたのをたまたま町を歩いていると話題になった。

靴もヒールでも歩きやすいのにして素材を皮以外にした。
コストを削減できて大量生産ができたのだけど、宣伝が大げさでしかも勝手に誤解をされただけだ。


「それに後ろ姿が美しい」

「はっ…はい」


ごめんなさい。
背筋がピンと伸びるような下着をつけているんです。


スタイルが良くなるボディースーツのおかげなだけ。


「ジーク、もういいでしょ」

「そうですね。今後ともよろしくお願いします」


二人はそう言いながら去って行った。


「ルシウス様」

「まだ11歳という若さであるが、優秀な方だ」

「はい」

あれで成人していないなんて詐欺だ。
アゼリアも大人びていたけど、ジークヴァルト様はもっと大人びている。


「高位貴族の皆さんは精神年齢が高いんですね」

「いや、あの方は別だ。後は殿下もかな?」


「王太子殿下も大人びておられるのですね」

「少し癖があるがな」


でもルシウス様の表情は柔らかい。
きっと悪い人ではない。


ううん、いい人なのかもしれない。


「来週のお茶会で会う事になるだろう」

「はい?」

「勿論ホスト役は君だ」

「え…」


嘘でしょ?
私が王太子殿下を招待する?


「聞いてなかったか」

「はい」


「母上と姉上の仕業か」



どうしよう。
王子様に粗相をしてしまったら。



「まぁ大丈夫だろう」

「そんなぁー…」


王太子殿下をお茶会に招くと言ってもどんなお菓子を用意すればいいのか。



そんな矢先の事だった。

ある事件が起きたのは。


「ごきげんよう。ルシウスはいるかな?」


突然のお客様によりまたひと騒動が起きるのだった。


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