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第四部.幸せになる条件
13.恥さらしは続く
しおりを挟む現在、クロエとキャサリンも一緒に王都で一番人気のエステサロンの蒸気風呂を出た後にハーブティーを飲みながら一息ついていた。
「サロンは恐ろしいわ」
「あら?何を言いますの?」
「そうですわ」
クラエス家別邸には大きな大浴場があり、その中に幾つかのお風呂がある。
シプロキサンでは、平民もお風呂に入る習慣がある。
特に主流なのが花びらを散らした湯船の入り、疲れを取るのだった。
フローレンスもお風呂が好きだが、蒸気風呂だけはどうにも得意になれなかったが。
「湯上りの一杯は格別ですわ」
「言い飲みっぷりですわね」
(まるでおっさんが牛乳を一気飲みするようね)
完璧な令嬢であるはずの二人はかなりリラックスしている。
「公の場で、常にマナーばかりでしたから…たまにはいいですわ」
「私も、学園に入るまでは自由でしたし」
子爵家令嬢であるも、元は平民で商家の娘だったキャサリンは貴族と渡り合う為に同等の教育を受け、学園では令嬢らしく振る舞っていたが、息苦しさを感じていた。
「覚悟はしていたのですが」
「解りますわ。私も狭い社交界で我慢の連続でしたもの」
(我慢?わりと自由だった気がするんだけど)
窮屈な社交界の中でも器用に立ち回り、公の場以外ではかなり好き放題をしていたのをフローレンスは知っている。
「でも、リフレッシュは大事ですものね」
「本当に…」
二人はすっかり寛ぎモードだったその頃。
「お引き取り下さい!!」
「ここを何処だとお思いですか!」
外から侍女三人娘の声が響く。
「何ですの?騒々しいですわ」
「クラエス家の侍女の方が声を荒げるなんて…何かありましたの?」
普段から礼儀正しく、どんな時も慌てず対応する侍女三人娘が珍しいと思った。
「失礼いたします」
「ジャスミン…フィリーネ?」
珍しく慌てた様子の二人に困惑する。
「お嬢様、直ぐにお支度をなさってくださいませ」
「え?」
「お二人もお急ぎを」
急かすような言い方をする二人に何があったのかと思う。
声はドンドン怒鳴り声になって行く。
「いい加減にしろ!私は公爵の舅だ!」
「公爵家の使用人はなんて礼儀知らずなの!」
聞き慣れた声にフローレンスは眩暈がした。
「あの馬鹿が来たのですね」
「なんて恥知らずな…」
隣でカップを握りしめる二人は今にも暴れまわりそうだった。
恥も外聞も気にせず好き放題をする彼等に頭が痛かったと同時に、このままではクラエス家にも迷惑がかかる。
アリシエは心配しなくていいと言うが、フローレンスは我慢ならない。
(どこまでも馬鹿な連中)
今更何の用なのかと思いながらも、一度ぐらいちゃんと話をするべきだろうと思ったフローレンスは立ち上がった。
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