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第二章

32脱走

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部屋に籠っていた私は一人考えて考えて、頭の中が爆発しそうだった。


「私はどうしたらいいのかな」


頭が良くない私は考えるだけじゃダメだった。
答えが見つからない。


「解らないなら動くしかない」


私は今までどんな時も私なりの方法で折り合いをつけて来た。
お姉様が病気ではないと言われても心のどこかで納得したし、過去の事を恨むつもりはない。


「ただ私が悲しいのは…」


大好きなポンチョを傷つけた事。
何故そんな真似をしたのかと思ったけど、私とお姉様では考え方が違う。


以前ならどうして?
何故?とも思ったけど、シャトワール家に来てから私は多くを知った。


「よし、そうと決まれば行動開始よ」


部屋から出たら見つかる。
誰にも見つからないように一人で調べる必要がある。


「アゼリア、ごめんね」


手紙を書いて、少しお散歩して来ると書いておこう。
帰ってきたら怒られるのは覚悟しておくけど、一人で調べなくては。


「私にとってあの邸に侵入する事は簡単だわ。使用人としてあの邸を調べるのは簡単だわ」



シャトワール家に来た時から持って来たトランク。
捨てるべきか悩んだけど、捨てないで持ってきて良かった。


「よし、このまま窓から抜け出そう」



こうして私はこっそり抜け出す事に成功して、邸から出て行くことに成功した。



町は私の庭のようなもので表通りを通らなくても、元実家に行くことはできる。
でもこのままではダメだ。


邸に入るにはメイドの服装をして紹介状を書いてもらう必要があるのだけど。



ダメもとで飛び込みに入ると。


「今日からすべての下働きをしてもらうわ。食事は一日一回だよ」

「はい」

「部屋は屋根裏よ。少しでも怠けたら折檻だから…いいわね」

「かしこまりました」

「フンッ!」



案外簡単に雇って貰えるようになった。


私が知らない侍女だった。
ダリア様ぐらいの年頃で、この邸を切り盛りしているようだった。




以前私が過ごしていた部屋よりもマシだけど、酷いな。
シャトワール家に来てから私はこれまでの生活が酷い物だと知った。

そして貴族のお邸に住み込みする使用人の部屋もある程度整っていなくてはならない。



「今にしてみれば、使用人以下だったのね」


ガタン!


一人愚痴っていると物音が聞こえた。


「どなたですか?」


もしや、幽霊だったりして。
こんな屋根裏部屋ならば、ありえるかもしれない。


「違います」

「え?」


そこにいたのは幽霊ではなく侍女らしき少女だった。







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